僕たちの世界

ラニーニャ

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3話

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 本当は、もうとっくに気付いていた。
 周りの視線、取り巻く空気、直接的なことはなかったが、皆はまだ覚えていて、現在進行形として始めようとしている。
 これがただの勘違いであってほしい。廊下を歩いた時の大袈裟に避ける反応も、コソコソ話しながら僕に注目する視線も、菌扱いするような逃げ方も、全て勘違いであってほしかった。

 でも、また日が経つにつれて、皆の行動は徐々に過激になっていくはずだ。今は大丈夫でも、一週間後には物も隠されることになると思う。
 だからこそ、もあったから、彼女とはできるだけ接したくない。

 小六の二学期、正義感の強い生徒が僕を一度だけ守ってくれた。いじめはいけないことだと、皆に注意して先生に話して、僕を助けようとしてくれたことがある。
 その時、僕は先生が注意してくれれば、いじめはもうなくなると思ってた。だけど、現実は違っていて、前よりも酷い仕打ちに回数が増えた。

 そして、一番ショックだったのは、ターゲットが追加されてしまったこと。先生のいない所で、僕と僕を助けた子を気が済むまで殴り、ゴミをぶち撒けて、物を壊したり無くしたりした。
 その後、その子は僕のせいで不登校になった。

「お前のせいだ!」
 申し訳ない気持ちで、一度家に訪問した。しかし、帰ってきた言葉は、僕に責任を追求し、二度と来るなの二言で追い出された。

 誰かが僕と一緒にいたら、その人は不幸になる。だから、夜桜さんとはもう関わってはいけない。

 ◆

 今日は、早く目が覚めた。最悪な夢を見てしまったからだ。夜桜さんと僕が皆に酷い扱いをされて、いじめられている夢。

 息が荒く起きた時には、涙が溢れていた。
 本当は、もっと一緒にいたい。いじめがなくなって、友達ができて、僕のせいで傷つく人がいなくなってほしい。でも、理想と現実は違うんだ。

 沈む気持ちの中、のろのろとベッドから起き上がった。母親に呼ばれて朝食を済ませ、制服を来て学校に行く準備をする。筆記用具と教科書を入れ、水筒を持った。

 不意に部屋の窓から外を見ると、ランドセルを背負った小学生が元気に登校している。すると、たまたま夜桜さんを発見した。こちら側に近づいて、玄関に向かっている。
 一緒に登校しようとしているのか、と察するとピンポーンと音が鳴り、碧はリュックを持って玄関に走った。

「おはよう!」
 ドアを開けると、夜桜が元気な声で挨拶をした。ところが、碧は彼女を無視してさっと避け、そのまま学校に向かって走った。
 夜桜に対しては申し訳ない気持ちでいっぱいだが、今はこれが最善の方法だと信じて走った。

 チラッと後ろを振り向くと、彼女も走って碧を追いかける。だが、途中から諦めてくれたようで、だんだんとスピードが落ちはじめ、最終的に立ち尽くした。
 距離は大幅に離れ、夜桜がどんな表情をしているかなんて見えなかった。僕に失望しただろうか。

 胸が締め付けられ、心苦しいが、仕方ないと自分に言い聞かせる。
 五分ほど走り、もう大丈夫だろうと学校の前にある坂道を歩いた。正門を通り、玄関に入ると上履きがなくなっている。
 もう一度確認したが、自分の番号がふられている下駄箱には、上履きがなかった。代わりにビールの空き缶や、タバコの吸い殻、お菓子のゴミ袋などが詰められている。僕の予想以上に早くいじめは開始していた。

 碧は、靴下のまま教室に向かうことにした。しかし、これを持って教室のゴミ箱に捨てるのは、一番有難な気がする。先生に勘違いされるかもしれないし、他の生徒が持っている姿を先生に言い付ける可能性だってあるからだ。

 結局、そのままにして教室に向かった。

 クラスに入ると、僕を見るなりコソコソ、ヒソヒソ、クスクスとすぐに空気が変わった。碧は手をギュッと強く握り、誰とも目を合わせないように席に座る。

 その後はもうずっと苦痛だった。
 体育が終わって教室に戻ると、リュックが無くなっており、トイレで濡れたまま見つかった。音楽室に移動する途中で筆箱を落としてしまうと、サッカーボールのように遊ばれゴミ箱にシュートされた。数学の時間には、先生が黒板に書いている間に紙を丸めたボールを投げられ、給食時間には、牛乳を頭と股間に二箱かけられ笑いのダシにされた。

 今すぐにでも家に帰りたいとばかり思う。
 六校時が終わり、帰りのホームルームを済ませると、開放感で教室を真っ先にでた。放課後何かされる前に、逃げなければ辛くなるだけだ。
 学校を出ると坂道を下って、走って帰る。リュックがまだ乾き切ってないせいで重く、頭と制服は牛乳臭かった。

 後から気付いたのだが、夜桜が学校に来ていない。

 少し疑問に思いつつも、家の前に着くと碧は立ち止まった。驚いたことに、夜桜が家の前で座っているのだ。どうしたものか、と迷いつつも声をかけずに家に入ろうとした。
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