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第ニ話

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 私はギルドで換金した銅貨を使い、宿に泊まった。
 異世界の宿は部屋にベットと机だけの寂しそうな雰囲気だったが、ベットはとてもふかふかしており寝心地が良さそうだ。
 そういえばとふと思い、私はペンダントを見た。天井のライトで時々光り、不思議な感じのするペンダントだ。こんな小さなペンダントにドラゴネットが眠っているだなんてあまり信じられない。
 すると、急にペンダントが強く光りだした。思わずその光に目を瞑った私は、光がおさまった後そっと目を開けてみると、そこには黒色で赤い瞳の可愛いらしいドラゴネットがいる。
「よう。今日からよろしくな」
とドラゴネットが言葉を喋った。
 急なことで驚いた私は、とっさにドラゴネットから離れ、体が壁についた。
「俺は、ヴィオス様にお願いされたこの異世界の案内役的な感じの登場人物だ。このペンダントは、うーん、そうだな、例えると郵送で届くダンボール箱のような感じだから」
と話しだす。
 え? 登場人物って? 郵送で届くダンボール箱? 全然理解できないんですけど……? 意味わかりません。
すると、ドラゴネットは私の顔をみて、
「全く理解できない顔してるんで、とりま順序よく説明するわ」
と言い色々と説明してくれた。
 私とドラゴネットが出会ったのは縁ではなく、ヴィオス様によって意図的に会ったらしく、ペンダントは私とドラゴネットを会わせるための道具に過ぎないと話している。
「あの神様は、人の人生を映画みたいに観察するのが好きでな、それで俺とお前を組み合わせたら面白そうだと言ってこうなったんよ。なんかある意味サイコパスだよな」
とドラゴネットがペラペラと話している。
 あー、だから登場人物って、そう言うことね。とツッコミたいのに納得しかできない自分がいた。
「だから別に神様気にしてこの物語進めるよりは、お前はお前なりに楽しく生きていった方があの神も喜ぶんよ」
とヘラヘラ笑いながらドラゴネットが言う。
 なんかこの子の喋り方って前世の世界のやつに似てるような……。
 私が、ドラゴネットの言動に気になっていると、
「大先輩として、頑張っちゃうんでよろしくな」
とニコニコしている。
 ん? 大先輩?
「大先輩ってもしかして……」
「あー、言うの忘れてたわ。俺、前世人間よ」
 へ? 待て、もう色んな事を一気に知りすぎて驚くのが癖になりそうだ。
「前世は、ゲームオタク高校生だったな。あの神様なんでも設定オッケーするっつうたから、ドラゴンになったけど、今は千年封印されてドラゴネットになっちゃったんよ」
 千年? ゲームオタクの高校生って私の前世の時代と近いよね? なのに千年も時間が離れているなんておかしくない?
 私がそのことを質問すると、
「あーね、確かに疑問に思うけどさ、時間なんて神からしたら曖昧なもんよ。お前の魂何年かさまよってたらしいし、魂さまよっている時って時間の感覚ねえから」
と教えてくれた。

 そして、私はドラゴネットとわからないことの質問やこの世界がどう言う所なのか質問し、夜になっても話し続けた。

「そんで、お前はこれからどうするんよ? どういう人生送る予定?」
と今からが本題と言ってドラゴネットが質問してきた。
 これからの人生の予定か、この世界について色々と調べたいこともあるし、冒険しながら異世界を科学するのも楽しそうだな。まずは、魔法石や魔力について調べてみたいから……。とあれこれ考えていると、
「おーい」
とドラゴネットが待ちくたびれたような顔をして言った。
それで私はまず、研究したいということを詳しく話すと、
「でもなぁ……。この世界を研究するのは悪くないと思うが、一番大事なのは金だろ。金はどこから手に入れる? 金がなければ何もできんぞ。それか自給自足か?」
と指摘してきた。
 うっ! やはり前世でも現世でも一番は金か……。金がなければ研究ができないなんて!
すると、
「冒険者ギルドで依頼達成すれば結構金ゲットできんじゃね?」
とドラゴネットが提案した。
「でも、私みたいなか弱い少女が戦闘系なんて無理でしょ」
と言うと、ドラゴネットを見てあっ! と思った。
「ねえ、代わりにドラゴネットが稼ぐのはどう? 魔力とかハンパなさそう」
と私が言うと、
「えー、めんどー。あー、でも条件付きなら良いよ」
と言ってきた。
「その条件は?」
と私は質問すると、
「俺のご飯は魔力だ。でも、普通の魔力とは違う純度を高濃度に高めたデーモンコアというやつを好む。だから、それを食わせるのなら良いよ」
と言った。
「デーモンコアって名前……」
「ああ、由来はお前が言おうとしているやつと近いな。悪魔の核だ。大丈夫、お前の今の魔力量なら自分の魔力をギュッと丸めて高濃度にすりゃ俺の食事になる」
と話していたので条件をのみ、明日からギルドで依頼を受けることにした。


「ねえ、ドラゴネットってさ、言いにくいし名前あった方がいいんじゃん?」
私は、布団に入りながらふと思ったのでそういうと、
「んー、じゃあ名前つけて」
とお願いされた。
 私は少し考えて、
「ルージュはどう? フランス語で赤って意味だけどさ、目が綺麗な赤色だし、名前の響きもいいんじゃん?」
と私が言うと、
「おお、意外と良いね。元科学者らしいから、薬品の変な名前つけるかと思ったけど」
ととても失礼なことを言ってきた。

「ルージュ、おやすみ」
と私は言い、目を瞑った。
「リサ、おやすみ」

 ルージュが初めてリサと名前を呼んでくれたことに彼女本人は気づいていない。
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