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第一話

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 目を開けると、そこには高原が広がっている。
「ここが異世界か」
 自分の手を見るととても小さく、ちゃんと子供になっていた。
 私はとりあえず、元素使いの能力を試してみることにし、まずは簡単そうな水素と酸素の混合気体を作って爆発させてみた。

 一周期一族で原子番号は一の水素、ニ周期十六族で原子番号は八の酸素をそれぞれ原子配列を調整し、ニ対一の割合で混合させる。
 これを少し離れた所で点火してみると、ボォーンッと大きな爆発音がし一気に燃え上がった。
 すごい! これなら弱い小型の魔物は倒せそうだし、こんなに簡単に元素を操れるなんて楽しすぎる!
 そして、私はたまたま見つけたスライムなどの弱い魔物を倒していった。魔物を倒すとキラキラとした鉱石が出てきたので、私は何でできているのだろうと気になり、倒した分の数全て回収し袋にいれた。

「お前は誰だ?」
 背後からそう言われ、振り向くとそこには貴族のような服装をした金髪の男性と護衛らしき人が二人、馬に乗っている。
「え、あっ、私はリサ・ヒイラギと言います」
と名前をいうと、
「私はディオス・フェガロトでフェガロト公爵領の領主だ。大きな音がしたがここで何をしている?」
と何かと疑われてしまった。
「スライムなどの魔物を倒していました」
 私がそう言うと相手は納得してくれ、私の心配をしてきた。私が八歳と言う幼い年齢に一人で両親もいないということで保護してくれたのだ。
 これからどうなるのだろうという心配もありながら、私は町へ連れて行かれた。
「この国では六歳になると、ギルド登録をする義務がある。そして、ステータスに書かれている魔力で身分が決まるんだ。それで、リサは八歳だからこれから町に行ってとりあえずギルド登録をしよう」
と馬に乗せられた。

 町に着くとギルド受付人がギルド登録をしてくれた。カードに名前をリサ・ヒイラギと職を元素使いと記入して手をかざすことで指紋を認識し、登録ができてステータスも読み取ることができるのだ。

 私のステータスを見ると、職業はもちろん元素使い、能力は元素を自由自在に操る能力、レベルは一、体力は五、防御力は七、攻撃力は九、魔力は十万、知識十二万、経験値十二と書かれている。
それを見た受付人は
「魔力十万⁉︎ 知識十二万⁉︎ こんなに幼い子がありえない! それに何この職業と能力!」
ととても驚いている。
 私もビックリして何度も計り直したが、それでもこの数値は変わらなかった。転生したからこの様な異常な数値が出ているのだろうか?

 受付人は混乱して、少したって落ち着きを取り戻すと、
「ちょっと待ってて! ギルドマスターを呼んできます」
と言い、走ってギルドマスターの所へ行ってしまった。
 この年齢にしてこの様な異常な数値は噂になると厄介事がついてくるかもしれない。
 すると、ディオス様が私のステータスをのぞき、
「え! 私よりも魔力が上⁉︎」
と驚いていたが、これは隠さないと悪いことに利用する大人が寄って来そうだと言い、カードに向かって「隠蔽! 魔力五、知識七」と魔力を込めた。すると、数値は変化しディオス様の言ったとおりの数値に変わったのだ。

ちょうどその時、受付人が戻って来て、
「ギルドマスター! 早くこっちに来てください。これです!」
と受付人はギルドマスターに私のステータスを見せた。
「ほう、初めて見る職業だな。能力も元素ってなんだ?」
と言い、少し驚いた顔で興味を持っている。
「そこもそうなんですけど、魔力と知識を見て下さいよ。これ絶対異常ですよね?」
と受付人が言うと、ギルドマスターは
「どこが異常なんだ?」
と全く理解できない顔をしている。
「え?だってほら、ってええー⁈」
受付人も数値が普通になっていることに混乱して何も言えなくなっている。
 私はギルドマスターに
「これ、スライムを倒したら出てきたのですが何ですか?」
とキラキラの鉱石を見せた。
「これは魔法石と言ってギルドで換金することができるんですよ。スライムの魔法石が合計十二個なので換金すると銅貨24枚ですね」
と言われ、すぐに換金してもらった。
 これは魔法石というのか。そういえば、中学生の頃友達が紹介してくれた漫画にそういうのあった気がする。異世界にしかないものなのだから、構造や元素を調べたら面白そうな結果が出そうだな。
 私が研究のことでワクワクしていると、ディオス様が
「もし良ければ、私がリサを家に保護しようと考えているのだが、戸籍上の家族として家に来ないか?」
と提案された。突然そんなことを言われ私はへ? と思ったが、私の今の身柄が危険なので気をつかってそうしているのだろう。
 しかし、
「心遣いありがとうございます。ですが、私はこれから一人で旅をしながらまったりと生きていこうと思っておりますので、ディオス様の提案にはのることができません」
と断った。
「あなたのような子供が大人もなしに一人で旅は危険ですよ⁉︎」
とディオス様は心配していたが、私はそれでも断った。
「私のような見知らぬ女の子が突然家族となってしまったら、ディオス様の家族は受け入れてくれるのでしょうか? それに、私の魔力ではいざとなったら大丈夫です」
と言うと、ディオス様ははぁとため息をついて、
「わかった。しかし、あなたのような子供を守ってくれる守護をつけよう」
と言い、私に綺麗に透き通る青や黒の混ざった不思議な感じのペンダントを渡した。
「この中には漆黒のドラゴネットが眠っている。君が危険な時や助けを求めた時はすぐにこの子がペンダントから出てきて助けてくれるから大事に持っていてくれ」
と話し去っていった。
 え? ドラゴネット⁉︎ 私、こんなやばいペンダント持ってて大丈夫なのかな?
 そう思いつつも私は首にペンダントをつけた。
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