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めちゃくちゃに犯された相手に後処理をされた挙句、ベッドまで運ばれた亮は気持ち悪い違和感に身震いした。
まだ17のガキ、しかも男を好き好んで犯すようなおっさんの事を俺は一瞬良い奴かもなんて思った。
そんなはずないのに。
ついさっきまで散々な目に合わされていたっていうのに、少し手を焼かれただけでこんな風に感じるのはきっと俺の頭が悪いからだ。
亮は自分の両頬を手でバチンと挟んで邪念をはらうと、ベッドの上にある枕を力の入らない手で握りしめ、それを持ったまま部屋の隅に四つん這いで移動した。
肌寒いし床は固いしで最悪だが、あのベッドで眠るのだけは勘弁だ。嫌な悪夢を見そうだし、なによりもあいつが戻ってきて同じベッドで寝る羽目になるかもしれない。
そんなのは絶対にお断りだ。
考えただけで吐きそう。
亮は頭の下に枕を敷いて体を丸めると、あっという間に深い眠りについた。
翌朝、窓から目に差し込んでくる日差しを鬱陶しく思いながらもぞもぞと身動ぎすると、亮は布団に顔を埋めて日光から逃げた。
なかなか起きられずにベッドの上で二度寝、三度寝と繰り返すうち、途中で違和感に気がついて起き上がった。
なんで俺…ベッドで寝てるんだ…?
昨日は確実に床で寝ていたはずだ。
寝惚けてベッドに潜り込んだとか?
それともあいつが…
嫌な予感がして慌てて隣を確認したが、幸いそこには誰もおらずホッと胸をなで下ろした。
ベッドから下りて立ち上がると、腰の痛みに思わず悲鳴をあげそうになった。
しかし、いつまでもこんな所で休んでいてはいつまた何をされるか分かったものではないので、なんとか堪えて壁伝いに歩きながら部屋を出る。
リビングまで来ると、テレビを見ながら珈琲らしき物を飲んでいる男と目が合ったが、男はなんの反応もせずにまたテレビに視線を戻した。
自分に興味が無さそうな男に安心した亮は、自分の服に着替えて荷物を持つと、ジクジクと痛む腰に手を添えて玄関に向かう。
くそ……爺にでもなった気分だ。
どうして朝っぱらからこんな惨めな思いしなきゃならないんだ。
不快感に眉を顰めながら玄関にしゃがみこみ、のろのろとした手つきで靴を履く。すると先程までリビングに居たはずの男も支度を整え、隣で光沢のある皮靴を履いていた。
家を出るタイミングが被ったことを不愉快に思った亮は、男よりも後に家を出ようとして靴紐を結び直した。
しかし男はなかなか家を出る気配がない。
不思議に思って顔を上げると、男は壁にもたれて何を考えているのか分からない表情で俺の事を見下ろしていた。
どうして家を出ずに俺を見ているのか分からなくて戸惑ったが、考えてみれば他人を家に残して仕事になんて行けるわけがない。だから俺が靴を履き終えて家を出るのを待ってるんだ。
そう思い至ると、亮は急いで靴を履き終えて家を出た。
男と一緒にエレベーターに乗るのが嫌で階段を使おうかとも考えたが、それは流石に厳しいので思い直してエレベーターの前で足を止めた。
エレベーターは既に乗れる状態ではあったが、男と同じ空間に居たくなかったため、男が先に乗って降りるのを待った。
しかし、そんな亮の気持ちを知ってか知らずか、男はエレベーターに乗ろうとしない亮の背中を押して無理やりエレベーターに乗せた。
一人で乗ればいいのに、わざわざ俺をエレベーターの中に入れた意味が分からない。文句を言うのも面倒なくらい体が疲れていたから亮は男に対して何も言わなかった。
一切の会話もなく一階に到着すると、物静かな扉の開閉音と共に亮はエレベーターを出た。そしてそのままマンションを出てバス停に向かおうとしたが、男に後ろから首を掴まれてどこかに連れていかれる。
「なんだよ!」
男に首を掴まれ、下を向かされたまま歩かされているせいで前が見えず歩きにくい。
男は目的も告げないまま歩き続けた。
こいつは一体俺をなんだと思ってるんだ。
まともに会話も出来ないのか。
「どこに連れてくつもりだよ」
「……」
会話が面倒なのか男はやはり何も答えない。
男の手を振り解こうとして藻掻いているうちに駐車場まで連れてこられ、男のものだと思われる高級そうな車の中に雑に入れられる。
「な、はあ…?」
どうして車の中になんて入れられるのか分からなくて困惑と苛立ちが混ざった声を出した。
少し遅れて男も車に乗り込んで来てエンジンをかける。行き先を聞いても男は答えない。
ただ、「静かにしろ。耳が痛い」とだけ言われて車が発進した。
俺は男と会話することを諦め、舌打ちをして窓の外を見た。外の景色がだんだん見慣れたものへと変わっていき、学校に近づいていることに気がつく。
一瞬学校まで送ってくれるつもりなのかという考えが頭に浮かぶが、こいつがそんな面倒を買って出る訳がない。
自分の推測をバカバカしく思い、亮は小さく鼻で笑った。
まだ17のガキ、しかも男を好き好んで犯すようなおっさんの事を俺は一瞬良い奴かもなんて思った。
そんなはずないのに。
ついさっきまで散々な目に合わされていたっていうのに、少し手を焼かれただけでこんな風に感じるのはきっと俺の頭が悪いからだ。
亮は自分の両頬を手でバチンと挟んで邪念をはらうと、ベッドの上にある枕を力の入らない手で握りしめ、それを持ったまま部屋の隅に四つん這いで移動した。
肌寒いし床は固いしで最悪だが、あのベッドで眠るのだけは勘弁だ。嫌な悪夢を見そうだし、なによりもあいつが戻ってきて同じベッドで寝る羽目になるかもしれない。
そんなのは絶対にお断りだ。
考えただけで吐きそう。
亮は頭の下に枕を敷いて体を丸めると、あっという間に深い眠りについた。
翌朝、窓から目に差し込んでくる日差しを鬱陶しく思いながらもぞもぞと身動ぎすると、亮は布団に顔を埋めて日光から逃げた。
なかなか起きられずにベッドの上で二度寝、三度寝と繰り返すうち、途中で違和感に気がついて起き上がった。
なんで俺…ベッドで寝てるんだ…?
昨日は確実に床で寝ていたはずだ。
寝惚けてベッドに潜り込んだとか?
それともあいつが…
嫌な予感がして慌てて隣を確認したが、幸いそこには誰もおらずホッと胸をなで下ろした。
ベッドから下りて立ち上がると、腰の痛みに思わず悲鳴をあげそうになった。
しかし、いつまでもこんな所で休んでいてはいつまた何をされるか分かったものではないので、なんとか堪えて壁伝いに歩きながら部屋を出る。
リビングまで来ると、テレビを見ながら珈琲らしき物を飲んでいる男と目が合ったが、男はなんの反応もせずにまたテレビに視線を戻した。
自分に興味が無さそうな男に安心した亮は、自分の服に着替えて荷物を持つと、ジクジクと痛む腰に手を添えて玄関に向かう。
くそ……爺にでもなった気分だ。
どうして朝っぱらからこんな惨めな思いしなきゃならないんだ。
不快感に眉を顰めながら玄関にしゃがみこみ、のろのろとした手つきで靴を履く。すると先程までリビングに居たはずの男も支度を整え、隣で光沢のある皮靴を履いていた。
家を出るタイミングが被ったことを不愉快に思った亮は、男よりも後に家を出ようとして靴紐を結び直した。
しかし男はなかなか家を出る気配がない。
不思議に思って顔を上げると、男は壁にもたれて何を考えているのか分からない表情で俺の事を見下ろしていた。
どうして家を出ずに俺を見ているのか分からなくて戸惑ったが、考えてみれば他人を家に残して仕事になんて行けるわけがない。だから俺が靴を履き終えて家を出るのを待ってるんだ。
そう思い至ると、亮は急いで靴を履き終えて家を出た。
男と一緒にエレベーターに乗るのが嫌で階段を使おうかとも考えたが、それは流石に厳しいので思い直してエレベーターの前で足を止めた。
エレベーターは既に乗れる状態ではあったが、男と同じ空間に居たくなかったため、男が先に乗って降りるのを待った。
しかし、そんな亮の気持ちを知ってか知らずか、男はエレベーターに乗ろうとしない亮の背中を押して無理やりエレベーターに乗せた。
一人で乗ればいいのに、わざわざ俺をエレベーターの中に入れた意味が分からない。文句を言うのも面倒なくらい体が疲れていたから亮は男に対して何も言わなかった。
一切の会話もなく一階に到着すると、物静かな扉の開閉音と共に亮はエレベーターを出た。そしてそのままマンションを出てバス停に向かおうとしたが、男に後ろから首を掴まれてどこかに連れていかれる。
「なんだよ!」
男に首を掴まれ、下を向かされたまま歩かされているせいで前が見えず歩きにくい。
男は目的も告げないまま歩き続けた。
こいつは一体俺をなんだと思ってるんだ。
まともに会話も出来ないのか。
「どこに連れてくつもりだよ」
「……」
会話が面倒なのか男はやはり何も答えない。
男の手を振り解こうとして藻掻いているうちに駐車場まで連れてこられ、男のものだと思われる高級そうな車の中に雑に入れられる。
「な、はあ…?」
どうして車の中になんて入れられるのか分からなくて困惑と苛立ちが混ざった声を出した。
少し遅れて男も車に乗り込んで来てエンジンをかける。行き先を聞いても男は答えない。
ただ、「静かにしろ。耳が痛い」とだけ言われて車が発進した。
俺は男と会話することを諦め、舌打ちをして窓の外を見た。外の景色がだんだん見慣れたものへと変わっていき、学校に近づいていることに気がつく。
一瞬学校まで送ってくれるつもりなのかという考えが頭に浮かぶが、こいつがそんな面倒を買って出る訳がない。
自分の推測をバカバカしく思い、亮は小さく鼻で笑った。
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