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第13話 わからないことだらけ

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 朝に多いと言ったおかげだろう。昼食は軽めに用意されていた。
 昼食の少し前にも、時を告げる鐘の音が鳴り響いたので、私は寝室から私室へ出た。

「足りなかったらお申し付けください」

 ニンフがうやうやしくそう言った。

「ありがとう」

 お茶とスコーン。
 うん、このくらい質素な方がちょうどいい。
 口にスコーンを運ぶ。

「ん、おいしい……!」

 私は思わず叫んでいた。

 バターがふんだんに使われているスコーンに私は目を輝かせた。
 質素などとはとんでもない。これに使われているバターひとつとっても高級品だろう。
 魔界の牛というのもどういうものかいまいち想像つかないが。

「あ、あの、魔界の食事って、こんなに、ええと、私達人間のものと変わりないのですか? あ、いや、変わりないんですけど、こういうものなのですか、日常的に」

 正確には変わりないどころか私の食べていたものよりよっぽど質がいいのだが、そこはややこしくなるので省く。

「魔族によって主食は違いますが、私達ニンフや魔王陛下は人間と似たような食事をとります。特に先代の魔王陛下は人間界の文化風俗にたいへん興味をお持ちでしたから、シェフたちも人間界の食事を作るのががずいぶんとじょうずになりました」

「先代……」

 ユリウスの父に当たる人……ではなかった、父に当たる魔族だろう。
 死んだばかりと言っていたが、どのような魔族だったのだろうか。
 これもユリウスに聞くべきなのだろう。

「ユリ……魔王陛下は、その、何をされているかしら?」

 危うく名前を呼ぶところだった。
 確か名前を呼ぶのは失礼に当たるのだったか。

「陛下は執務に追われてらっしゃいますが、用事があるのなら、お取り次ぎしますよ?」

「……い、いえ、いいの。急ぎの用ではないから」

「かしこまりました」

「……ええと、えっと、魔界では結婚って言うのは何か儀式があるものなのかしら? 人間界には結婚式というものがあるのだけれど……」

「魔族にも結婚式を執り行う魔族はいます。魔王陛下も結婚式……というよりはお披露目式のようなものは行っています。お妃様を娶られたとき、ご子息が産まれたときなど、都度都度行ってきました。お妃様もその内、お披露目をする……はずですが、何しろ人間のお妃様は初めてですから前例がなくて……」

 給仕のニンフは少し困った顔をした。

「だから今回どうなるかは……ごめんなさい。私にはわかりません」

「そうですか……」

 やはり自分の今後についてはユリウスと話をするしかないようだった。
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