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第5話 ニンフとシルフ
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魔王城の奥深くにユリウスは向かった。
大きくて背の高い塔がユリウスの居住棟だった。
レヴィアタンは私達をその建物の屋上に下ろすとどこかへ去って行った。
「ニンフ! シルフ!」
ユリウスが声を張り上げると、屋上の戸が開き、何人かの人型の魔物が空を飛んで現れた。
蝶の羽根が生えた人型の魔物と、宙に浮いていて人間によく似ているが耳が尖った魔物が、それぞれ数人いる。
全員女性のように見える。
「こっちがシルフ族でそっちがニンフ族。魔王城のメイドを務めている」
ユリウスは蝶の羽根の生えた少女を捕まえ、シルフ族と呼び、耳の尖った女性を捕まえ、ニンフと呼んだ。
シルフは透けるような緑の髪を、ニンフは水色の髪をしていた。
服装は制服だろうか、黒いワンピースで統一されていて、胸元にそれぞの緑と水色の飾りがついている。
「シルフ、こちらが花嫁だ。丁重に扱え。ニンフ、長旅で疲れている、風呂の用意を」
「はあい」
「わかりました」
彼女らの声は美しかった。
魔物の中には歌で人を惑わせるものもいると聞くが、そういう生き物だと言われてもうなずけるほど、どこかぼーっとさせられる美しさがその声にはあった。
「さあさ、お妃様、こちらへどうぞ」
蝶の羽根の生えたシルフの一人が私を先導する。
「お風呂を沸かさなくては、誰かサラマンドラを捕まえてきて」
「嫌だわ、あんな暑苦しいの」
「仕事よ、仕事! お妃様は人間だもの。私達みたいに冷水で済ますってワケにはいかないわ」
フワフワと浮くニンフたちがきゃあきゃあとささやき合う。
「よ、よろしくお願いします」
「あらまあ、そんなにかしこまらないでくださいまし」
「そうですわ、そうですわ。お妃様ですもの。堂々としていてくださいな」
彼女らはそう言うと建物の中へと私を導いた。
振り向けばユリウスがこくりとうなずいてきびすを返していった。
しばしのお別れ、だった。
魔王城の中はロウソクの炎がかすかに揺らめいていた。
石造りの廊下をすり抜け、大きな扉を開いてもらい、その中の大きなソファとテーブルが目に飛び込んできた。
ソファは見るからに座り心地の良さそうな生地とつやめいた木のフレームでできていた。
テーブルにも宝玉が埋め込まれていて、金色に塗られている。
なんとなく上を見上げると目を潰さんばかりのまばゆい光、シャンデリアがぶら下がっている。
「はあ……」
思わずため息が漏れる。
今までの私の住んでいた場所とは別世界だ。
この部屋だけで私の家の二倍の広さがありそうだ。
そんなただでさえ広い部屋の奥にはもう一つドアがあった。
「こちらお妃様のお部屋です」
大きな天蓋付の寝台がひとつ。眠るためだけの部屋。
私の元の家なんて、キッチンとテーブルと寝台が同じ部屋にあったというのに……。
寝室の更に奥にはふたつのドアがあった。
「そしてこちらがバスルームです」
ニンフに導かれ、私は浴室へと進んだ。
大きくて背の高い塔がユリウスの居住棟だった。
レヴィアタンは私達をその建物の屋上に下ろすとどこかへ去って行った。
「ニンフ! シルフ!」
ユリウスが声を張り上げると、屋上の戸が開き、何人かの人型の魔物が空を飛んで現れた。
蝶の羽根が生えた人型の魔物と、宙に浮いていて人間によく似ているが耳が尖った魔物が、それぞれ数人いる。
全員女性のように見える。
「こっちがシルフ族でそっちがニンフ族。魔王城のメイドを務めている」
ユリウスは蝶の羽根の生えた少女を捕まえ、シルフ族と呼び、耳の尖った女性を捕まえ、ニンフと呼んだ。
シルフは透けるような緑の髪を、ニンフは水色の髪をしていた。
服装は制服だろうか、黒いワンピースで統一されていて、胸元にそれぞの緑と水色の飾りがついている。
「シルフ、こちらが花嫁だ。丁重に扱え。ニンフ、長旅で疲れている、風呂の用意を」
「はあい」
「わかりました」
彼女らの声は美しかった。
魔物の中には歌で人を惑わせるものもいると聞くが、そういう生き物だと言われてもうなずけるほど、どこかぼーっとさせられる美しさがその声にはあった。
「さあさ、お妃様、こちらへどうぞ」
蝶の羽根の生えたシルフの一人が私を先導する。
「お風呂を沸かさなくては、誰かサラマンドラを捕まえてきて」
「嫌だわ、あんな暑苦しいの」
「仕事よ、仕事! お妃様は人間だもの。私達みたいに冷水で済ますってワケにはいかないわ」
フワフワと浮くニンフたちがきゃあきゃあとささやき合う。
「よ、よろしくお願いします」
「あらまあ、そんなにかしこまらないでくださいまし」
「そうですわ、そうですわ。お妃様ですもの。堂々としていてくださいな」
彼女らはそう言うと建物の中へと私を導いた。
振り向けばユリウスがこくりとうなずいてきびすを返していった。
しばしのお別れ、だった。
魔王城の中はロウソクの炎がかすかに揺らめいていた。
石造りの廊下をすり抜け、大きな扉を開いてもらい、その中の大きなソファとテーブルが目に飛び込んできた。
ソファは見るからに座り心地の良さそうな生地とつやめいた木のフレームでできていた。
テーブルにも宝玉が埋め込まれていて、金色に塗られている。
なんとなく上を見上げると目を潰さんばかりのまばゆい光、シャンデリアがぶら下がっている。
「はあ……」
思わずため息が漏れる。
今までの私の住んでいた場所とは別世界だ。
この部屋だけで私の家の二倍の広さがありそうだ。
そんなただでさえ広い部屋の奥にはもう一つドアがあった。
「こちらお妃様のお部屋です」
大きな天蓋付の寝台がひとつ。眠るためだけの部屋。
私の元の家なんて、キッチンとテーブルと寝台が同じ部屋にあったというのに……。
寝室の更に奥にはふたつのドアがあった。
「そしてこちらがバスルームです」
ニンフに導かれ、私は浴室へと進んだ。
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