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第2章 石の花
第11話 崩壊
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皇帝の宮殿央麒殿、その最奥で凜凜と皇帝はふたりきりになった。
と言っても房のすぐ外に誰かがいるのはわかっていた。
雪英といっしょにすべて教わっている。こういうときどうしたらいいのか、凜凜には知識がちゃんとあった。
後宮に入る宮女である以上、それは必ず教わることだった。
しかしそれは雪英がすることなのだと、どこか他人事のように思っていたことを、凜凜はこれからするのだろうか?
何かの間違いじゃなかろうか。
しかし凜凜は皇帝に寝台に載せられた。
「……陛下」
「どうした」
「何かの間違いではありませんか」
凜凜は真正直にそう問いかけた。
「声が震えているな。寒いか?」
皇帝の返事はいささか的外れだった。
「そうではなくて……」
「間違いではないよ、凜凜」
皇帝はきっぱりとそう言った。
「後宮の者は私のものだ。位階すら持たぬ宮女であろうとも私が望めば、私のものだ。至極当然のことだろう?」
「…………どうして、どうして私なのです」
「私に意見するような恐れ知らずを面白いと思ってな。なかなか忘れがたかった。それにお前だって、央賢妃の元を訪ねろと申したではないか」
「こういう意味ではございませんでした!」
凜凜は悲鳴のような声を喉から絞り出した。
「わ、私を訪ねてほしいなどと、そのような大それたことは……一切……」
「同じ事であろう」
「は……?」
「央賢妃の手の者を訪ねるのと央賢妃を訪ねるのと……何が違う」
凜凜は冗談でも言われたのかと皇帝を見上げた。
皇帝はしれっとした顔でそう言っていた。
「な、何もかも……何もかも違います。何より……央賢妃様のお気持ちは……」
この人を雪英はずっと待っていた。
この人の訪れを待って、心を病んだ。
この人が来てくれると聞いて、無邪気に喜んだ。
それを凜凜がすべて壊した。
「自分の部下が皇帝の寵を与えられるのだ。光栄に思って利用すればよかろうに」
皇帝は心の底からそう言っているようだった。
凜凜には目の前の人の考えがちっとも理解できなかった。
「さあ、凜凜、そろそろ落ち着いたか?」
皇帝の言葉に、凜凜は自分が彼を待たせていたのだとようやく気付く。
何を待っていたのか。この先に何が待つのか。知識しかないことに凜凜はひどく怯えだした。
そんな彼女の頭を皇帝は撫でた。
「睦言としてはいささか色気に欠ける言葉だったが……まあ、及第点としてやろう」
皇帝の体が凜凜にのしかかってくる。
凜凜の体はすっかり皇帝の腕の中に収まっていた。
「…………」
急遽着させられた豪奢な長裾の胸元に、皇帝の手がかかる。
凜凜はただぼんやりと、服が脱がされていくのを受け入れる他なかった。
と言っても房のすぐ外に誰かがいるのはわかっていた。
雪英といっしょにすべて教わっている。こういうときどうしたらいいのか、凜凜には知識がちゃんとあった。
後宮に入る宮女である以上、それは必ず教わることだった。
しかしそれは雪英がすることなのだと、どこか他人事のように思っていたことを、凜凜はこれからするのだろうか?
何かの間違いじゃなかろうか。
しかし凜凜は皇帝に寝台に載せられた。
「……陛下」
「どうした」
「何かの間違いではありませんか」
凜凜は真正直にそう問いかけた。
「声が震えているな。寒いか?」
皇帝の返事はいささか的外れだった。
「そうではなくて……」
「間違いではないよ、凜凜」
皇帝はきっぱりとそう言った。
「後宮の者は私のものだ。位階すら持たぬ宮女であろうとも私が望めば、私のものだ。至極当然のことだろう?」
「…………どうして、どうして私なのです」
「私に意見するような恐れ知らずを面白いと思ってな。なかなか忘れがたかった。それにお前だって、央賢妃の元を訪ねろと申したではないか」
「こういう意味ではございませんでした!」
凜凜は悲鳴のような声を喉から絞り出した。
「わ、私を訪ねてほしいなどと、そのような大それたことは……一切……」
「同じ事であろう」
「は……?」
「央賢妃の手の者を訪ねるのと央賢妃を訪ねるのと……何が違う」
凜凜は冗談でも言われたのかと皇帝を見上げた。
皇帝はしれっとした顔でそう言っていた。
「な、何もかも……何もかも違います。何より……央賢妃様のお気持ちは……」
この人を雪英はずっと待っていた。
この人の訪れを待って、心を病んだ。
この人が来てくれると聞いて、無邪気に喜んだ。
それを凜凜がすべて壊した。
「自分の部下が皇帝の寵を与えられるのだ。光栄に思って利用すればよかろうに」
皇帝は心の底からそう言っているようだった。
凜凜には目の前の人の考えがちっとも理解できなかった。
「さあ、凜凜、そろそろ落ち着いたか?」
皇帝の言葉に、凜凜は自分が彼を待たせていたのだとようやく気付く。
何を待っていたのか。この先に何が待つのか。知識しかないことに凜凜はひどく怯えだした。
そんな彼女の頭を皇帝は撫でた。
「睦言としてはいささか色気に欠ける言葉だったが……まあ、及第点としてやろう」
皇帝の体が凜凜にのしかかってくる。
凜凜の体はすっかり皇帝の腕の中に収まっていた。
「…………」
急遽着させられた豪奢な長裾の胸元に、皇帝の手がかかる。
凜凜はただぼんやりと、服が脱がされていくのを受け入れる他なかった。
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