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第2話 嫁ぎ先の事情
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翌朝、目覚めたときにはミリアはベッドに一人だった。
アランがしたことだろうか? 夜着を着せられている。
恐る恐る腹の表面を撫でれば、そこにはもう白濁は残っていなかった。
ミリアがこのキャンジェル伯爵家に嫁ぐことになったのはあちらからたっての希望だった。
どこかのパーティーで見かけて、容姿を気に入ったのだとあけすけに言われた。
ミリアは貧乏伯爵家の末娘でまだ18、父はいつも金策に走り回っている。
対するキャンジェル伯爵家は広大な領地と莫大な資産を持っていた。
年老いたキャンジェル伯爵にぜひ後妻にと求められ、父はミリアに頭を下げてきた。
ミリアは家族のためにそれを受け入れた。
父親どころか祖父ほどの年齢のキャンジェル伯爵には後継者がいなかった。
必然、ミリアはキャンジェル伯爵との子作りを求められる、はずだった。
寒気はしたが、ミリアはそれを覚悟して嫁いだ。
しかし病床のキャンジェル伯爵はミリアにこう告げた。
「……私はもうこの体だ、子供など作っていたら、それだけで死ぬだろう」
「…………」
たしかに激しい運動などしたら、死んでしまいそうな危うさが老人にはあった。
「だから……君にはこのアランと子供を作ってもらう」
侍従、と紹介されたアランはミリアと同じくらいの年頃だった。
確かに年齢の釣り合いは取れるだろう。
「この方……と?」
戸惑うミリアにキャンジェル伯爵は歯をむき出しにして笑った。
「半分はメイドの卑しい血だが半分は私の血だ。問題はなかろう」
アランはキャンジェル伯爵の隠し子だったのだ。
キャンジェル伯爵はこの期に及んで実子のアランを認知することなく、それでも自分の血縁をこの世に遺そうとしていた。
どこまでも浅ましい、欲望。
しかし売られたも同然のミリアに拒否権はなかった。
夫公認で侍従と不倫をする。
あまりに倒錯した関係に頭を痛めながらも、ミリアはそれに従った。
キャンジェル伯爵が耳をそばだてている横で、アランと子作りをする。
そのはずだったのに、アランはミリアに精を放たなかった。
「…………」
その意図は、わかるような気がしないでもない。
自分を認知せず、種馬のように扱う父だ。反発するのも仕方ないだろう。
しかしミリアの立場はどうなるのだ。
純潔は奪われたのに、結婚の目的である子作りを完遂してもらえない。
さらに言えば子作りをしているフリはしなくてはならないのだ。
これから、毎晩。
「……はあ」
ため息をつきながらベルを鳴らす。
侍女が入ってきて、着替えを手伝ってくれた。
アランがしたことだろうか? 夜着を着せられている。
恐る恐る腹の表面を撫でれば、そこにはもう白濁は残っていなかった。
ミリアがこのキャンジェル伯爵家に嫁ぐことになったのはあちらからたっての希望だった。
どこかのパーティーで見かけて、容姿を気に入ったのだとあけすけに言われた。
ミリアは貧乏伯爵家の末娘でまだ18、父はいつも金策に走り回っている。
対するキャンジェル伯爵家は広大な領地と莫大な資産を持っていた。
年老いたキャンジェル伯爵にぜひ後妻にと求められ、父はミリアに頭を下げてきた。
ミリアは家族のためにそれを受け入れた。
父親どころか祖父ほどの年齢のキャンジェル伯爵には後継者がいなかった。
必然、ミリアはキャンジェル伯爵との子作りを求められる、はずだった。
寒気はしたが、ミリアはそれを覚悟して嫁いだ。
しかし病床のキャンジェル伯爵はミリアにこう告げた。
「……私はもうこの体だ、子供など作っていたら、それだけで死ぬだろう」
「…………」
たしかに激しい運動などしたら、死んでしまいそうな危うさが老人にはあった。
「だから……君にはこのアランと子供を作ってもらう」
侍従、と紹介されたアランはミリアと同じくらいの年頃だった。
確かに年齢の釣り合いは取れるだろう。
「この方……と?」
戸惑うミリアにキャンジェル伯爵は歯をむき出しにして笑った。
「半分はメイドの卑しい血だが半分は私の血だ。問題はなかろう」
アランはキャンジェル伯爵の隠し子だったのだ。
キャンジェル伯爵はこの期に及んで実子のアランを認知することなく、それでも自分の血縁をこの世に遺そうとしていた。
どこまでも浅ましい、欲望。
しかし売られたも同然のミリアに拒否権はなかった。
夫公認で侍従と不倫をする。
あまりに倒錯した関係に頭を痛めながらも、ミリアはそれに従った。
キャンジェル伯爵が耳をそばだてている横で、アランと子作りをする。
そのはずだったのに、アランはミリアに精を放たなかった。
「…………」
その意図は、わかるような気がしないでもない。
自分を認知せず、種馬のように扱う父だ。反発するのも仕方ないだろう。
しかしミリアの立場はどうなるのだ。
純潔は奪われたのに、結婚の目的である子作りを完遂してもらえない。
さらに言えば子作りをしているフリはしなくてはならないのだ。
これから、毎晩。
「……はあ」
ため息をつきながらベルを鳴らす。
侍女が入ってきて、着替えを手伝ってくれた。
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