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第1話 倒錯

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 主人の妻ミリアの下半身で侍従のアランが水音を立てている。
 普通は触られるはずもないところを執拗に指でかき混ぜられている。
 その事実に思わずミリアは顔を覆う。
「ああ……」
 声が漏れるのを必死に抑える。
 隣室で聞き耳を立てているだろう老齢の夫に、乱れた声など聞かれたくはなかった。
 そんな彼女の声を聞いたアランが不意に指を引っこ抜いた。
 汚れていない手の方で、ミリアの顔にかかった乱れた金髪を避け、口を封じるように口付けを落としてきた。
「……っ」
 不意の口付けにミリアはもうどうしていいかわからない。
 アランの青い目は伏せられている。
 黒く短いアランの髪が、ミリアの額にかかる。
 アランの手がミリアの両腕をアランの首の後ろに導いた。
 そうしている間にも下半身は蜜を垂らし、訪れを待つ。
 アランが楔をミリアの下半身にあてがった。
 ミリアは体をこわばらせながら、それを受け入れた。

 初めての痛みに体が震えた。
 こんな感覚があるなど彼女は知らなかった。
 口をふさがれているから、声を上げる心配はない。
 アランはミリアの頭を撫でると、ひときわ鋭く腰を打ち付けてきた。
 ミリアの隘路はきつくアランを締め付けている。
 すでに息は絶え絶えで、意識が飛びそうになっている。
 ミリアの中で楔が大きくなっていく。
 このまま注がれるのだろう熱を思って、ミリアのはらはきゅんと高鳴った。
 これはそのための交わり。
 愛はない。
 子供を作る、ただそれだけの行為。

 視界が薄れていく。
 腕から力が抜けていく。
 アランがそれに気付いて、腰の動きが緩くなる。
 緩やかな刺激はしかし、ミリアをもどかしくも、高ぶらせた。
 ぎゅうぎゅうとミリアはアランを締め付けた。

 そして、ミリアが最高潮の昂りを感じ、アランの硬直が絶頂に達したそのとき、アランはミリアの中から楔を引き抜いた。
 ミリアが戸惑う暇もなく、アランはそのほとばしりをミリアの腹の表面にまき散らした。
 ミリアの中で結ばれることが期待されていたはずの白濁が、ミリアの外に散らばる。
 戸惑いを口にしようにも、口付けは続いていた。
 視線で戸惑いを投げかけたミリアに、アランは鋭い眼光を返した。
「…………っ」
 怯んだ隙にミリアの口の中にアランの舌が入ってくる。
 舌はミリアの歯をなぞり、ミリアの舌と絡み合う。
 ミリアはどんどんと息を奪われていき、やがて意識を喪失した。

 アランはそんな主人の妻をほの暗い瞳で見下ろした。
 それは記念すべき、ミリアの初夜のことだった。
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