聖女候補の姫君は初恋の騎士に純潔を奪われたい

新月蕾

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第7話 姫の誘い

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 ベアトリクスはもうひと押しの行動に出た。

 ランドルフの顔に手を当てる。
 ランドルフの体がビクリと跳ねる。

 ベアトリクスはお構いなしに口付けをした。

 カサついたランドルフの口元をベアトリクスのツヤツヤした唇が、唾液でじんわり濡らしながら滑る。
 ランドルフはピクピクとなにかに耐えるように体を動かしながらも、それ以上は動かない。
 拒絶すらしない。

 ベアトリクスは顔だけではなく、上半身も彼に近付けた。
 シャツ越しでも分かる厚い胸板にネグリジェ越しに己れの双丘を押し付ける。

「……っ!」

 ランドルフが思わず息を漏らす。

「ねえ……いいでしょう?」

 口元に当てていた唇を耳元に持っていき囁く。
 その間にもジリジリと体はくっつき、下半身の下着の上にベアトリクスは跨った。

 ランドルフの股間に固いものを感じる。
 ベアトリクスは布越しに己れの秘所を押し当てた。
 ランドルフの股間がさらに熱を持ち、固さを増す。

「姫……様……」

 ランドルフの目は潤み、顔は赤かった。

「そんなに私に魅力がない?」

 切なげに囁く。

「い、いえ……そのようなことはまったく……」
「よかった」

 その安堵は本心だった。
 今までの男は曲がりなりにも誘いに応じてくれた男ばかりだった。
 今回のランドルフとのことは事故から始まっている。
 そもそもあなたが好みでないんです、と言われたらどうしようかと思った。

「遠慮なんて要らなくてよ。大丈夫、私の周りには口の固いものが揃っています。何も恐れることはないのです。ねえランドルフ、あなたも素直になって……」

 そう言うとベアトリクスはネグリジェの胸元のリボンを引っ張った。

 ベアトリクスは生まれついての姫君だ。自力で着替えなどしたことがない。
 だから男を誘うときは事前にサラにすべて脱がせてもらって待ち構えていた。
 今日ばかりは自分でもどうにか脱げそうなネグリジェを選んだ。
 あくまでランドルフとの集会という体裁だったからだ。

 リボンをほどけば胸元は簡単に露出した。白い双丘が薄暗い部屋に浮かぶ。

「ほら、ランドルフ様……」
「いえ……あの……その……」

 ランドルフは尻込みする。目線が泳ぐ。

「ほら」

 ランドルフの筋張った手をベアトリクスは包み込むように持ち上げた。
 手は重くしっかりしていたが、抵抗はなかった。
 ベアトリクスはゆっくりと持ち上げ、己れの双丘にランドルフの手を添えた。

「ベアトリクス様……」
「いかがです?」
「や、柔らかくて大きいです」
「そうでしょう。そうでしょう」

 ベアトリクスはランドルフの手の甲に自分の手の平を這わせた。
 指を指で押すとベアトリクスの双丘の上をランドルフの指が踊った。

「くすぐったい」

 吐息混じりに囁く。

「うう……」

 ランドルフは抵抗できない。
 ベアトリクスの手でベアトリクスの胸を揉まされている。
 その触り心地の良さに抗えない。
 
 ランドルフの股間が布越しにぐいぐいとベアトリクスの秘所を押し上げる。

「あ……下もこすれて……気持ちいい……」

 ベアトリクスは腰をひねる。

「や、やめ……」
「でもこんなに押し上げてきてる……興奮されてるの……?」

 ベアトリクスは自分の気持ちの良いところを把握して、そこをランドルフの剛直に押し当てる。
 じっとりと布越しに濡れていく。

「上も下も……こんなに気持ちいい……ああ、もっと先を……私に寂しい私にお慰みを」
「う、うう……」

 ベアトリクスはランドルフの股間に深く座り込んだ。
 布越しにより近付く。
 ランドルフは一切の抵抗をしなかった。

 ベアトリクスは不安に思う。
 ランドルフは今どう感じているのだろうか。
 ベアトリクスを淫乱な女だと思っているだろうか?
 それならいい。それでもいい。
 しかし本当は嫌なのではないか?
 ベアトリクスのような淫乱な女と肌を合わせるのが本当は嫌なのに、体を預けてはいないか?

 不安に苛まれながら、ベアトリクスはランドルフの体を触る。
 布越しでも分かるたくましい体。
 そして張り詰めた股間。
 その下にあるだろう、あの肉棒。

「…………」

 そしてベアトリクスはランドルフの股間から降りた。
 ベッドの横に腰掛け、そして思い切って、ランドルフの下着を下へと降ろした。

 剥き出しになったランドルフの下半身。
 昨夜見たばかりのそれを、ベアトリクスは両手で持ち上げた。

「うっ……」

 ランドルフの肉棒はそそり立つ。
 それをベアトリクスは優しく撫でる。
 根元から先まで丹念に。愛おしげに。

「姫様……姫様……お、俺は……」

 ガチガチに固まった肉棒に、ベアトリクスは口を近付けた。

「はむ」

 先っぽを口に含む。
 苦かった。
 今まで様々な男と様々なギリギリの逢瀬を重ねてきたベアトリクスだったが、このようなことは初めてした。
 相手の男がベアトリクスの秘所を舐めることはあっても、ベアトリクスからこのようなことをしてやることはなかった。

 不思議と嫌ではなかった。
 美味しいとは感じなかったけれど、ランドルフの肉棒を口にくわえるのはベアトリクスにとってどこか恍惚を感じる行為であった。

「ううっ……!」

 行為と状況にランドルフの肉棒は大きく脈打った。

「ふぁにふぁあふふぇて……」

 ランドルフの肉棒の先からベアトリクスの口内に何かが溢れてきていた。

「い、いけません!」

 ランドルフが初めて拒絶を見せた。
 ベアトリクスの額を抑え、己れから遠ざける。
 
「んぐっ」

 無理矢理引き離されたベアトリクスは口をすぼめながら肉棒から離れる。

「ああ、くそっ」

 ランドルフの罵声にビクリと肩が揺れるが、彼の罵声は彼自身に向けられたものだった。
 ランドルフの肉棒の先から白濁とした液が飛び散った。

「あ……」

 それはベアトリクスの顔にかかり、彼女の剥き出しの肩と胸を穢した。

 ランドルフが慌ててシャツを脱ぐ。

「姫様お顔をこちらに」

 ベアトリクスはおとなしくランドルフにされるがままになった。
 ランドルフのシャツがベアトリクスの顔を、口元を、肩を、胸を拭き取っていく。
 ベアトリクスはどこかもったいない思いでそれを受け入れた。

「も、申し訳ありませんでした。姫様のお顔にこのような無礼を……」
「うふふ」

 ベアトリクスは笑った。

「姫様……?」
「ごめんなさい。全身裸で私の体を清めようとするあなたがなんだかとても愉快で……」
「もう……姫様」

 ランドルフも呆れの混じった声で少し笑った。
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