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愚行?善行?聖女フレアドール

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光魔法ではあるものの、どう考えても不気味だった。


その不穏な魔力はアリアンナの考える通りの一種でもあるのだが、魔力の絶対量と質が圧倒的であり耐性のあるアルカナとアリアンナには感じ取り難く、微量すぎる魔力を正確に感じ取るには少し骨が折れるので、少々不気味だという程度の解釈であった。



国民達の轟くような歓声は更に不気味で、事件の事など忘れてしまったかのようにフレアドールの名を叫んでいる。



「どう考えても不気味ね……」


「んー、これは僅かだけど魅了……かな?」


「……なんてことを!」


「多分ね。人間は弱すぎても感じ取り難いんだ。不安ならここからアレフレアドールを捻り潰してもイイけど」



アルカナがそう言って美しく微笑んだが、アリアンナは眉を顰めた。


「だめよ、それだと都合の良い者に罪をなすり付けて反乱のきっかけを与える事になるもの……」


「そう」

(僕はここセントルーシュなんて要らないんだけど、アリィの故郷だから仕方ないね)


アリアンナは自らもまた強大な力を持つ故に、目の前の邪悪で強大な力にアリアンナ無しでは人間が立ち向かえずに虫ケラのように踏み潰されるという事には気付いていない。


寧ろ、そう感じさせないほどにアルカナは魔王というには寛大でアリアンナを溺愛しているのだ。




「じゃあ……とりあえず全員を炙り出してからかな?」

(全員早く見つけて殺してしまわないと)



「アル、いつになく協力的で助かるわ……ありがとう」

「しつこいのは嫌いなんだ。それに早くアリィとゆっくり暮らしたいからね」


「そんな風に思ってくれていただなんて、アル……大好きよ」

「……君は愛の言葉だけで僕を殺してしまえるよ」


飄々とした態度ではあるが、瞳の奥に見え隠れする熱量がアリアンナに伝わりそれが本心なのだと理解する。


何処までが冗談で、どこまでが本心なのかが分かり辛い彼であるが、こうして時たま隠しきれないアリアンナへの愛情が滲み出てそれがまた彼女の心を溶かしていく。


二人の甘く優しい雰囲気は、街中で異常事態が起きていることを忘れてしまったかのようで、暫く見つめ合ってから触れるだけのキスをした。


「でも……これじゃ堂々とお買い物なんて出来ないわね」


「そうだなぁ……変装するのはどうかな?」


「魔力までは隠せないわ」


「抑えておけば大丈夫だよ。人間なんてそんなに敏感じゃないからね」


(面倒があれば、殺してしまえばいいだけだからね)


「アル、何か酷いことを考えていない?」

「いいや。どんな姿にしようかと思ってただけ」


そんな二人は魔力を感知させないように、少し馬車で離れてからアルカナは白金の髪に青眼に、アリアンナは黒い髪と黒い瞳に変装し近くの店で少し裕福な平民に見える装いに着替えた。


アルカナは少しだけ若く見えるように背を縮め青年のような姿に、アリアンナは少しだけ艶やかなメイクをし流れの踊り子とその弟という設定を作った。



「えらく、変わったね」

「これなら分からないでしょう?」

「それはそれでイイね……」

「アルはなんだか可愛らしいわ……ふふ」

「髪と瞳は君の真似をしたんだ」

「素敵よ、けれどいつもの貴方が好き」

「……!血のように紅い髪も、金の瞳も、日に焼けない肌も……僕を気味悪く思った事はないのかい?」

「……どうして?あんなに美しいのに。あなたを象徴する全てが美しいわ、魔王という肩書きも貴方が持てばどの王よりも高貴に感じるわ」


アルカナを恐れない人間など、否、魔族だとしても殆ど居なかった。

強さを武器に生き延びてきたものの、強くなればなる程に存在を畏怖されアルカナを殺そうという者たちは後を立たなかった。

魔王なんてものは厄介で、自分達が生きる居場所を得たのと引き換えに見知らぬ人々の恨みの的にさえもなった。

見目が美しいのを自覚しているものの、全てを知っても尚美しいと微笑むこの少女は、それだけでなく惜しまぬ愛を与えてくれているのだ。


「初めてだ……」

「?」

「ううん、何でも。アリィ……」

「なぁに?」

「愛してるよキミだけをずっと」

「ーっ!」

顔を真っ赤にしたアリアンナにどきどきと心音が早まり、彼女を心から没したが今は姉と弟という設定なので周りに怪しまれないように堪えた。


その代わりにしっかりと手を繋いで、賑わう街を歩いた。


そしてひっそりとアリアンナの耳元で、悪戯な微笑みで言った。


「実質僕は二国を背負う王なんだ、それにお金持ちなんだ」


「ふふっ…….ええそうね」



「欲しいものは何でも買ってあげる、












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