28 / 38
披露宴は盛大に…!
しおりを挟む披露宴が開かれると主役のふたりより一足先に会場に集まった貴族達はその華やかと初めて見る光景に驚愕した。
皇宮の上階にある広間に準備された豪華な食事と様々な飲み物。
皇宮の上階である為に国を見渡すことの出来る広い庭まで豪華に飾られており、なるべく沢山の人が入れるようにと立食パーティーとなっていた。
飲み物を運ぶのは皇宮のウェイターではなく、絶対に人間の言う事を聞くはずがない妖精たちだった。
室内のはずなのに壁には滝が流れており。かと言ってその水が何故か溜まる事も水浸しになる事もない。
音楽を演奏している魔族達は見目麗しく、もちろんどの食事も美味である。
庭は花で飾られ、魔法で生み出されたシャボン玉とキラキラとした光が踊るように浮かんでいて幻想的である。
アルカナの髪と同じ真紅を基調とした飾りつけにはふんだんに使われた金とダイヤモンドが魔王は決してただの田舎者では無いと知らしめていた。
「ここは本当に皇宮なのか…?」
「キレイ…。」
皆はアリアンナへの嫌悪など忘れ、まるで夢のようなこの場所の雰囲気に酔知れた。
皆が、主役はまだかと辺りをキョロキョロとし始めると、曲の雰囲気が急に変わる。
正面の扉が開き、視線がそこに集まると
現れたのはアリアンナとアルカナではなく、セルジオとリリスであった。
淑女達はセルジオに、紳士達はリリスに思わず目を奪われて言葉を失う。
静まり返った会場に好都合と言わんばかりにセルジオが口を開く。
「本日は、我が主君の為にお集まり頂き感謝致します。」
リリスが艶やかな仕草で魅了するようにセルジオの言葉の後を続けた。
「我が主君はあちらから参ります。皆様、庭へ御出で下さい。」
皆が庭の方へと視線を向けると、地響きがなり花火の音が鳴る。
ラッパの音とものすごい魔力を感じて思わず皆、走り出す勢いで庭へと出た。
漆黒の大きな竜に乗った二人が現れ、赤々とした炎がその周りを飾るように円を描く。
王都を囲むように水柱と火柱が上がり、程よく吹く風が優しく花びらを舞わせている。
まるでパフォーマンスするかのように沢山の黒竜が旋回し、妖精たちは祝福の歌を歌った。
悲鳴をあげる者、魅了される者、其々の反応を示したがその壮大なパフォーマンスに皆が身震いした。
アルカナが手を挙げると、地面から突如現れるステージ。
そこに着地した二人。
準備が少なかった為に地味な披露宴だとばかり思っていたフレアドールは唇を噛み締めて、幸せそうなアリアンナを睨んだ。
赤いバラの花びらと共にステージに舞い降りた二人はあまりに美しく、公式の披露宴だと言うのにアリーチェでは珍しい黒で統一された装い。
カルロも、フレアドールも、イザベラも、
皇帝でさえも見た事のないアリアンナの生き生きとした表情。
瞬きひとつすらも美しく感じる程に、艶やかだが凛とした強さを感じるアリアンナに皆、息を止めてしまうほどであった。
寄り添うように、だけど確かな存在感で魅了するアルカナもまた艶やかでかつ絶対的な強さを感じさせるその雰囲気に皆息を呑んだ。
「魔王陛下、魔王妃殿下が御臨場です。」
「さて、皆様。ダンスの前にもう少しお付き合い下さいね?ふふ」
「魔王妃殿下の戴冠式を行います、ティアラの贈呈後御二方の誓いの言葉で戴冠式を終了致します。」
イザベラの顔つきが明らかに変化したのが見えたアルカナは笑みを深くした。
セルジオはリリスに目配せするとリリスは思わず笑う。
「リリス…。」
「わーかってるわよ。安心して上手くやるわ。」
フレアドールはずっと握りしめていた手をカルロにそっと開かれて我に返る。
「カルロ様…」
「大丈夫だ思い通りになんていかない。」
(フレアと結婚し皇配になり、アリアンナは私が奪うのだからな。)
「カルロ様…っええ。そうよね!」
(女皇帝となり、カルロも魔王も手に入れるのよ。アリアンナ、貴女の力も飼い殺してやるわ。お母様に敵うはずないもの!)
そして、どこか寂しそうに二人をみつめる皇帝の隣で表情にこそ出さないものの湧き上がる欲望を必死で隠すイゾルテが居た。
(財力、力、容姿、魅力、全てが完璧!!私に相応しい男!!!あぁ早く、早くティアラを奪って征服しないと。私のアルカナ、そしてアリアンナ、あなたはフレアの為に生きるのよ!!!!)
仲睦まじく、それでいて決して誰も触れさせないほどの圧倒的な雰囲気を纏った二人が庭に降りると黒竜達はまるで犬が主人を待つかのように建物の上に座って待つ。
アルカナが優雅にアリアンナをエスコートし、いつのまにか準備されていたステージに上がると思わず目を閉じるほど明るい光が差し、
現れたのは、
「精霊王様……」
カルロがポツリと呟いた瞬間にざわつく会場内。
「精霊王!?」
「本当に存在していたのか!」
「精霊王様って素敵…っ!」
エレメントはそんな人々に呆れたようにため息をついてから、言葉をゆっくり発した。
「私の主は、アリアンナ・バラキエル魔王妃である。精霊王の名に誓って彼女に魔王妃のティアラを贈呈しここに正統な魔王妃であることを証明する。」
祝福とは少し違う、驚きに近い歓声があがりお互いの顔を見合わせてから頷いた二人がエレメントからティアラを受け取ろうとしたその瞬間、
「お待ちなさい!」
0
お気に入りに追加
454
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
美しくないと虐められていましたが、幸せを掴みました
四季
恋愛
ミレーネはその美しくないとされる顔立ちゆえに、実の父や義母、妹などから、いつも虐めを受けていた。
だがある日、屋敷に客としてやって来た見知らぬ人物と出会う。彼はミレーネを美しくないと批判しないし、むしろ、温かく受け入れてくれる人で。
……以降、彼女の人生は大きく変わり始める。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
完結 貞操観念と美醜逆転世界で薬師のむちむち爆乳のフィーナは少数気鋭の騎士団員を癒すと称してセックスをしまくる
シェルビビ
恋愛
前世の名前は忘れてしまったが日本生まれの女性でエロ知識だけは覚えていた。子供を助けて異世界に転生したと思ったら17歳で川に溺れた子供を助けてまた死んでしまう。
異世界の女神ディアナ様が最近作った異世界が人手不足なので来て欲しいとスカウトしてきたので、むちむち爆乳の美少女にして欲しいとお願いして転生することになった。
目が覚めると以前と同じ世界に見えたが、なんとこの世界ではもやしっ子がモテモテで筋肉ムキムキの精悍な美丈夫は化け物扱いの男だけ美醜逆転世界。しかも清楚な人間は生きている価値はないドスケベ超優遇の貞操観念逆転世界だったのだ。
至る所で中出しセックスをして聖女扱いさせるフィーナ。この世界の不細工たちは中出しを許されない下等生物らしい。
騎士団は不人気職で給料はいいが全くモテない。誰も不細工な彼らに近づきたくもない。騎士団の薬師の仕事を募集してもすぐにやめてしまうと言われてたまたま行ったフィーナはすぐに合格してしまう。
王太子様、丁寧にお断りします!
abang
恋愛
「……美しいご令嬢、名前を聞いても?」
王太子であり、容姿にも恵まれた。
国中の女性にはモテたし、勿論男にも好かれている。
そんな王太子が出会った絶世の美女は少し変……?
「申し訳ありません、先程落としてしまって」
((んな訳あるかぁーーー!!!))
「あはは、面白い冗談だね。俺の事を知ってる?」
「はい、多分王太子殿下ではないかと……」
「……うん、あたりだね」
「じゃあ、落とし物を探して参りますので……さようなら」
「え"っ!?無礼とか、王太子殿下だ、とか考えない?」
「ワーオウタイシサマダ、ステキ……では失礼致します」
「……決めた、俺は彼女を妻にする」
「お断りします」
ちょっと天然なナルシ王太子×塩対応公爵令嬢
「私は平和で落ち着いた愛を育みたいので」
「俺は、キミと愛を育みたいよ」
「却下!」
転生したら冷徹公爵様と子作りの真っ最中だった。
シェルビビ
恋愛
明晰夢が趣味の普通の会社員だったのに目を覚ましたらセックスの真っ最中だった。好みのイケメンが目の前にいて、男は自分の事を妻だと言っている。夢だと思い男女の触れ合いを楽しんだ。
いつまで経っても現実に戻る事が出来ず、アルフレッド・ウィンリスタ公爵の妻の妻エルヴィラに転生していたのだ。
監視するための首輪が着けられ、まるでペットのような扱いをされるエルヴィラ。転生前はお金持ちの奥さんになって悠々自適なニートライフを過ごしてたいと思っていたので、理想の生活を手に入れる事に成功する。
元のエルヴィラも喋らない事から黙っていても問題がなく、セックスと贅沢三昧な日々を過ごす。
しかし、エルヴィラの両親と再会し正直に話したところアルフレッドは激高してしまう。
「お前なんか好きにならない」と言われたが、前世から不憫な男キャラが大好きだったため絶対に惚れさせることを決意する。
【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件
百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。
そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。
いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。)
それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる!
いいんだけど触りすぎ。
お母様も呆れからの憎しみも・・・
溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。
デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。
アリサはの気持ちは・・・。
未亡人メイド、ショタ公爵令息の筆下ろしに選ばれる。ただの性処理係かと思ったら、彼から結婚しようと告白されました。【完結】
高橋冬夏
恋愛
騎士だった夫を魔物討伐の傷が元で失ったエレン。そんな悲しみの中にある彼女に夫との思い出の詰まった家を火事で無くすという更なる悲劇が襲う。
全てを失ったエレンは娼婦になる覚悟で娼館を訪れようとしたときに夫の雇い主と出会い、だたのメイドとしてではなく、幼い子息の筆下ろしを頼まれてしまう。
断ることも出来たが覚悟を決め、子息の性処理を兼ねたメイドとして働き始めるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる