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魔界は都会?祝福と宴。
しおりを挟む魔塔に帰ると、先に魔界で行う式の段取りで忙しい日々が続いた。
ひと段落ついて今日こそ休みだと身体を大きく伸ばしたアリアンナに、アルカナの側近でもあり、アリアンナの家庭教師でもあるセルジオが珍しくにこやかな表情で訪ねて来た。
「セルジオどうしたの?今日は予定がない日よ?」
「今日はアルカナ様と魔界の視察です。街や国民をよく知ることは王妃にとって必要不可欠です。」
「そんな……分かったわ。今日なのは予想外だけれど、私もいつか行ってみたいとは思っていたもの。」
「では、準備を致しますので。ラフな格好で結構です、お好きな洋服を着て来てください。」
魔界では人間界の貴族のように堅苦しい貴族のルールは無く、正装時や公式のパーティー以外では堅苦しいドレスコードなどは無い。
平民も、貴族も好きな服を着て好きな格好するのだ。
賑やかな街に出ると、様々な格好をしたユニークな人々が居た。
「まぁ!楽しみだわ!リリスに相談してみようっと!」
そんなアリアンナをセルジオは微笑ましげに見ていたが、ハッと我に返ったように頭を軽く左右に振って、「ではアルカナ様の所へ行って参ります。」と姿を消したのであった。
「アリアンナ、今日はまた一段と美しいね。」
「アル…、貴方だって素敵よ。」
アルカナは目を細めてアリアンナを見てから、極上と表現できる程の笑みで彼女の頭を優しく撫でて頷いた。
「魔族は気性は荒いのも多いけど、いいヤツばかりだよ。念のために僕から離れないようにね。」
「はい…。でも不安だわ、人間である私が魔王妃だなんて皆認めてくれるのかしら…」
「皆の歓声を一度聞いただろう?それに君は人であって人ではない…形容し辛いが神からの贈り物なんだ。人間にとって喉から手が出る程に欲しい力だし、魔族にとっては親交深い力だよ。」
「なんだか、正反対で対立していそうなイメージだけれど…違うのよね。」
「あぁ、人間が作った偏見さ。善悪なんてものは魔族も人もその者によるよ。魔族にも悪はいるし、人にも悪はいるだろう?」
「ええ、そうね…たしかに皆、人とそう変わらないものね。」
「神や精霊王なんてものは魔王ともそう変わらないし、大きすぎる力を持つ者同士共感する部分も多かったのか、仲が良かったらしい。」
「そう…エレもとても神を好きだものね。」
「そうだね。くっく…」
馬車と言うには些か個性的な乗り物を操縦しているのはセルジオなので、もはや馬車ではない独特な乗り物は乗り心地が良く、窓から見える景色はアリーチェとは全然違う。
賑やかな街を抜けると、今度は美しい神殿の様な創りの街や、人間界とは違う植物ばかりの森、何もない砂漠と幻想的なオアシス、海の周りには栄えた港町にあちこちには子供達が魔法を学ぶ学園。
どこを見て回っても美しくてアリアンナは歓声があがるばかりだった。
「魔王妃様!」
「万歳!魔王妃様、ようこそ!!!」
アルカナは恐れられてもいたが皆に慕われており、セルジオも国民とかなり気安い様子であった。
「魔王妃様、リリス様をどうにかしてくれよ~!ウチの甥っ子なんて骨抜きでよ~!姿が見れないと三日も寝込むんだぜ~!」
「あ…あら…っ、よく言っておきます…。」
タジタジなアリアンナと、喉を鳴らして笑うアルカナ、額に手を当ててセルジオはため息をついた。
何処に行っても、祝福を受けた。
不思議な程に貧富の差があまりに小さく、皆が幸せそうな国であった。
困りごとや不安は気安くセルジオに伝えていたし、アルカナに対してもアリーチェの貴族なんかより遥かに国民は身近であった。
リリスや他の幹部達も良く見回っているらしく、皆市井にかなり馴染んでいるようだった。
多くの祝福を受けて城に帰ると、アリアンナは直ぐに地図をもらって覚えた事や知り合った人を書き込んだ。
そんなアリアンナの姿勢にセルジオはとても嬉しそうだったし、
なんとも思わぬ素振りのアルカナも実はとてもアリアンナに感動していた。
その後も休みのたびにアルカナとデートだ、視察だと街に出ては日に日にアリアンナも国に馴染んで行った。
「アリアンナ・アリーチェ、如何なる時も魔王だけを愛する事を誓いますか?」
「誓います。」
「アルカナ・バラキエル、如何なる時も魔王妃だけを愛する事を誓いますか?」
「誓うよ。」
「では此処にお二人の婚姻を認め……本日は…、」
「皆、宴だ。盛大に楽しめ!!!!!!!」
セルジオがそう声を上げると、その場にいる国民達やモニター越しに見ている国民達、魔界中から魔力の高まりを感じ、地響きがするほどの歓声が上がった。
魔界中で、三日三晩パーティーが行われ
魔王城の大ホールもその間、多くの魔族の貴族達が集まった。
「アリィ、疲れてないかい?」
「ええ、とても楽しいわ!」
「僕は戦う方が楽しいんだケド…」
「もう!折角祝ってくれているのよ?それに…こんなに祝福してもらったことは初めてよ、昔は誕生日ですらも職務が忙しくて…」
「…。アリーチェでの披露宴までまだ少しある、好きなだけ食べて遊ぼう。僕も付き合うよ。」
「…!!アル、あなたって本当はとても優しいのにどうして皆怖がるのかしら…、」
「さあね…くくっ」
(優しいのはキミにだけだからだよ)
「あっら~!毎日いちゃいちゃしちゃって貴女ってば飽きないわねぇ!」
「リリス!来てくれていたのね!!」
「当たり前じゃない、それでなくても職場だもの…アリィ、出会いは良くなかったけれど出会えて嬉しい。アルカナ様の相手が貴女で良かったって今は思う。ほんとうにおめでとう。」
「リリス…。私も貴女のような快活な女性は初めて出会ったわ。かけがえのない親友だと思っているわ。ほんとうに、ありがとう。至らぬ魔王妃だけれどこれからも宜しくお願いするわ。」
そう言って抱擁する二人を面白そうに見て笑うアルカナだったが何処か嬉しそうな優しい表情であった。
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