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私達は絆を繋ぎたい
しおりを挟むそして、等々忠誠の儀を行う時間となり、
壇上に上がり両陛下の真ん中に、一歩前へ出てテオドールが威厳ある雰囲気で立っていた。
本日の主役であるセシールとクロヴィスが壇上に上がりセシールはカーテシーをクロヴィスは片膝をついた。
テオドールは正装をしており、王家の紋章の刺繍された赤色のマントは一目見れば忘れない程美しく、高級なものだと分かる。
その人差し指には王が代々受け継ぐ、指輪をしており公式の場でこれを付けると言う事は彼が次代の王だと皆に公表することを意味していた。
「臣、セシール・グレース・ノーフォードはテオドール・ウィラー・アルベーリア殿下への忠誠を誓います。」
「臣、クロヴィス・ラウル・ランスロット、右に同じで御座います。以降これは命尽きるまで何者も侵せぬ忠義と此処で宣言致します。」
皆の歓声とざわめきが聞こえた。
そして、テオドールの指輪に順番に口付けして、テオドールと両陛下の言葉を待つだけだと思ったその時…
「陛下、発言の許しを頂きたい。」
リシュの父である宰相がよく通る声で言った。
すると、レイモンド家とメーベル家の者が前へ出てノーフォードどランスロットの者達と並んだ。
そして壇上の下で見事なカーテシーのマチルダと膝をついたリシュが頭を下げる。
「臣、リシュ・グランデ・レイモンドは二人に続き、テオドール・ウィラー・アルベーリア殿下への忠誠を命つきるまで不滅のものとし誓います。」
「臣、マチルダ・リダ・メーベル、同上です。テオドール・ウィラー・アルベーリア殿下への忠義を命の限り不滅とし、…誓います。」
「「!!!!?」」
「…!リシュ、マチルダ…。」
テオドールが驚きを隠せず、表すと、
いつのまにかセシールの後ろにはダンテも控えて膝を突き頭を下げていた。
これは、強大な力を持つ家門がテオドールを支持したことを示し、テオドールを歴史上最も強い王としたのだ。
テオドール顔には出さないが、セシールにはちらりと覗き見た彼が涙を堪えている事が分かった。
セシールの頭の中に声が聞こえる、
(セシール、あなたが今隣に居ればと悔やんでしまうよ。でもあなたのおかげで私は誰もがかつて望んだ形で王となれるだろう。ありがとう、これは、言わないでおくつもりだったけど…ずっと愛している)
セシールは顔には出さ無かったが今にも涙が溢れそうだった。
それぞれテオドールより脳内へ干渉魔法があったらしく、皆頭を下げたまま涙を堪えるように、一瞬強く目を閉じた後、
テオドールの言葉で顔を上げて、強い瞳で彼を見つめた。
「彼等の忠誠を受け、この儀を持って誓いは不滅とする。そして、感謝し王太子として皆の想いを裏切らぬよう邁進する。」
拍手喝采、皆が彼の言葉に沸いた。
彼らの強い絆を感じる雰囲気に、
会場中が歓喜と感動に包まれた。
テオドールは両陛下を見たあと、彼らが微笑んだのをきっかけに
セシールとクロヴィスを抱きしめて、マチルダとリシュを壇上へ上げた。
「忠義を誓った者以前に、彼らは私のかけがえのない友人である。彼らに、そしてここに居る皆に、国民に、感謝したい。」
「そして…彼らの幸せを心から祝おう!!」
「大切な婚約パーティーで場を借りた事、ノーフォード公爵に感謝する。」
「光栄でございます、陛下。皆様、これよりはパーティーをごゆるりと楽しんでくださいませ。」
マケールが言うと、それぞれパーティーを楽しみ始めた。
「テオ….」
「クロ、本当におめでとう。」
彼らは握手し、堅く抱擁した。
本日、名実共に、彼等全員の絆は堅く結ばれたのだった。
望んだ形で無かったかもしれない
望んだ相手と結ばれたかもしれない
だか、彼女たちは突然動き出した運命を
確実に自分達の足で未来へと歩いていた
(せめてあなたの居るアルベーリアを幸せに…)
(形は違えど、あなたを支えていくわ…)
(せめて、お前を支えさせて欲しい。)
その夜、三人はそれぞれ涙を流した。
恋は、愛は、ときに胸が張り裂けそうな程切ないものだった。
だけど、甘く痺れるような、温かくて優しいような、
そしてとても幸せで、大切な想いであった。
少しずつ、少しずつ大人になって、
少しずつその痛みは消えて自分の一部となる。
女神の涙はその日、
光の雨を降らせた
アルベーリア中が、優しく温かい気持ちになり
植物や花は生き生きと咲き誇ったと言う。
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