公爵令嬢は破棄したい!

abang

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辺境伯令息と公爵令嬢

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王宮で婚約の白紙を言い渡され、エレメントの処刑の日にちの公式的な発表があり、国王や、王妃からはまた改めて茶会でもと誘って貰い、セシールはノーフォード邸に帰省した。


エイダとエイミー、そしてアンや暗部の者たちも一緒に戻り、エラサには近いうちに行くと言うことが決まった。


「皆、よく帰ったわ。ごめんなさいね。」


「お嬢様、共に戦えて光栄でした。」

「私達のお嬢様が無事で良かったです。」


エイダとエイミーは珍しく表情をくずし、ニンマリと笑ってセシールの歓迎を喜んだ。



姿を見せぬがそのオーラから暗部の者達も穏やかであることはセシールには分かっていた。


「あなた達にも、今夜改めて会いたいわ。」


セシールが言うと、ガタンと何処かから音が鳴り涙の滲んだメモが一枚降りてきただけだった。

(喜んで。私達のお嬢様)

   








ーーそしてエレメントの処刑日がきた。


王宮の鐘が鳴り、それは王族が亡くなった事を示すものであった。



(エレメント様は、お亡くなりになったのね。)



幼い頃にテオドールはとても懐いていたと聞いた。
テオドールの柔らかい話し方もきっとエレメントの中性的な雰囲気からきたものではないかと思っていた。



「お父様…」


「セシールは最近黒ばかり着ている、」



マケールはセシールを抱きしめて頭を撫でた。



「今日で最後よ…。お母様は?」


「庭でお茶の準備をしているよ、行っておいで、」



「はい、ではお父様、また後で。」


セシールは微笑んで執務室へ向かう父を見送り、自分も母の元へと急いだのだった。



「お母様、お待たせ致しました。」


「セシールちゃんっ、もぅまた黒なのね?」


「今日でお終いにします、」


「兎に角やっと二人でお茶ができてお母様は嬉しいわぁ~」

ディアーナの嬉しそうな微笑みに、セシールも自然と笑顔になった。



「お母様も最近お忙しそうですね…?」


「婚約が白紙になり、縁談が沢山届いているの…今はまだ返事を急かすものはないのだけれど…。」



「縁談…今はまだそのような気にはなれないわ…」


「そうねぇ、恋人だと思わせる程仲の良い殿方でもいれば、少しは牽制になるかもしれないわねぇ…………あっ」


「??」


「貴女達は生まれた頃から幼馴染でしょ?マチルダちゃんは魔法と勉学にしか興味が無かったのだけれど、、クロヴィスったら後継としての修行と勉学以外には、セシールちゃんにしか興味がなくてね、それを思い出したのよ、」クスクス


初めて聞く話だった。昔からクロはいつも甘やかしてくれたし、兄のような、時に弟ような、もっと甘いなにかのような、ただ彼は温かかった。それだけだと思っていた。



「そうだったの…全く、覚えていないわ、、」



「セシールちゃんの婚約が決まるまではね、クロヴィスったらずっとセシールちゃんと結婚すると言っていてね、貴女もよ、クロと結婚するのって、小さな手をずっと繋いで居たわ。ふふ」


確かにずっと、クロヴィスとマチルダとは一緒だったが、そんな幼い頃の事はずっと忘れていた。


「お母様ったら、クロとは今はそんなんじゃないわ、」


「あら、いいと思ったのに…。ふふ」


初恋、とは言えないほど幼い頃の話なのでクロヴィスも覚えていないだろうが、少しだけセシールは照れ臭かった。



王家から婚約の打診があった時は、クロヴィスは落ち込んだが、顔には出さず、テオドールにも子供ながら無理をした下手くそな笑顔を見せていたらしい。

その顔を想像できてしまい、二人で笑った。

現在、彼等はとても仲が良く。
適度な距離感に見えるが、どちらかに何かあった時には必ず駆けつけるし、親友として、とてもお互いを信頼している。



「あら、その割にはランスロット家からの縁談は来ていないわねぇ、」


「お母様っ、幼い頃の話よもう!」


二人はその後も沢山の話をして、沢山笑った。


パーティではいつもセシールと踊ろうと、群がる令息達をセシールの背後からもの凄く凍えるような冷たい笑顔で、蹴散らしているというリアムの話だったり。



エイダとエイミーのペンダントにはセシールの名前が入っている事。


ダンテが強くなければセシール様をお守りできないと、修行を増やした事。



アンがセシールの悪口をいう令嬢に、離れた所から魔力で殺気を当てて気絶させたことを誰にもバレていないと思っている事。


セシールが起きたと報告してからは、マチルダから大量のポーションが送られてきた事。


ディアーナは邸の事を何でも知っていた。

そしてセシールはどれ程皆に愛されているのかを知り、照れ臭いような、でも温かい気持ちになったのだった。


「…明日はマチルダの所へ行くわ、お母様」



「ええ、あの子ったら泣きながら起きない貴女に回復魔法をずっと当ててくれていたそうよ。とても心配してくれていたのね。」



良い友達を持ったのね、とセシールを呼び抱きしめた母の優しさに、安心したのかじわりと目頭が熱くなるのを感じた。

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