公爵令嬢は破棄したい!

abang

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伯爵令嬢は邪魔したい2

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テオドールが別室に三人を案内すると何処から現れたのか、すかさずセシールの侍女達がお茶を運んで来た。
ノーフォード家の使用人はとても優秀だとよく耳にするがその通りだと感心する。


テオドールは国王である父の話をふと思い出した。
セシールの母も、セシールも国の守護とされる月の女神の末裔らしい。

その為か、王家の護衛もかなりの精鋭であるがノーフォード家の使用人は執事からメイドや庭師、料理人までが王家の護衛を遥かに超える程優秀だと言うので想像がつかない。


また、侍女のエイダとエイミーも古くからの顔馴染みでえらく立派な侍女に成長したものだなぁと感心していると、クロヴィスの金色の瞳が急かすようにテオドールを捉えた。

慈しむようにセシールを守り、今のテオドールには向けられないありのままのセシールの笑顔を向けられるクロヴィスが羨ましいし、悔しくて目線をカップに移した。


「不意に令嬢達の噂話が聞こえてしまって、使用人にネズミの生死を問うものだったので不穏に思い、少し聞いてしまったんだ」


ーーーー数時間前


(早く着替えて、休憩時間には今日こそセシールの所へ会いに行こう)


「そのネズミは死んでいるのね?」

(ネズミ?)

「は、はい。ちゃんとデボラ伯爵令嬢の机で殺して参りました」


「いいでしょう。この金貨を持ってあなたはウチから立ち去りなさい、他の邸への推薦状もあります」


「あ、ありがとうございます!」



使用人らしき者が逃げるように立ち去った後、彼女達は口々にエミリーへの不満を口にした。


「ギデオン様をたぶらかしたあの女が悪いのです」

「そうよ、ダグラス様もです。表には出さないものの、最近とてもあの女を熱っぽい目でみています!」

「私の婚約者も……!」

「セシール様はなんて寛大なの!?それをいい事に……」


どうやらギデオンとダグラスの婚約者とその友人達のようだったが、いつもの淑女らしい姿とは違い、放っておいてはいけない雰囲気だったので急いで教室まで確認しに行ったところ……

何故かセシールがクロヴィスに守られるようにエミリーと対立していた。


「と、言う事だったんだ」


終始眉を顰めて話し終えたテオドールを見ながら、セシールは不謹慎だと分かってはいるが、息を切らしてきたのがセシールの事を聞きつけた訳でなく、エミリーを案じてのことだったのだと落胆した。

「全く、理解に苦しむよ。……セシール?」

「え?……ああ、ごめんなさい」

「セシールあなた少し疲れているのよ」

「そうなのかしら、でも大丈夫よ」

マチルダに笑顔で返したセシールを心配そうにしながらもテオドールは話を進めた。


エミリーが馴染めていないこと。

婚約者をとられたと沢山の令嬢が被害を訴えていること。

エミリーへの嫌がらせはそんな令嬢達からのものでは無いかということと、それをセシールの仕業だと思いエミリーが怯えていると言う話だった。


「全くもって、私の関与はありませんわ。先程も申しましたが、殿下が愛妾を持つことを許さないほど狭量ではありません」


傷ついたような顔をするテオドールに気付かないまま、セシールは目を伏せそのまま悲しげに続けた。


「なにも次期王妃の椅子へ執着している訳ではありません。殿下があの令嬢をお好きなら彼女を娶ればいいのですよ」


マチルダが心配そうにセシールの名を小さく呼んだがそれをクロヴィスが止めた。


「彼女は伯爵家の出、我が家とは爵位に差があるとはいえ決して不可能ではないでしょう。」

「セシール!何故そんなことを……っ!私は貴女を愛している!愛妾を作る事も、他の者を娶ることも望んでいない!」


焦って立ち上がったテオドールは、珍しく声を荒げてセシールに訴えた。


「……そうですか」


それを信じていないような顔で返事をするセシールだが、ここ最近のテオドールの行動を考えれば無理もないだろう。


「どう対処するつもりだ?」


納得いかないようなテオドールを遮りクロヴィスはエミリーと他の令嬢たちの対処をどう考えているのかとテオドールの意見を求めた。


「……クロ、そうだね。とりあえずミリィ嬢には後で事情を聞く際に、令嬢たちの婚約者とのことを確認しよう」


「お言葉ですが殿下。きっと彼女達の言っていることは真実よ。セシールは知らないようなので不安にさせてはいけないと黙っていたんだけれどーー」


マチルダがエミリーが令息や先生達と関係を持っているかもしれないという噂や目撃情報を話すと其々皆複雑な表情をした。


「マチルダありがとう。そうだったのね……でも、なぜ真実だと?」


「ウチのクラスにも居るの。エミリー嬢に夢中で婚約者に冷たく当たられていると泣いていたわ」

「俺も学園中で聞く噂だから流石に知ってるよ」


ふたりの話を聞いて目を丸くしたセシールとテオドールはお互いの顔を見て何かを考えこんだ。


(ミリィ嬢に確認してみないことには分からないが、もしかしたら……)

(殿下だけでは無かったのね)


「とにかく、事実確認をするべきだね。」

「俺も周りに注意しておこう」


セシールとマチルダも頷き、一息ついてから次の授業から出席することになった。


その頃、医務室ではエミリーを囲み「大丈夫か?何があったのか?」と沢山の子息たちが集まっていた。


「私っ、とても驚いて。きっと……またセシール様の指示だったんじゃないかと思うんです」

「そんな……!」

「その、ここだけの秘密にしていて下さいね?公爵令嬢に目をつけられたら……」


ふわふわに巻かれた少し乱れた亜麻色の髪を整えず、ドレスの肩は片方落ちているままだ。

少女のような可憐な容姿だが乱れた姿でベッドに座っているエミリーはとても色っぽく、弱々しく涙する姿は庇護欲をそそる。

皆はそんなエミリーに夢中であり、夢中になると彼女の魅了はより効果的に効くので正気ではいられない。


「セシール様が……なんて事を!」

「そんな人が次期王妃だなんて!」

「僕たちがエミリー嬢を守ります」

彼らは口々にセシールへの憎悪、軽蔑を口にし、エミリーを守ると誓い始めたのだ。
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