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たったの五人なんて無謀な事
しおりを挟む地下に案内され、そこで見たのは驚くべき状況だった。
売られたか、連れてこられたのだろうまだ幼い子供たちのひどい労働環境のさらに奥には二つの扉。
「奥を見ても?」
「……ええ」
チラリとグレーシスを見てからシヴァに返事をした領主を人睨みして奥へと進んだ。
片方は子供ばかりが捕らえられている牢の部屋で
もう一つは女性ばかりが捕らえられている牢の部屋だった。
「ここの者達は私の一言で瞬時に寿命が決まります。例えば騒ぎ立てられれば証拠は隠滅せざるを得ませんので」
まるで捕らえられているもの達を人質に取るような言い方だった。
「なので、忘れてほしい」と言う領主のニタリと下卑た笑いがやけに胸焼けを起こさせる。
「見逃せないと言ったら?」
シヴァが、静かな声で領主に聞き返すと「でなければ……たったの五人でこの傭兵達を倒せるのか?」とグレーシス達の前に数えきれない人数の敵がぞろぞろと集まって来た。
「妃殿下は事故で亡くなられた。意味がわかりますか?」
「妃殿下さえお残りになれば他の者など隠滅してもいいしねぇ、あなた方も無事に帰れるでしょう」
と歪に笑った領主の言葉の意味は、「グレーシスを差し出せば無事に帰してやる」という意味が含まれていたがそれをシヴァ達が許すわけもなく、直ぐに剣を抜く。
「妻を差し出せと聞こえたが?」
「奇遇だね殿下、僕もそう聞こえたよ」
「あら可笑しいわねぇアタシもよ」
「気のせいではないかしら?」
「妃殿下、ユスフリード俺の背後へ」
「背後を頼むの間違いじゃ無いの?」
「……ユス、背後を頼む」
肩を並べて臨戦体勢のシヴァとアイズ
彼らよりも背後に下がってグレーシスを背に隠してユスフリードにその背中を預けたバーナード。
シヴァ達を避けてグレーシスを真っ直ぐ狙ってきた男をスルーして「バーナード」と確かめるように言ったシヴァに「任せて」と男を最も簡単に敵を斬って笑うバーナード。
バーナード達の前で敵を無慈悲に斬り捨てて行くシヴァとアイズが居ても尚溢れて流れ着く程の敵の数にうんざりしながらもバーナードもまた応戦する。
「アナタの旦那様ったらまるで悪魔か鬼のようね」
「……怪我をしないといいのだけど」
「剣を持つ女の子の感想なんてこんなモノね……」
「ーっ、ユス!すまん溢した!!」
「ふふ、ダイジョウブよ~っと!」
「私も戦えるわユス」
「必要があればね、見てみなさいあの子を」
そこには余りの迫力に敵も逃げ腰になってしまうほど静かな怒りの漏れ出るシヴァの姿があり、圧倒的なその力にもう敵は戦意を失っているようにも見えた。
「シヴァ……」
「ね?アナタがすっとそうだったように、あの子もアナタの事になると必死なのよ。守られてあげるのもイイ女なのよ」
「……わかったわ」
あっという間に制圧してしまうと、相変わらず飄々とした様子のアイズがグレーシスの隣で血を拭くシヴァを横目に領主を捕まえて覗き込む。
その姿はまるで輩だが、その容姿でそれすらも様になるのがアイズなのだ。
「僕たちが誰だか分かってるよね?」
「は、はい……申し訳ありませんッ!余りの妃殿下の美しさに魔が差して……」
「じゃあここの囚われた人達も魔が差したの?」
「そ……っそうなんです!!!つい!!!!」
「じゃあ、僕も……ついやっちゃったよシヴァ」
跪く領主の太ももを刺したアイズ、
何ともなげなシヴァは「そうか」とそれだけを言って駆けつけたテヌの者達にグレーシスと一緒に後処理の指示を出している。
アイズは領主の耳に唇を寄せて、思わず男でもどきりとしてしまうほど綺麗な微笑みで囁く。
「あのね、僕達はグレーシスに降りかかる火の粉は払わない」
「へ……えっ?」
「もっと強い火で、苦しめながら焼いてやることにしてるんだ」
「ひいっ!!」
「アイズ、貴方もこれで綺麗にして」
「グレーシス、あぁ……ありがとう」
恐怖で震えが止まらないのと、脚が痛むのとで寒気すらする領主はそのまま捕らえられ、子供達や女性達は保護することに成功した。
「後は、事情聴取ね……」
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※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
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