45 / 71
夫人の過信とミハイルの慢心
しおりを挟む「ミハイル様…お可哀想に、きっと大丈夫ですわ。」
「ミハイル様!元気出して下さいませ。」
僕の周りには沢山の人が戻ってきた。
母上の言う通り、上手くやるのは簡単なことでは無いが近頃はグレーシスの表情も柔らかくなったので効果があったのだと安心した。
懸念といえば、近頃メルに構ってやれない事が多くなった。
気分を損ねているのか、休憩時間にはどこかに行ってしまう。
「メル…今日の昼食は…」
「ミハイル様…、今日は予定があるの。」
心配になって後をつけてみると、予想外の光景に驚愕した。
メルが引き止めたのは殿下とアイズ卿、彼らはグレーシスの所に向かう途中なのかあからさまに鬱陶しげな表情をしている。
「あ、あの…殿下っ。」
「…何だ。」
「また君?ミハイルは近頃何してるの?」
「…っ私を誤解されていますよね、」
「誤解もなにも…」
「メルリア嬢…殿下は傷モノとは一緒になれないよ。」
「なんですって、!?」
「そうだな、例えばグレーシスのような清廉潔白な女性がいいな。」
「…そ、そんな。」
(何を考えているんだ?ワザとグレーシスを危険に晒すような事…、いや…何も考えていないのか?)
グレーシスの名で緩んだ二人の表情を見てミハイルは悩んだ。
だが、これは利用できるのではと考えた。
自ら一人でグレーシスと既成事実を作ろうなど学園内に干渉できる者が居ない限り不可能。
まだ正式な爵位はないにしろ、国内最強と言われるスカンダ家の騎士が番犬のようにグレーシスに張り付いているのだから。
前々から思っていたがメルリアは明らかに王太子やアイズ卿に言い寄っているのだ。
自らとて、何もメルリアを正妻にしようなどとは考えていないがそれでもこんなに愛おしく思ってしまえば裏切られたと感じてしまうのだ。
(だが、今はいい。メルをグレーシスにけしかけて…メルは落ちぶれた所を僕が愛妾として掬い上げてやれば僕のものだ。)
あとはどうやってメルを納得させてグレーシスを抱くか…
(いや、それは何とでもなるな。メルが使う者を買収すればいい。)
メルにもちょうどいい灸を据えられるだろうし、
グレーシスも手に入る。
案の定、メルは怒った様子で帰ってきて何かを考える様子で居た。
(メルだけじゃ駄目だ。グレーシスを一人にするには…そうだ!)
「何か困り事かい?それなら…セント伯爵を頼ればきっとボーデンの為に尽くしてくれるんじゃないかな?」
「…っ!そうだわ!流石、ミハイル様!あの…私、グレーシス様と仲直りしたくって。二人になる為にはどうしたらいいかな?」
「それはいい心がけだね!なら尚更伯爵を頼るといい。番犬には公務に行って貰うように仕向けて、他の二人も…そうだなぁ居るとメルが落ちついて話せないだろうから何か手を考えた方がいい。」
そう、普段から多忙な彼らだ。外部から手を回して学園に来れないようにすればいい。その隙にグレーシスの一人を狙って……
「…ははっ」
「ミハイル様?」
「い、いや…。メルの頼みなら僕だって何でも聞くよ。」
「ミハイル様ぁ、やっぱり私には貴方しかいませんっ!」
(グレーシスを傷モノにしてやる。ミハイル様アンタは知らずにそれに加担し、グレーシスは彼らにも罪悪感を抱えたミハイルにも愛されない。)
あとは…憎いはずのグレーシスを助けたフリをして手柄を立てて…
そうなればフォンテーヌもテヌも私に借りができる。
名誉挽回できれば伯爵の養子となり最低でもアイズ卿、できれば王太子妃となるのよ。
テヌとフォンテーヌを握れば私はグレーシスと同じ条件よ。
その為にはまず………
どの道、事後になっても悪事はバレるだろう。
そうなってもメルやセント伯爵が悪事の主犯。
僕はグレーシスを抱いて、彼女を壊してしまえば…
後は救出したフリをして…婚約者に戻り邸にグレーシスを迎え入れる。
セント伯爵家やボーデン男爵家は罰せられるだろう。
落ちぶれたメルを拾って愛妾とすれば…….
僕はどっちも手に入れられる。
その為にはまず………
((グレーシスを一人にしないと。))
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,038
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる