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誰のものでもでもない…
しおりを挟む驚愕したのは僕だけではなく、シヴァも同じなのだとすぐに分かった。
バーナードと違って彼は顔にこそ出ないものの、僕とは長い付き合いである上に公私共に、殆どの時間を一緒に過ごしているのだ。
だとすると、今ここで飛び上がっても可笑しくはない筈の妙に落ち着いているバーナードの反応はかなり不自然で、彼が元々知っていたのだと考える。
なぜか今は、テヌやローズモンドの悪あがきよりもグレーシスがこんなにも重大な秘密をバーナードとだけ共有していた事に嫉妬していた。
他のことがどうでもいいと思えてしまえる程に、
バーナードに目配せしたユスフリードと呼ばれた人物がもう既にバーナードとの顔合わせまで済んでいるのだと推測した。
シヴァとグレーシスの二人には幼い頃からの歴史がある。
だから負けてしまうのならばきっとシヴァなのだと思っていた。
(侮っていたな…、どうしてバーナードだけが知っていたんだ?まさか、バーナードと婚約するつもりなのか?)
シヴァも同じように悶々としているのか、無表情でありながらも彼から感じる雰囲気はじりじりと周りを威圧し消耗させる。
それに気づいたのか、テヌの当主ユスフリードは礼儀正しくシヴァに近づくと耳を借りて何かを伝えた。
その瞬間、「ふっ」と額を押さえて軽く笑ったのを見てなんとなく察しがついてしまう。
「まさか、偶然…?ふっ、」
グレーシスがバーナードに気を許しているのは皆知っている。
だが何処からどう見ても可愛い兄妹に見えるのだ。
騎士と姫にちゃんと見える時もあるのだが…。
(じゃあ、僕は…どう見えている?)
「アイズ?」
「….母上、どうしましたか?」
「余計な事は考えなくていいわ。ウチはサンスネッグよ、たとえ彼女が平民であっても、女王であっても貴方が愛している人なら関係ないの。」
「ああ、そうだ…。彼女の付属品は重要ではない。」
「…!」
アイズはまさか両親がそのように考えているとは思わなかった。
サンスネッグとしての立ち振る舞いを常に厳しく教わってきたアイズにとって両親のそのような台詞はとても以外だった。
だが、嬉しかった。
「僕がそんな事気にする筈ないでしょう。どうしたら彼女はこっちを見てくれるのかそれしか考えていないよ。テヌも、ミハイルも、僕にとってはどうだっていいんだ。」
(ただ、周りに人が多すぎて…グレーシス、どうしたら僕は君に届くかな?)
「ふふ、取り越し苦労だったわねあなた。」
「そうだね。……。」
アイズの父、サンスネッグ公爵はシヴァに耳打ちしたユスフリードを怪訝そうに見たが等の本人はなぜか急に穏やかな表情であった。
ユスフリードはシヴァに、バーナードとの出会いを簡潔に伝えたようで決して勘ぐるような事態では無いことを伝えたのだ。
(教えてあげる、大サービスよ。まだグレーシスは誰のものでもないわ)
(バレていたのか。)
シヴァは思わず、ふと笑った。
もしかしたら彼女をもう他の誰かに奪られてしまったのでは無いかと気が沈んでいた。
それが、弟のように大切にしているバーナードであっても嫉妬の炎は消えてはくれなかった。
子供じみていると頭では理解していても、心が付いてかないのだ。
そもそも、様々な理由はあれど多くの子息たちがグレーシスを欲しているだけでも気に入らなかった。
まるで競争のように、または景品のようにいい加減な気持ちでグレーシスに近寄らせたくはないのだ。
幸せになってほしい、次こそちゃんと…
(俺が幸せにしたい。)
そして、ソワソワとする貴族達を冷めた様子で見るアイズも同じ気持ちであった。
(僕が君の幸せを守りたい。)
事情を知るバーナードはまた、性格上表情を隠す事こそできて居ないが、内心で誓うのだった。
(こんな私欲だらけの奴らにやってたまるか。)
落ち着かない貴族達、何やら考えている様子のヒリスとミハイルを尻目に三人は、心の中で堅く誓った。
そしてふと、三人は目があって頷く。
"必ず守り抜くんだ"
表に出たテヌの立ち位置が、自らの家門に対してどう影響するのかわからぬ今、皆は下手に身動きが取れずただ黙り込んでいた。
すると、
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