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馬鹿な息子と馬鹿な妻
しおりを挟む婚約の破談はほぼ、拒否権のない状態でまとまった。
まだ婚約破棄ではなく、婚約解消となっただけにミカエルは安堵していた。
大広間へと移動すると伯爵家以上の貴族達が既に出揃っており、想像以上にの出席率に思わずユスフリードは関心した。
(いくらグレーシスといえど、一令嬢にここまで関心を示す訳が無いわ。フォンテーヌの立ち位置を知って後ろ盾を狙っているのか、もしくは既にテヌがフォンテーヌの手中にあると嗅ぎ付けているか。)
「ユスフリード、私も同じ事を考えているよ。」
「あら、レオナルド公爵。奇遇ね、勿論グレーシス欲しさにだろうけど、皆様は余程、付属品が気になるみたいね。」
「…まぁあながち目の付け所は正解だと讃えるよ。」
「そうね。」
(フォンテーヌのものではなく、グレーシスのもの。下手なやり方よりもグレーシスとの縁談を望むやり方こそが近道。けれど…)
「ま、偶然でしょうけど。」
「お父様、ユス、陛下方がいらしたわ。」
壇上には国王、王妃、そしてシヴァが座った。
国王が話し始めると、それに続く王妃。
「今日集まって貰ったのは、伝えておくべき事があるからであるが…まずは皆ゆるりと過ごせたかな?」
「火急故に準備が不十分で申し訳ないけれど、殆どの方が出席して下さったようで、陛下も私も、此処にいるシヴァも感謝しております。」
皆が静まり、緊張した様子で注文する中壇上に呼ばれたのはグレーシスと、ユスフリード、そしてレオナルドであった。
そして…
「先ずは、この場を借りて近頃娘の婚約の件で近辺をお騒がせしている事を詫びたいと思います。」
レオナルドの言葉に、ミカエルは深く深呼吸して、瞳を閉じて今から発表されるであろう内容をただ待った。
当事者であるミハイルは汗を垂れ流し、俯いたまま地面へ視線を左右させた。
その母ヒリスは落ち着きなくそわそわと髪を正したり、扇を開いては周りを忙しなく観察している様子だった。
「この件におきましては、家門同士並びに当人同士も納得の上署名し…正式な婚約の解消とし、また…新たな婚約においての様々な憶測が飛び交っておりますが、本人の意志を尊重しまだ新たな縁談を設ける事は致しません。」
「これにて、フォンテーヌ家とローズモンド家の問題においては解決と致す。そしてここからが本題なのだが…」
「ま、待ってください!!陛下ッ!!!」
声を上げたのはヒリスであった。
「ミハイルとグレーシスは長い間婚約者でした。その…グレーシスはローズモンドの子を宿している可能性もあります。そう簡単に破談し、おいそれと他所にやる事などできません!」
「ヒリス…!やめなさい!」
「でも、あなた…!このままじゃ、せっかく…テヌの情報を…、」
「…!!はぁ、君はなんでいつもそう、」
ヒリスのテヌと言う言葉に敏感に反応する貴族達、
怒りに震えながらも呆れて脱力するミカエルをよそに、今だと言わんばかりにミハイルが割り込む。
「そうです!グレーシスはずっと僕の婚約者でした…可能性がないとはいえないでしょう!」
「陛下….これはフォンテーヌへの侮辱とも取れます。どうやらローズモンド夫人とミハイル殿はウチの娘が婚前交渉をしたと公衆の面前で根も歯もない話で貶めようとしているようですね….」
「そ、そんな!違うわ、ただ私は…、!」
「そうです陛下!」
「失礼ですが…ミハイル様とは手を繋ぐ以上の進展はありません。子を宿す可能性があるのだとしたら別の女性ではないかと。」
「….っぷ!」
思わずユスフリードが笑うとヒリスがすぐさま指摘する。
「一体さっきからアナタ!どちら様!?今日は伯爵家以上の集まり…見たこともないし貴族にも見えないわ!」
「ふ、いいのかしら?」
ユスフリードが国王の方を見ると彼はそっと頷く。
「話の順序が変わったが仕方あるまい。」
「私は、ご指摘の通り貴族でも無ければ、何の地位もない。けれども貴方がたがお探しのモノを持つ唯一の人間ですわ。」
何を言っているんだと言うような表情で、皆が首を捻っている中、ローズモンド、サンスネッグ、スカンダ、そして一部の者達はピンと来たようで驚愕した表情をした。
「私の名は、ユスフリード・テヌ。テヌの当主よ。以後お見知りおきを…。」
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