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恋の行方と、彼女の王子様
しおりを挟む公にグレーシスとミハイルの破綻が確定した今、貴族達は自らの子息を呼び出し、あるいは自主的に、フォンテーヌ家の令嬢であるグレーシスの婚約者になろうと意気込んでいた。
その容姿に憧れる者、嫌味無く完璧な令嬢としての所作を振舞う所に惚れる者、王家と政治的ではなく個人的な信頼関係を持つフォンテーヌ家の後ろ盾が欲しいものなど、
理由は様々であったがひとつ共通する事といえば、その全員がグレーシスの人柄を知れば知る程に彼女を人として心底好きになってしまっているという所であった。
令嬢に至っても同じで、未婚の令嬢で伯爵家を超える高位貴族はバーナードの妹である、ユリエル・スカンダと近年産まれたばかりのシヴァの幼い妹と、グレーシスのみである為に、
身分は上だが、社交会デビューする前から完璧にグレーシスに懐いてしまっているユリエルを見ても、
どう見ても女嫌いのシヴァが、グレーシスに夢中なのを考えても、
次世代の社交会の華となるグレーシスに取り入ろうと必死になった。
メルリアの本性が露見する前までは婚約者に乗り換えられた憐れみと、嘲笑の視線、完璧に見えるグレーシスは実は問題があるのでは?
と侮っていた令嬢も居たが、静観し、耐え忍んだ後の大々的な向こう側の焦りと欲による自爆のおかげで、
行動を起こさずして、耐え忍んだグレーシスの圧勝となった。
ミハイルに至ってはグレーシスをどうこうしてやろうという魂胆こそ無かったものの、どちらにもいい顔をしているのがバレてしまう結果となった。
けれどもメルリアの生家、ボーデン系も富める貴族でありメルリア自体もまた元々は、身分の低さを容姿と成績でカバーしながら貴族達の花嫁の有力候補として常にその名が入る令嬢であった為、
彼女を支持する者もまだ少なくは無かった。
それどころか、今現在王太子妃の最有力候補となったグレーシスはその為にメルリアを利用してミハイルを捨て、
本当は話題性も、人気もあったメルリアが最有力候補であったにも関わらずグレーシスが無理矢理にその座に座り込んだとゆうデマまで流した。
王国の殆どの者が、グレーシスを射止め国内で公爵家に匹敵するフォンテーヌ侯爵家と、王家の恩恵を受けるのはどの家門の令息かと賭け事や祭り事のように盛り上がる中で、
ボーデン男爵が多くを融資し、支持するセント伯爵家と決して少なくはない貴族派の家門は中立派を巻き込みメルリアを担ぎ上げようとした。
そして、ミハイルの母ローズモンド夫人はグレーシスを家門に取り戻そうと躍起になっていた。
現在、社交会を率いるのは王妃であるがその直下に三つの公爵家が全て王宮派である上に三人ともの夫人が王妃の元で共に社交会を支えていた。
そして、その美貌と優しげな雰囲気、夫同士が親友という事もあり王妃と親密な関係であるグレーシスの母、フォンテーヌ夫人は王妃の直令のみで多くの仕事をこなすことと、その聡明さから王妃の影とも呼ばれていた。
公爵家であり、王宮の薔薇の騎士団を率いるスカンダ家の夫人は夫人自体も隣国の元第五王女でありながら騎士団を持ち、自ら率いる程の手腕である為に、友人として王妃の護衛を兼ねて殆どの会に同席していた。
そして、王国の影を担うサンスネッグ家の夫人、スノウは身分は遥か遠い北国の小国の姫であったが国は滅び亡命してきた所を今の国王に保護された。
前国の王族であるペンダントと、その身一つで亡命してきた程なので余程の度胸だといえるだろう。
その時に見張り兼護衛としてスノウの面倒を見たのがサンスネッグ公爵であった。あっという間に恋に落ちた二人であったが、驚いたのはそのスノウの頭脳であった。
か弱い身一つで追手を撒いて生き延びたのは偶然ではなく、類稀なる頭脳と外見にそぐわぬ程の度胸が彼女にはあった。
そして元々高貴な生まれである所作はすぐにこの国の貴族にも馴染んだ。
影を担うサンスネッグ夫人としてぴったりの人材育成であり、聡明な王妃とも話の合う友人となったのだ。
ローズモンド夫人は、持ち前の美貌と愛らしさ、策略に長ける面を除けば特に突出したものは無かったがこの国の服飾業を営む裕福な伯爵家の出であった。
それに、ローズモンド家の隠れた凄みは彼女ではなく彼であった。
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