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いざ、戦場へ参りましょう。
しおりを挟む国王が「すぐに分かる」と言った意味が分かるのは、案外早かった。
アカデミー生である子女達が入場し始めると、パートナーを伴わずに現れたアイズと自らの妹をエスコートして入場したバーナードは多くの令嬢達の視線を集めていた。
「やあ、バーナード。どうやら、殿下は抜け駆けしたみたいだね。」
「やあ、アイズさん!どう言う意味ですか?…………あっ!!」
王太子の入場を伝える声に皆が視線を入り口にやる、バーナードもアイズの言葉を聞き返しながらもシヴァが来た方向を見ると….
美しく着飾ったグレーシスと、まるで対になっているような装いのシヴァが同伴しており、悔しいかなお似合いだと思ってしまった。
アイズも同じ気持ちのようで、それでも大人しく引き下がってやるつもりはないのか人目も気にせずにツカツカと歩み寄って行く。
「あっ、アイズさん!俺もっ!!」
「勝手にどうぞ。なんで…悔しいのに、あんなに美しいんだよ。」
「あーくそ、俺もそう思っていました。殿下ずるい!」
何々?何の騒ぎだ?と端の方にいる人達までもが注目するので、彼らの両親達も「来たね。」と珍しく年相応にじゃれあう彼らを優しく見守った。
「まあ!バーナードったら挨拶の前に騒いで…。」
「あはは!あいつもまだまだ子供だなぁ~」
「あら、可愛いわあなた。アイズったら珍しい表情をしています。」
「ほんとだね、それ程に大切なようだ。」
「やはり…プレゼントは的外れにならなくて安心しました。」
「ほう、レオにはお見通しだと?」
「ふふ、あなたったらグレーシスの事になると本当に敏感ね。」
「ど、どう言うことですか…これは…」
「あ、あなた!大丈夫ですよ何かの悪戯でしょう。」
(ミハイルお願いよ。あの子とだけは入場しないで。)
そう願う母の気持ちなど知らず、その後ミハイルは堂々と胸元のキスマークを自慢げに露出したメルリアと弛んだ表情で入場するのだが、
今はまだ、シヴァとグレーシス、アイズとバーナードの四人のやりとりに皆が注目していた。
「殿下、あんまりです。こんなに美しくされちゃ文句も言えない、」
「同感だよ、けれど殿下とお揃い?」
「これは、お父様が準備して下さったのだけれど…たまたま似ていたの。」
(…そう言う事にしておくか。)
「ああ、偶然だったんだが嬉しいハプニングだったよ。」
(グレーシス嬢の瞳の色の耳飾りまで着けておいて…計ったな)
(アイズ、悪いな。)
ふたりは視線を合わせて何やら、目線で会話しているようにも見えたが日常茶飯事なのかバーナードは呆れたように流し見て、頬を染めながらグレーシスの正面に立ってはにかんだ。
「グレーシス、今日は一段と…その、」
「美しいよ。貴女の輝きには負けるけれど、これを…。」
照れるバーナードの先を越して、目尻を下げ心底愛していると言う笑顔でグレーシスの細い手首にシンプルなブレスレットを付けたアイズ。
「あ、アイズ様…っこんな高価なもの…」
「いいんだ。僕の大切な人に贈ると決めて作ったんだ。」
「…っ」
「ぜひ、気軽に貰ってくれないかい?」
「ありがとうございますっ。」
「そうそう、美しい…って、アイズさん…っ!」
バーナードはグレーシスに会ったら渡そうと、この日の為に大金を叩いて探し出し買い取った、永遠に枯れない真紅のバラの花束をそっと背中に隠した。
シヴァやアイズのプレゼントに比べて自らのプレゼントが地味に感じ、恥ずかしくなったのだった。
「…?バーナード、美しい薔薇ね。その色と輝き、とても珍しいものよね。」
「え…!」
「それは大切な人へのプレゼントかしら?」
「…っ、ああ。……グレーシスにだよ。」
「バーナード、それはとても珍しいのよ…?」
「永遠に枯れない美しさが、グレーシスと同じだと思った…。」
「…っバーナード、照れてしまうわ。」
「グレーシス、パートナーの俺を忘れないでくれよ。」
「で、殿下っ」
「違う」
「でも、ここは公式の場で…」
「あくまで学園行事だよ。それに、俺が許すと言った。」
「シヴァ…。忘れてなんかいないわ。」
「妬けるなぁ。」
「俺はずっと名前で呼んでるもんね。」
「もう….、顔が熱いわ。アイズ様も、バーナードも、予想外で驚きましたが、とても嬉しいです。本当にありがとうございます…。」
「私にとっても、シヴァもアイズ様も、バーナードもとても大切な人です。」
「私もプレゼントを用意するべきでした。」と眉尻を下げたグレーシスに会場中の者たちが心の中で思わず突っ込んだ。
((( すごい鈍感!!!大切の意味わかってない!! )))
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