婚約者が浮気を公認しろと要求されたら、突然モテ期がやってきました。

abang

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いつか君に騎士の誓いを…

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「バーナード。」



「グレーシス!どうしたんだよ?」




「いいえ、貴方の姿が見えたから来ただけ。」




なんでもないわ。なんて言いながら俺の隣に腰掛けたグレーシスにギョッとする俺。




一つ目は、高貴な令嬢にも関わらず庭の木にもたれて座る俺の隣にさも当たり前かのように座ったからで、




二つ目は、その距離の近さに驚いたのだった。






「貴方こそ、どうしたの?今日はずっと元気がないわ。」





「っえ?なんで…」




「?」




「そんなに俺、顔に出てた?」





「そう言う訳じゃないのだけど…、分かるわ。バーナードの事だもの。」





そう言って微笑むグレーシスが眩しい。



近頃、剣が思ったようにいかずに行き詰まっていて、確かに落ち込んでいた。



だが誰も気づかなかったし俺も悟られないように気をつけていた。

それなのにグレーシスにはあっさりと気付かれてしまう。




驚いたのと同時になぜか少し嬉しい気持ちが込み上げる。




グレーシスが俺を理解してくれているような気分になってしまうし、何となく彼女の体温が感じられる距離感は、俺に気を許しているのだと感じてぎゅっと心が軋む。




すぐに触れられる距離に居るのに、触れてはいけない。


グレーシスはどの女性とも違う。俺にとってグレーシスは最も高貴な女性だが同時に大切な友人でもある。



どちらにせよグレーシスは俺にとってとても大切な人だ。




「バーナードは…とても頑張っているでしょう。」




「…、まだまだだよ。」




「頑張りすぎる程よ。だからきっと少し疲れてしまったのね…。少し休めばまた歩き出せるわ、きっと。」



「グレーシス…、なんでお前はそんな、」




「貴方の友人だもの。私にとってバーナードはとても大切な人よ。」




「お、俺も!俺にとっても…グレーシスは大切な人だ。」




「ふふ、ありがとう。とても嬉しいわ。」



ただ、友人としてだと解っているが俺の心臓は大きく波打つ。


殿下や、アイズさんには到底敵わないのかもしれないが、俺は例えグレーシスがどんな身分でも、誰と将来を共にする事を選んでも俺はきっとずっとグレーシスが大切なんだ。



だから、もう何も考えない事にしたんだ。




「グレーシス、俺が守ってやる。」


「…っ、突然優しくするなんてずるい。驚いたわ、いつも意地悪ばかり言うのに。」


「なっ!特別だよ、今日はちょっと優しくしてやりたい気分だったんだ。」



「なにそれ!ふふふっ!」



「笑うなよ。」



「…バーナード。」



突然グレーシスが笑うのをやめてこっちを見つめる。


俺は、まさか気持ちがバレたのか。とか


もしかしたら、俺を…?とか



思考を行ったり来たりさせて次の言葉を待った。




「ありがとう。いつも貴方が居てくれて本当はとても心強いの。」




グレーシスは少し照れ臭そうにはにかんで、俺に手を差し出す。



「?」


「握手よ、これからも宜しくね?っていう意味なの。」



「ふはっ、それこそなんだよ今更。」



あまりにも可愛くて少し笑ってしまった俺に、照れた様子で視線を逸らしたグレーシスの手を握って握手するとそのまま自分の方へと引っ張り抱擁した。





「ば、バーナードっ!!!」


「軽いハグだよ。感謝と…俺の優しさを注入する為に!!!」


「きゃー!あははっ、バーナードったら!やめてよ、っはは!」




「あ~、なんだよせっかく分けてやってんのにー!」




「馬鹿ねっ!でも元気になって良かったわ、ふふ」




「ほんとだ…。ま、ありがとな。俺…強くなるよ。」




ずっと、グレーシスがどんな未来に居たって俺は…






(いつか、俺の騎士の誓いはグレーシスに捧げるよ。)





「きっとバーナードは素晴らしい騎士になるわ。」



「ばーか。」



「ま、素直じゃないんだから。」



「行くぞ、サボり。」




「貴方を追いかけてきたんじゃない。もう!」



その笑顔を曇らせるヤツは誰であっても俺が斬ってやる。


容赦なく突きつけられた刃は俺が代わりに受けてやる。


だから、ずっとそうやって…




(笑っててくれよ、グレーシス。)
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