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それはこちらの台詞ですが…?
しおりを挟むどうしてこうなったのだろう…。
今目の前には、初めて見るほど怒りに満ちたミハイルが立っていた。
グレーシスの手首を掴む強さは、ギリギリと強くなる一方でその痛みにグレーシスは思わず顔を歪めた。
「ミハイル…、正式には別れていないとはいえ今は私達は別れているのよ?このようにレディに突然触れるなんて…、」
「そんな事は今はどうだっていい。グレーシス、王太子殿下とはどういう関係なんだ?」
「何って、幼馴染だと殿下から伺ったでしょう。」
「でも…僕がありながらあんなに堂々と食堂で他の男性と楽しそうに食事をするだなんて!!」
(それはこっちの台詞なんですけど…。)
「久々に幼馴染と食事をしただけです。それにミハイルとメルリア嬢のように二人きりではありません。」
「だが….っ!」
「それに、もし楽しそうにシヴァお兄様と食事をしてもそれは貴方が言い始めたことでしょう?お忘れになったのですか?」
「僕は…、グレーシスも愛してるんだ。だから約束して欲しい。必ず結婚は僕とするんだと。」
「そんな事を、お父様が許すと?」
「ああ!許すとも!さあ、誓うんだ!」
グレーシスはこの状態をどうして抜けだそうかと考えを巡らせた。
その時…
「っ…あはは!!そこまでにしておきなよ、じゃ無いと令嬢の手首がアザになんぞ。」
頭上から降ってきた声に、驚いて上をみると…赤茶色の短めの髪に同じ色の瞳の子息が木の枝に座っていた。
「貴方は…スカンダ公爵家の…バーナード様。」
「お久しぶりですね、お二人とも。私的な場では初めてだっけ?」
この国の公爵家は三つ。
ミハイルの実家であるローズモンド家
アイズの実家で、代々王家の側に使えるサンスネッグ家
そして、軍神と呼ばれる程に騎士として名高いスカンダ家である。
公爵家が三つ、侯爵家が二つとこの国の高位貴族は多い方ではない。
なので公式の場ではいつも決まった者ばかりが顔を合わせることも多く、お互いの顔はよく知っていた。
「っと、…ミハイル、なんのつもりだ?婚約者の手首をへし折るつもりか?」
急に鋭くなったバーナードの視線にたじろぐミハイルはパッとグレーシスの手首を離した。
「そんなつもりじゃ、…すまないグレーシス。」
「謝っていただかなくても結構です…。」
「ところで…君たち別れたの?」
「「!!」」
「…まぁ他人の事情に踏み入らないよ、」
「そ、そうだ!バーナードには関係ないよ!そうっとしておいてくれ!」
「それは………やっぱ無理かな。」
ザクザクと歩いて来てグレーシスのに「触れても?」と尋ねると驚きながら思わず頷いた彼女の手をふわりと握って歩き出す。
「あ、あの…?」
「こんなに腫れてる。早く医務室へ行かないと。」
「グレーシス、まだ話は…!」
叫ぶように言うミハイルを完全に無視して、バーナードに手を引かれるままに医務室へと逃げ込んだグレーシスは深くため息をついた。
「ふぅ…ありがとうございます。バーナード様、助かりましたわ。」
「すまない、盗み聞きするつもりじゃなかったんだが…サボっていたら下で揉め始めたものだから出るに出られなくなって…、」
顔を青くして、申し訳無さそうにするバーナードにグレーシスはクスリと笑った。
「いえ、こちらこそお見苦しい所を申し訳ありませんでした、ふふっ」
「なんで笑うんだよ…。」
「なんだか少しおかしくって…もうかなり噂になっていますので、聞かれたとしても気にしていませんよ。」
「そうか…、」
「バーナード様はとても表情に出るので、つい申し訳ありません。」
「バーナード、…バーナードでいい。」
「えっ…」
「学園では皆平等だ。同じ学年だろう。」
「では、バーナードもグレーシスと。」
「…あぁ!改めて宜しく頼むよ!」
「ええ。今度助けていただいたお礼をしないとね!」
「食堂のいちばん高いランチでいいぞ。」
「いいわ。お安い御用よ!」
二人は、握手を交わして笑い合った。
バーナードは気さくで付き合い易い人だった。
少し話すと、すぐに仲良くなった二人は憎まれ口を叩ける程だった。
「もっとお堅いんだと思っていたが…グレーシスがこんなにも気さくだったとは…!」
「貴方も、鬼のような男だと聞いていたからもっと怖いのだとばかり….」
「それは俺の剣の腕が、良すぎて恐れられているんだよ。」
「…自分で言うと一気に胡散臭いわね。」
「なんだよ…。」
「「ぷっ」」
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