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時限爆弾でも抱えていらっしゃるの?
しおりを挟む「ひどいです!!!グレーシス様っ!!!!うわぁぁあん!!」
「?」
「どうしたんだ、メル!!!!グレーシス!!何をしたんだ?」
ここは全学年の生徒が昼食を取る食堂。
ミハイルから一年間の期限付きの別れを切り出されてから、
噂の的という肩身の狭い思いを除けば、浮気相手の惚気を聞かされる鬱陶しいお昼のお茶の時間もなくなり、休憩時間にはクラスの者達と話をしたり、平和な日常を過ごしていた。
少しずつ友達も出来て、残りの一年は楽しく過ごせそうだとミハイルに感謝でもするべきかと思っていた矢先であった。
すれ違いざまに、大きな声を上げて突然自分でランチを頭からかぶったメルリア嬢に驚き軽く目を見開いた。
叫び声と共にすっ飛んできたミハイルが彼女を庇うように抱き寄せて私に怒鳴る様子をひと事のように冷静に見つめていた。
(私が流行り風邪や、過労で倒れた時は見舞いにも来なかったのに)
「…何も、しておりませんが?」
「嘘っ!グレーシス様が、ランチを私にかけて……っ!」
「グレーシス…何故だ!!メルに嫌がらせをするなんて君らしくないぞ…!!」
「ミハイル様、洋服が汚れてしまいます…っ!」
「そんな事はどうだっていいさ、メル…辛い想いばかりさせてすまない….。」
「そんな…っぜんぶ私が悪いのです!!」
グレーシスは扇子を開いて、目の前の茶番に密かにため息を吐くと呆れたようにミハイルを見た。
「ですが、その方はご自分で転んでご自分でかぶられましたが…」
「グレーシス…言い訳しなくていい。一言謝罪してくれば僕がこの場を収めるよ…、」
「ご自分でトレーをお持ちになっているのに、どうやって私が彼女のランチを彼女にかけられるのでしょうか?」
「…!!!メル….、」
「…っそれは!グレーシス様が足をかけたせいで、思わず被ってしまったのです!!」
「足をかけたことはありません。」
「グレーシス…やはり嫉妬していたのか…!」
「いいえ……「そこまで。」
グレーシスの言葉を遮ったのは思わぬ人物であった。
「…殿下。」
「やあ、グレーシス久しいね。」
筆頭侯爵家の令嬢であるグレーシスは生まれた頃から、婚約者候補としても名が上がっていた上に、王宮へと度々足を運ぶ父に連れられてよく彼とは会う機会があった。
そして、彼にとっての一つ歳下のグレーシスは父同士が旧友だという事もありいちばん身近な歳の近い友人であった。
窮屈でプレッシャーの多い日常の中でお兄様と自分を呼び、ふわりと彼に微笑むグレーシスは快活で、かつ包み込むような優しい雰囲気が癒しの初恋の女の子でもあった。
(笑わなくなったのは、コレのせいか?)
彼にとって唯一幼馴染とも言えるグレーシスを、熱望してなったはずの婚約者が他の令嬢と一緒に陥れている場面をみて驚いて思わず声をかけたのだ。
(てっきり、次期公爵夫人の未来を円満に歩んでいるとばかり…)
「お、王太子殿下!これは…我が婚約者の小さなミスで…些細な揉め事ですのでっ、!」
しどろ、もどろ、どいう感じで説明するミハイルの腕の中でうるうると瞳を揺らして王太子をまるで、私可哀想でしょ?と言わんばかりの表情で見上げるメルリアに王太子は顔をサアっと青くした。
グレーシスは、状況に困惑していた。
まるでグレースを庇うように立つ王太子である彼はひと足先に学園へ入学してからは会って居なかったが、更に美しく磨かれた容姿は変わらず皆の注目の的であり、昔と変わらぬ優しい声でグレースと呼んだ。
女性が苦手だと噂の王太子が自らそのような行動を起こしたというだけで皆の憶測を呼ぶには充分であった。
(いけないわ…これではシヴァお兄様が皆に誤解されてしまうわ。)
「殿下、お騒がせして申し訳ありません。私なら大丈夫ですので…」
「そうかな?俺にはそうは見えなかったけど。最初から見てたんだ。」
シヴァがそう言うと、メルリアが顔を引き攣らせたのがわかった。
ミハイルは訳が分からず首を傾げた。
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