暴君に相応しい三番目の妃

abang

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揺るぎない城を築きたい

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「そう、明日がたのしみね」


ドルチェ様は窓の外を見ながら、何処かわくわくしたように言ったのでリビイルは思わず尋ねてしまった。


「楽しそうに見えます、今が楽しいですか?」

「そうね。今までじゃ考えられなかったもの」

「ドルチェ様が、楽しいなら俺も楽しいです」

「あの頃は貴方しか味方が居なかったものね……リビィ」


ドルチェ様が昔からの癖で頭を撫でようと手を伸ばしたのに合わせて身を屈める。

昔は彼女の方が少し背が高かったのだが、歳は追い抜かせ無くても背はすっかりと追い抜かしてしまった。


「今もずっと味方です」

「ん、今度こそちゃんと守るわ」


ドルチェ様はまるで少女が夢を語るような表情で教えてくれた。

皇妃宮は一見普通の妃の住む城にしか見えないが、そこらの小国よりも守りの硬い城にするのだと。



「私たちは、ただの主従関係では無く仲間よ」

「仲間……?」

「そう、それも家族同然のね。それくらい信頼のおける者だけを此処に置くわ他は要らない」


排他的だと思った。けれどドルチェ様の生い立ち上仕方が無いのかもしれない。塞ぎ込んでいた頃よりはマシだとさえも思った。


こんなものはまだ女性と言うにも若い彼女の夢としては些かミスマッチだろう。大抵この年頃の女性は「好きな人と結婚したい」「美しい顔と身体が欲しい」「社交会で注目を浴びたい」程度の小さな夢を語るだろうが、彼女の夢はまるで戦国の世に身を置いた青年のようだ。


もしくは何処かの君主が「この街を硬く守って砦にする!」なんて言う時のあれかもしれない。


どちらにせよ若い女性の夢とはかけ離れたものに、ドルチェ様はまだ戦っているのだと理解して少し胸が苦しくなった。


「なら俺は、ドルチェ様を守ります」

「ふ、私より強くなってから言って頂戴」


そう言って視線を窓に戻したものの、「期待してるわよ」とこちらに何でもないように投げかけてくるものだから少し驚いてしまったが嬉しかった。


「そう言えば明日は神殿から何か来るらしいわね」

「祝福を授かった子供達のお披露目、らしいです」

「へぇ……教皇も来るの?」

「いえ、陛下はどうせすぐに追い返すだろうからとレントン様が言っておられました」

「わかったわ」


その時は興味など無さそうだったのに……


翌日、神殿について調査して来たララがとある双子が司祭達による虐待を受けていると知り彼女は白いドレスを纏った神々しい姿で城の教会の扉を



「なッ!何だ!?」


「黙れ大司祭、どうしたドルチェ」


「あら、ごめんなさい。ヒンメル……」


祝福を受けた愛し子たちをぐるりと見渡すと明らかに雰囲気の違う双子を見つけてにっこりと笑う。


(居たわ、この子達ね)

別に放っておく事も出来た筈なのに、何故ドルチェ様がこのように怒りを見せるのか俺は知ってる気がした。


認められようと、役に立とうと身を削る子供、それを利用する大人が何より嫌いだからだ。


けれど異様なのは大人だけじゃない。

他の愛し子達もが、その二人を蔑んでいる。

大人とは違ってまだ隠すのが下手な子供特有のストレートな蔑みの視線。嫌悪、そして悪意……


「良い、どうせもう帰す所だった」

「ねぇ、ヒンメル。欲しいものがあるのだけど」

「まさか、そこに並んでる餓鬼じゃないだろうな」

「まさにそうよ、駄目かしら?」



そう言ってて渡す資料はララが集めた、双子への神殿での虐待や虐めのもので無表情で書類を見るヒンメルは少し考えてからドルチェ様に「お前の役に立つのか?」と尋ねた。


「勿論よ、貴方の役にも立つわきっと」

そう言って王座の肘置きに軽く腰掛けたドルチェはヒンメルの頬に口付けて笑った。


「ーっ、好きにしろ」

「じゃ、遠慮なく」


そう言ってからほんの一瞬、素早い動きで彼女は


大司祭の腹を派手に掻っ切ったーーーー








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