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悪女なんて噂はアテにならない
しおりを挟む招待状に、贈り物、知らない人からの祝福の山をソファの肘置きに肩肘を預けたままぼんやり見つめる。
ララは嬉しそうに贈り物の点検と、整理をしている。
「ドルチェ様!皆ドルチェ様に会いたがっていますよ!」
「妃の立ち位置と共に変わる貴族達の立ち位置の場所取りよ」
「そ・れ・で・も!ドルチェ様が帝国一高貴な女性だと言う事には変わりありません」
「ふふ、ララは大袈裟ね」
(まぁ不本意だけど、形だけでも一番って嬉しいわね)
「嬉しいんです、私の恩人で主君ですから」
すっかり打ち解けたララに嬉しいなと思いながらも、何となくリビイルに視線を送ると彼もまた贈り物の検査中で、こちらの視線を感じたのか振り返った。
「?」
「リビィはもう慣れた?」
「はい……」
「貴方の物も揃えなくちゃね、今日は外出するわよ」
「「!」」
あからさまに嬉しそうな二人を見てこちらまで嬉しくなる。
「一緒に来て頂戴」
「「はい!」」
「ふふ、じゃあ支度をお願いするわ」
驚く早さで段取り良く支度されるのを見ながら、一人のメイドの行動に思わず声をかける。
「今、お茶には何を淹れたの?」
「ぁ……、いえ、何もっ」
「じゃあそれ、あげるわ」
「えっ」
「飲んで」
怯えるメイドににっこりと笑いかけるとガタガタと震えながら謝罪し始めるそのメイドの頭をそっと撫でるとホッとしたような表情をしたその子に「いらないの?」と尋ねた。
「い、いえ……これは、私も脅されてっ」
「ほんとに?給金を上げると言われなかった」
「え……っ、いえ、その……」
「どうぞ?」
震えて泣きながら飲んだそのメイドには特に変化も無い。
(即効性が無いのかしら)
「エミ、その子を医務室に運んであげて」
「は、はい!」
「?」
やけに此方を見つめるメイドのエミに不思議に思って何か他に用があるのかと聞くと、彼女は涙ぐみながら
「私の名前をご存知だったんですね!」とやけに喜んだ。
そう多くない自分のメイドの名前くらいは覚えているだろうと、彼女の言葉の意味が理解出来なくてララを見ると、やけに誇らしげで更に理解に苦しんでリビイルを見ると、
彼は優しく微笑んで「ドルチェ様は分からなくてもいいです」と何故か嬉しそうに言った後、テキパキとメイド達に指示を出した。
「エミ」
「は、はい!」
「貴方、弟が病気だったわね」
「へ……何故それを」
「前にマヤン達話してたでしょ」
今度はマヤンが声を上げて、顔を赤くして此方を見つめて来て居心地が悪い。
(何なの、一体)
「その子の事きちんと調べて、経過を報告して頂戴」
「は、はい!」
「弟の事は今度ちゃんと聞かせて」
「はい……っ!」
泣きながら去ったエミに「変わった子ね」とララに囁くとクスクスと笑ったララは「ドルチェ様が素敵だからですよ」と仕上げの香水をふりかけながら笑った。
その後、突然まるで騎士のように忠誠を誓う数名のメイド達にまた首を傾げることになるのだが、そんな事が想像できるはずもなく、ただ外出の目的の整理を脳内で済ませた。
(コックと、デザイナー、医師、が居れば尚良いのだけど)
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