婚約破棄された地味令嬢(実は美人)に恋した公爵様

abang

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70.まだまだ大人にはなれないようだ

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「エリス、大丈夫か」

「ええ、お兄様こそ私の所に居ていいの?」


兄弟仲睦まじい二人の様子は微笑ましいが、皆其方へ向かうジョルジオの綺麗な笑顔が怖くて顔が引き攣る。



ケールもまた同じで何と無くエリスを背中に隠した。


「失礼だなケール」

「何故か害な雰囲気を察知しました」

「……ほんと失礼」

「ふふ、お兄様少しジョルジュと話して来てもいいですか?」

「ああ……その方がよさそうだな」


けれど、エリスからみたジョルジオはまた違った。



「ジョルジュ、拗ねてますか?」


休憩室に入ると、ジョルジオをソファに座らせてお茶を淹れたエリスは隣に座って尋ねた。

「拗ねてないよ」

「そうですか」

「妬いてるけど」

「そうですか」

そう言ったエリスの笑顔が嬉しそうでジョルジオは思わずジッと見つめる。


「実は嬉しいです」

「へ……」

「嫉妬、してくれたんですよね?だから、嬉しい」


不謹慎にもジョルジオが嫉妬してくれたのを可愛いと思っていたのだ。


ヴィルヘルム公爵の婚約者という肩書を除けば、幾ら名家とはいえただの伯爵家の令嬢。

けれどまるでジョルジオを無視するようなエストに黙っていられなかった。


それに、アプローチを受ける機会が時々できたがまだ慣れなかった。

不安だったし、セイランから任される仕事以外であのような振る舞いをするのは変な感じがしたが、今日は演じているというよりも、エリス・クロフォード伯爵令嬢として、婚約者への無礼を許さないという毅然な態度でいられたと思う。


(と、言うよりは感情的になった幼い少女かしら)


ジョルジオもまた、彼からみて余裕のあるように見えるエリスを見て近頃こ自分は大人気無かっただろうかと考えるが、エストは兎も角今まで馬鹿にしていた癖に容姿を見て掌を返した無礼者共にはこのくらい徹底したガードが必要だろうと自己完結した。


(と、いうよりは手当たり次第威嚇する野生動物かな)



「「……」」


お互いがそれぞれ自己嫌悪に浸っていたが、何となくふと意識を引き戻し目が合って誤魔化すように笑う。



「反省、ですね」

「そうだね、ははっ」

「でも……気持ちはほんとうです」

「ん……」

彼の瞳のように、真っ赤になったジョルジオをやはり可愛いと思った。


それよりも今はもっと、伝えたいことが沢山ある。


「強い人しか駄目なのは嘘です」

「ん、知ってるよ」

「ジョルジュじゃないと駄目ってことです」

「ーー~~っ、可愛いことばっかり言わないで」


目線を床に落としたジョルジオの手に触れる。

エリスは自分の心臓ややけに大きな音で打つのを感じながら、落ち着かせるようにゆっくりと息を吐きながらジョルジオの手から頬に手を添え直した。

「ー、エリス」

「ジョルジュ……貴方だけが好きです」


(我慢、我慢、エリスが色っぽいけど、我慢……)


「俺も、君だけが好き……」


ゆっくりと近づくエリスの美しい顔に今度はジョルジオの心臓がうるさい。


もうどちらのものがこれ程大きな音を鳴らせているのか分からないほど二人はどきどきしている。


ジョルジオが答えるようにエリスの髪を撫でて、期待の籠った熱い瞳でエリスに微笑みかける。


(ジョルジュったら、何故こんなに美しいのかしら)

そのまま距離が無くなって柔らかい感触と大好きな香りがする。


(もう、どっちの胸の音でもいいわ……)

(気付かれたっていいからもっと近くに……)



「……?」

思ったよりも短くて、可愛い音が鳴る。

「ちゅっ」と愛らしく音を立てたあと慌ててジョルジオに背を向けたエリスの耳どころか首までもが真っ赤でこれが彼女からの今の限界だと分かる。


「可愛い……!」

「ジョルジュ、やめて下さい」

「ね、もっかい」

「もうできません……」

「じゃあ俺からしていい?」

「……ん」

振り返ってこくりと首を動かせたエリスの顔は赤く、潤んだ琥珀の瞳が綺麗だと思った。


そしてジョルジオは持ち得るだけの全ての理性を味方にして、エリスを抱きしめて次は彼から唇を寄せた。



今度は深く、深く、口付けた。




(好き、エリス)


(ジョルジュ、好き)



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