婚約破棄された地味令嬢(実は美人)に恋した公爵様

abang

文字の大きさ
上 下
66 / 77

66.久しぶりに会っても碌なことない

しおりを挟む

パスカル国は王太子の独断で行った事だとビリエンをあっさりと切り捨てたがエリス達のセントルージュ国を含む休戦地区の近隣国の殆どがそれに納得をしなかった。

その為に近隣国会議が開かれることとなった。

国の広さと、今回の事件の当事者だという事でセントルージュが開催場所に選ばれたのでエリス達も皆大忙しなのだ。


次々と到着する来賓への対応に追われているセイランの秘書としてエリスもまた対応に追われている。


その中でも南部エスターラの王、エスト・イヌ・エスターラはかなりの曲者である。若くして黄金の国であり南部最大の国の王である彼はとても大きなハレムを作り世界各国から美しい女性を集めている。


その中でも妻は十人も居り、外見も褐色の肌と艶やかな黒髪が似合う艶やかな美青年だ。


そして近頃やけにエリスに構うのだ。


ジョルジオは落ち着きなく執務机の上を指を叩く。


警備の件で訪ねているケールの眉間にもまた皺が目立っていた。



「ケール、エリスは?」

「今は王太子妃宮で執務中かと」

「エスターラ王の様子は」

「エリスを連れて帰りたいとしきりに言っているそうですが、来賓室で連れて来た女性達と戯れているそうです」

「……南部の軍事はどう?勝てそうかな?」

「気持ちは分かりますが、戦争になります団長」


エスターラを含む先に到着した国々の他にも各国が揃い、明日開かれる歓迎会には皆参加するだろう。


エリスもまたジョルジオのパートナーとして参加する予定だ。

あまりにもエリスが注目を浴びるのでジョルジオとしては気が気じゃない。
それでもドレスを見ればエリスに相応しいものを贈りたくてつい張り切ってしまうし、合わせた自分の装いも楽しみで仕方がない。


やはり美しく着飾って少し恥ずかしそうにしながらも、楽しそうにメイクや髪型の相談をメイド達としているエリスは可愛くてつい準備を終えていないのに覗きに行っては怒られてしまうのだ。


(楽しみだなぁ、ずっと忙しかったしね)


「そういえば、我が国と交流のあるセフラン国の公爵家からもハレムに入宮しているそうですね」

「へぇ……手広いな」


そう噂をしていれば、扉の前で慌てた声を出す使用人。


「か、閣下!此方へ向かうエリス様が道中トラブルに!」


「「!!」」

すぐにケールと執務室を飛び出し歩きながら事情を聞くと、エスターラのハレムの女達に取り囲まれ連れ出されたと言う。

女性同士の話ならエリスなら問題なく解決するかもしれないが相手は多勢、念の為使用人に案内されて向かうと、人気のない壁際に追い込まれて女達に睨みつけられるエリスが落ち着いた様子で腕を組んでいた。


(ちょっと様子を見るか)

頷いたケールを見て使用人を引き止めて成り行きを見守る。


「お久しぶりね、エリスさん」

「お久しぶりです。セフラン公爵令嬢」

「何その格好、顔を変えたの?あの地味なエリスが?」


どこから持って来たのか、丸い眼鏡を見せて皆で嘲笑う女達。


「エリスったらこんな眼鏡で髪を地味纏めて、冴えない子だったのよ?」

「まぁ!それがエスト様に気に入られようと背伸びを?」

「顔まで変えたの?」


クスクスと嘲笑いながらエリスを貶す女達に、エリスはどうでも良さそうに視線を空間に向けていたが、とうとう「顔は生まれつきですが」と切り出した。


「はぁ!?何?それって急に自慢してるの?」

「顔だけでしょ?冴えない子だって聞いてるわ」

「エスト様にもお知らせしなくちゃ!騙されてるってね!」



ため息をついたエリスな「この格好は私の婚約者に良く見せたいからです。エスターラ陛下は関係ありません」と少し強調するように伝え睨みつけた。


美人の怒った顔が怖いとはその通りであまりの迫力に言葉を失った女達がエリスの髪に手を伸ばした所でジョルジオとケールが滑り込んだ。


「俺の未来の妻に」

「妹に、」


「「何か御用ですか?ご夫人方」」





「……ジョルジオ閣下、えっ、貴方、トリスタンと」

「終わった話です。ジョルジオ閣下と婚約しています」


「……っ、トリスタンでも勿体無いと思っていたけれどジョルジオ様まで……それにエスト様だってこの子に夢中だし……」


ぶつぶつと何か言い始めたエミリア・セフランとジョルジオ達に見惚れる他の女達の間からエスコートするようにエリスを助け出した二人は振り返って鋭く睨みつけた。


「客人といえど、手出しは容赦し兼ねます」

「貴国の事はそちらで対象して下さい」


「二人とも、どうして……」

チラリと使用人が顔を出したのを見て納得するとエリスは呆れたように、けれど少し悪戯に二人を見て笑った。


「女と言うものは、好きな人を独り占めしたいものですものね」


「……エリス、兄がハレムからお前を守ろう」

「ケール、可愛すぎる。キスしていいかな」

「ダメです」


「ふふ、なのであの方達の気持ちも理解できますし……水に流しましょうか」

「エリス、でも……」

「良いんですジョルジュ。二人が来てくれて無事ですので」


女達の不審な行動に気付いて好奇心で探していたところ、補佐官と侍従を連れ途中から様子を目撃していたエスターラ王によってエリスがまた気に入られてしまったことにはまだ誰も気付いていない。


「ふーん、エリスって心まで美しいんだ」

「陛下、彼女はヴィルヘルム公爵の婚約者です」

「まだ妻じゃないし、そんなの何回だって奪って来ただろ」

「今までと相手が違います」

「ま、まずは口説いてみようか」

「陛下……」


しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!

桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。 令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。 婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。 なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。 はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの? たたき潰してさしあげますわ! そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます! ※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;) ご注意ください。m(_ _)m

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))  書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

処理中です...