婚約破棄された地味令嬢(実は美人)に恋した公爵様

abang

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50.なぜ王太子妃でいられたのかって?

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「お土産よ、外の様子が気になると思って」

衛兵越しに手渡された新聞の記事に大々的に書かれているのはヴィルヘルム公爵とクロフォード伯爵令嬢の婚約パーティーについてだ。

性格上本人とは考え難いがどこからリークされたのか前婚約者トリスタンによるエリスへの不当な扱いやモラルに反する装いの強制が書かれており、貴族同士の不倫や浮気についての風刺画まで描かれている始末。



「なッ!!わざわざ来たかと思えばこんな事をしに来たのッ?」


「ええ、エリスには秘密よ?彼女だって私に内緒で私を敵から守ってくれてたもの。部下だけど姉のように慕ってるの」


「あはは!真似事?温室育ちの可愛いだけの殿下がですかぁ?」


「私が王太子妃になれたのは可愛いだけじゃないからよ。あとは優秀な部下エリスが居たからね」


「はぁ!?で、何が言いたいのですか?」


「関連事件の協力者を全員言って頂戴。一番早く言った者と取引するわ」


(取引!?)


「これ以上の混乱を無くす為、あとはあの二人の幸せの為に」


「はっ!!ほんと鼻につくわエリス様ったら……で、このヒステリックな叫び声はあの女かしら」



「ロベリアには別の方法で聞いてるの。どうしても話さないって言うから」


「ーっ!じゃあ他に誰が……!」

「そう、トリスタンよ彼がもし自由になったら自分の名誉を傷付けた貴女を生かしておくかしら」


「わ、私の知る範囲でなら……!」



ミナーシュはエリスに関する事件の際にミナーシュやロベリアに手を貸した者、ゴルジエの不正に目を瞑った者を知る限り話した。


そろそろ全て話し終えたのではないかと思った頃に足音がひとつ。


セイランのものより重い音で男性だと分かる。



「セイラン、良くやったな。こんな所辛いだろう」

「レイヴン!私から来たのよ。ね?全員話したでしょ?」

「ああ、話が一致した。王室の乱れは断たないとならんからな」


「とっ!取引はっ!?」


「そうそう、減刑なんてどうかしらレイヴン」

「セイランは慈悲深いな」


ミナーシュは瞳を輝かせて檻にしがみついた。


「減刑!?やったわ……!!お願いします!」


「百年も減刑すれば満足かしら?」


(百年も減刑されれば流石に出られるわ!)



レイヴンは少し考えたあと、この者の懲役はいくらだったかと従者に質問した。この国では罪の重さに比例した刑期が与えられる。

そして模範囚であればその刑期を知ることができる。なのでミナーシュは自分の罪にどれほどの刑期がかけられたのが初めて知ることになる。

せいぜい人の命はおおく見積もって百年だ。

それを超える罪だったとして百年も減刑して貰えればすぐに出られるだろう。そう考えたミナーシュはレイヴンの従者の声に愕然とした。



「確か、二百五十二年です」



「に、二百五十……、ありえない、嘘よ!!」



「いや、冗談を言う仲でもないだろう」

「そうよね、変な人ね。残り百五十年でしっかりと償いなさい、ミナーシュ」


「嘘よぉお!!出してよぉお!!!」


「同じような反応だな」

「そうね」


トリスタン、ロベリアにと同じように取引を持ちかけたらしい二人は、王室に潜む外からの目や耳を排除しようとしている様子だった。

エリスの事に限らず、王宮で行われる全てのスパイ行為や違法を潰していこうかということだ。


現に、部下から王宮内で何度も危険に合ったセイランは憤慨しているいつかセイランにその危険が及ばない為レイヴンも危険因子は排除したいのだ。




「なんのつもりよ!!!」

「ただ取引しただけだ」


多少強引だが、こうする他ないだろう。と内心溜息をついていつの時でも湧いて出る愚か者達を疎ましく思った。



一方ふと目線を向けた新聞に写るエリスの様子に驚いたミナーシュ。


「オーロラ……のドレス」


「そうね、この世界で彼女の傑作を着られるのは私と王妃殿下、そしてエリスだけかもしれないわね」


「あんな冴えない女が……っ?」


「ほんとに冴えない?よく見てみて頂戴」


どう見ても最上級の美人がそこには写っている。


確かに記事に書かれている通りオーロラのドレスがこんなにも似合う女性は他に居ないと思わせるほどだ。


ミナーシュはそれが、悔しかった。

かつては見下していたエリスの姿がこんなにも美しく、一緒に彼女を嘲笑って居た者達はミナーシュに見向きもしないどころか掌を返してエリスに媚びている。

そんな者たちを気にも留めないだろう高貴なエリスが更に嫌だった。


(私と違ってってこと?この王妃食わせ者ね)


「私の城で起きた事は、私の責任。王太子妃の、王太子の顔に泥を塗ったものを許さないわ」




いくら憎もうと百五十年出る事の出来ない檻。


それでも虚勢を張るしか無かった。


「わ、私は二百年は生きますからぁ」


「そう。頑張ってね」


落ちていた新聞を握りつぶして、叩きつけた音が虚しかった。


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