婚約破棄された地味令嬢(実は美人)に恋した公爵様

abang

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25.しつこい男は嫌われるが

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「エリス嬢!婚約はもう正式に決まったのですか?」

「まさか、ジョルジオ様が本当に貴女と?」

「お久しぶりです!エリス嬢……」


今日はもう何度目だろう。


ルーシュフル家のパーティー以降招待状が増えたこともそうだが、王宮ではこうして話した事もない子息や我が息子の為にと声をかけてくる貴族達に囲まれて中々目的の場所に辿り着けない。



時々言葉の裏に感じる「元々は地味だった癖にジョルジオ様が本気で相手にしていると思うのか?ウチなら引き取るぞ」という悪意も特には気にならないが、もう開き直ったのか隣では相変わらず親友面したロベリアが、さりげなくエリスを貶しながら自分を売り出していてその執念深さに呆れた。



「エリスは、見た目は変わっても中身は陰気なままで……ジョルジオ様もきっと憐れに思ってお付き合いして下さっているのです。でなければ私を選んだでしょう……」


男達とロベリアに絡まれている所為でいつもならセイランの執務室に居るはずの時間だというのに、何度潜り抜けてもそんなにも雰囲気が変わったのが物珍しいのか人が寄って来るおかげで中々執務室に辿り着けない。


次はどうやって切り抜けようかタイミングを見計らっていると、聞き慣れた足音が二つと抑揚の無い声が背後からかかった。



「エリス。遅いと思ったら酷い絡まれようだな」


「レイヴン殿下、セイラン様……申し訳ありません」


「やっぱりね、言ったでしょう?」とレイヴンを見上げるセイランはどうやらこの事態を予測していたらしく「助けに来たわよ~」と笑っている。




「で、殿下!!」

「殿下、私はエリスの為に付き添っていたのですっ」


ロベリアの恩着せがましい猫撫で声に返事する事もなくふいとそっぽを向いたレイヴンは大抵興味や理由がない者と口は聞かない。今はセイランに優しい目を向けている。



「で、私のエリスに何か用かしら?あなた達」



「セイラン様……不慣れな私の不備でございます。遅れてしまい申し訳ありません」


「エリスの所為じゃないわ。容姿に集る者達をかわすのって骨が折れるわよね」


地味な容姿だと言うだけで冷たくしたり、仕事の用事を押し付けたりと冷遇されてきたエリスに掌を返す者達がセイランは気に食わなかったのだろう。


セイランが男達をひと睨みすると、「ゔ」と視線を泳がせる貴族達。


タイミングを見計らって一刀両断するエリスとはまた違って、笑顔でチクチクと刺していくセイランのスタイルはどうやら王太子妃という立場も相まって貴族達には効き目があるようだ。


追い討ちのようにレイヴンが言葉を重ねると更に顔を青くした。


「それに、ジョルジオがそんな理由で女を娶る訳がないだろう」


「め、娶るだなんて、殿下……尚早です」


「きゃあ!その気があるのね!?ジョルジオが聞いたら気絶しそうね!」

「……イヤな予感がする」




そう言って振り返ったレイヴンの予想通り、ジョルジオが頬を染めて顔が緩むの堪えているような表情で立ち止まっていた。



しまった。と顔に書いてあるエリスなどお構いなしに距離を詰めてぎゅうぎゅうと抱きしめたジョルジオがエリスをうっとりするような瞳で見つめながら「その気があるって、期待して良いの?」


と、蕩けるような甘い声で言うものだから初心なエリスには刺激が強いのか固まった笑顔のまま赤くなって硬直してしまう。



「これを見てもだって思うのかしら?」

「この二人はいつもだぞ」



「「「……失礼しましたっ」」」


「逃げ足だけは早いのね」

「呆れるな」


「あの者達は?」

「知り合いではありません。一人はご存じの通りです」

 

「あ、あの……っ私もそろそろ失礼致しますわ!」

(何なのよ!見せつけられた気分よ!)



「で、ジョルジオは何しに来たんだ?」


「あぁ……エリスの父君から相談があってね」

「お父様から?」



「トリスタンのことだよ」






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