婚約破棄された地味令嬢(実は美人)に恋した公爵様

abang

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19.もはやそれは恋

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パーティーから数日、慣れた王太子妃の宮の廊下。

エリスが揺るぎない忠誠を誓う相手であるセイランを訪ねるのは日に一度の事もあれば何度も訪ねることもある。


何度目かの往復の際に聞こえただろうエリスの噂話は酷いもので、


素行が悪いと言う嘘から行為の際にはまるで人形のように退屈らしいという下世話なものまでまるで誰かがようだと感じていた。



そんなエリスの噂話は勿論上司であるセイランにもしっかりと届いており、それが根も葉もない嘘だという事はセイラン自身が証明できるものばかりで腹立たしく思っている。


(まぁ大体の調べはついてるけど)



執拗にジョルジオに構うロベリアと、さりげなくエリスの評判を落とそうとするミナーシュの様子は王宮内外そこら中で度々目撃されており、それを信じる者と「ありえない」と笑う者は半々であった。


口を開けば、エリス様は、エリス様は、とエリスと自分を比較するミナーシュに「こんな子だったか?」と思い始めているトリスタンの様子は誰が見ても分かるくらいで彼らがうまく行っていないのもまた噂立っていた。



セイランの秘書長として暗躍するエリスはミナーシュの事を気にしていない様子だが、ジョルジオに言い寄るロベリアの事は少し気になっている様子だった。


「セイラン様、もうすぐ王太子殿下が来られるので、私はこれで失礼致します」

「いいの、レイヴンも会いたがってたから居て頂戴」

「承知しました」


レイヴンもまたエリスを心配していたので、彼なりに様子を見に来るつもりなのだろう。エリスもケールも私達王太子夫妻にとってはとても信頼できる人になっているから。


しばらくしてやって来たレイヴンは来て早々、いつかセイランが懐妊すればエリスに乳母になって欲しいと伝える。


「へ、乳母ですか?」

「ああ。だから早く結婚して子を考えろ」

「レイヴンったらなんでそんな言葉になるの!」


「ジョルジオも王城内に宮を持っている為に夫婦生活に問題はないようにする。二人を応援してる」


とレイヴンが言うと顔を真っ赤にするエリス。


「な、なんでジョルジオ様が……」

「恋人だろう」

「まだ」

「似たようなもんだ」

「エリスごめんなさいね。レイヴンったらちょっと女心が分からない人なの」

(俺はまた何かダメだったのか)



「いえ……正直戸惑っています。何故私なのかと……」


「「……」」

セイランとレイヴンは軽く見開いた目を見合わせて、嬉しそうに笑った。



「エリスがとても素晴らしい女性だからよ」

「ジョルジオも身内ながら良い男だ、安心して勧める」

「また、レイヴンったら性急よ」

「いやなに、セイランにも俺にもエリスは信頼できる貴重な存在だからな。正直トリスタンには勿体ないと考えていたんだ」

「それは私もよ、おまけの女達もお掃除出来て良かったわ」



二人があまりにも真剣な表情で言うものだからかえってエリスは少しおかしくなってしまい小さく笑った。



「少し、勇気を出すべきですね」


「「!!」」


「と、とりあえず自覚はしました」


「ふふ、それは恋だって?」


「はい。トリスタンの時と違って今はロベリアに言い寄られるジョルジオ様を見て心が落ち着きません」


「ほう」

「きゃあ!それはきっと嫉妬よ!」

「そう……かもしれません」


小さく「だから」と呟いたエリスは「頑張ってみます」と続けた。



トリスタンの趣味か、日に日に地味になっていき好きだと言っていたドレスも見なくなったとケールから聞いた時はとても心配した。

けれどジョルジオはそんな狭量な人間ではない。


きっと好きな色やドレスを思い出したエリスを「可愛い」「綺麗だ」と褒めちぎって愛するだろうと思って隣の同じ事を考えて居そうなレイヴンと微笑み合った。



「ん、じゃあ早速いってらっしゃい!」

「ジョルジオなら執務室で沈んでいたぞ」

「い、今ですか!?」




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