婚約破棄された地味令嬢(実は美人)に恋した公爵様

abang

文字の大きさ
上 下
14 / 77

14.だって親友でしょう?

しおりを挟む

パーティー、と言っても今日はセイランの付き添い人として出席しているので完璧なお仕事モードの地味なドレスだ。

それを見て膨れるセイランはとても愛らしく、レイヴンは先程から目が優しい。と、言っても殆どの人が彼のその表情の変化には気付かないだろう。


当然のように二人の元にやってくるジョルジオはどこかそわそわした様子でエリスに「今日のパートナーは?」なんて聞いてくるので、

「今日は執務です、セイラン様の付き添いに……」

と、表情を崩す事なく返事をすると何故かパァっと顔を明るくして「じゃあ俺と……」と何か言いかけた所でジョルジオの付き添い人である兄のケールがやって来てレイヴンとセイランに挨拶をする。



「ケール、態とタイミングを計ったな?」

「何のことですか」


(ジョルジオの奴、エリスに恋したようだな)

(とっても嬉しいわ!ジョルジオとエリスなら素敵よ)


小声で話す王太子夫妻の声は届かずエリスを挟んで何やら攻防戦を始めたケールとジョルジオは「兄さんと踊ろうエリス」「いや、俺と踊ろう」なんて言い合っている。


会場にいる他の者からの視線が痛くて、


「ひとりだけ場違いね」

「可哀想だから声をかけてあげているのよ」

「ケール様と本当に似ていないわね」


なんて無遠慮に聴こえてくる悪口に耳も痛い。



そんな時には必ずやってくるロベリアはまるでと言わんばかりに自慢げかつ大きめの声で声をかけてきた。



「エリス!!この間は御免なさい……誤解があったの……!」

「ロベリア、意外と心が強いのね図太いのね

「ーっ、一人でいると不安だと思って!」


エリスの含みのある言葉に怒りを堪えるようにそう言ったロベリアの視線はチラチラとケールやジョルジオ、恐れ多くもレイヴンまで見ている。


「親友だから、側に居てあげたくって」


優しいでしょ?いい子でしょ?って伺うような表情があからさまで、苛々するセイランと「誰だこれ」なんて少しの興味も無さそうにセイランの髪を撫でているレイヴン。

エリスの背後にそっと付き添うように立ち位置を変えたケールと、ジョルジオ。

何故ジョルジオまでもがそのような行動を取ってくれたかは分からないが、少なくとも妃殿下の良い部下として好印象を持ってくれているのかもしれない。


「私って、可哀想な人を放っておけない性分なの……あっ!皆様がいらっしゃるのに。私ったらついエリスしか見えていなくて申し訳ありませんっ」




(一息でたたみかけたわね。ほんと白々しいんだから)


可哀想だなんて自分で思ったことはない。それに今日は仕事である。

会場の注目を浴びているしこれ以上皆に迷惑をかける訳にはいかないので、どうやってロベリアを撃退しようかと巡らせていると、


意外にも初めに口を開いたのはレイヴンだった。



「ひとりに見えるか?」

「えっ……」

「エリスが一人に見えるか?」

「いや、その……友達が居ないので。殿下方に気を遣わせいるのではないかと思って……」


「エリスには俺達が居る。愛しい妻はエリスを大切にしている」



顔を赤くして、羞恥と怒りで顔を歪ませる。

「エリス!また被害者ぶって男に擦り寄ったのね!!王太子殿下にまで色目を使って……!!!」

そう言ったロベリアについカッとなってトンと両肩を押して一歩前に出た。



「侮辱しないで!殿下と妃殿下はとても素晴らしいご夫婦です。大切にして下さっているだけよ」



自分でも思ったよりも大きな声で驚いたざさらに大きな声でまるで被害者のように訴えかけるロベリア。



「可哀想だと思って声をかけたのに!!」



「私はセイラン様に忠誠を誓っているわ。そんな妃殿下とのご公務がどうして可哀想なの?光栄なことよ」


「そうよ、私のエリスに貴女のような無礼な友人は居ないわ。会場で騒ぎ立てるなら退出なさい」


セイランの威厳のある声が響いてシンとなる。



ケールがエリスを引き寄せて「大丈夫か?」などと聞いている内にスッと前に出てからエリスの手の甲に口付けたジョルジオがまるで嫉妬でもしているかのような拗ねた表情でロベリアに言った。




「レイヴンはセイランが居るし、ケールは兄だ。普通、俺との仲を疑わないかな?」


「団長」
「ジョルジオ」

「「そういう問題じゃない」」


「ふふっ、分かったでしょ?エリスに肖ってこの人達とお近づきになろうなんて浅はかなの」



セイランがケールとジョルジオからエリスを奪うとぎゅっと抱きついて言う。

(あぁ本当にお可愛いらしくて、お優しい人)



「そうだな、セイラン。それにエリスが迷惑をかけているんじゃなくてジョルジオが付き纏っているだけだ」


「え」


突然の飛び火に驚くジョルジオ、きっと秘書として力を借りたくて付き纏っていると言いたかったのだろうと考えるエリスとは違って、騒めく会場に耐えきれず少し笑ってしまったエリスの声にまたぽっと頬を染めたジョルジオに令嬢達の悲痛な叫びが会場に響いた。





しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!

桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。 令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。 婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。 なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。 はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの? たたき潰してさしあげますわ! そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます! ※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;) ご注意ください。m(_ _)m

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】 ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です ※自筆挿絵要注意⭐ 表紙はhake様に頂いたファンアートです (Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco 異世界召喚などというファンタジーな経験しました。 でも、間違いだったようです。 それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。 誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!? あまりのひどい仕打ち! 私はどうしたらいいの……!?

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))  書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...