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幸せなんて言い表せない程
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シュテルン侯爵の挙式は近しい者だけで、ロマンチックな式が挙げられたという。その代わり披露宴は盛大で、すっかり整い潤ったシュテルン領での盛大な披露宴には国中の者達が集まった。
隣の観光地であるバロウズ領のアフェットでは、元来恋人達の聖地ということもあり、隣のシュテルン侯爵夫人がバロウズの令嬢だと言う事も相まってイルザに言わせれば「相乗効果だ、儲かった」らしい。
すっかりと、軍事と魔道具のシュテルンとなったこの領地では今も人が賑わいディートリヒやイブリアの強さに憧れる猛者達も集まっていた。
ディートリヒは他国にも知れ渡る名将シュテルン侯爵となった。
その数年後、無事にすくすくと育っている子供とディートリヒは戸惑いながらも遊んでいる。
公務の隙間を縫ってイブや子供達とは良く時間を作り、自分が親に遊んで貰った記憶こそ無いので戸惑いながらも、良き父となっていた。
「ふふっ、すっかりお父さんねディート」
「……嬉しいですね。イブは座ってて、身体に触ります」
「ママ、びょうきなのー?」
「もう、相変わらず心配性なんだから。大丈夫よルシア」
イブリアのものより暗めの桃色の髪と真っ白な肌、深い紫の中に星空を詰め込んだような美しい瞳は涼しげで何処となく目元はディートリヒに似ている幼い少年はルシアと名付けられた。
「ルシア、母上のお腹には妹が居るんだ」
「わぁい!ぼく楽しみにしてたんだ!お兄ちゃんになるの!」
「ふふっ、パパも凄く楽しみにしてるのよ勿論ママも。同じね」
「やったぁ!ぼくが妹を守ってあげるんだ!」
「見て!」そう言ったルシアが両手に見せる魔法の渦は余りにも子供にしては精巧で強い。「「えっ」」と驚いたように顔を見合わせた二人は幼い頃に自分達が大人にそんな顔をさせた事を思い出し、可笑しくて笑った。
「ーっふふ!懐かしいわね」
「イブと僕の子ですね。ルシアは凄いなぁきっと強くなるぞ」
「ママとパパみたいに?」
「ええ」
「そうだな、その力は守る為に使うんだぞ」
「分かった!パパママのこと一日中守ってるもんね!」
「え……」
「ずっと気にしてる!僕とママを、僕も気配がわかるもん」
「……っふふふ!!」
「イブ、笑わないで下さい」
「ルシア、パパは……ディートはね。小さな頃からずっとママを守ってくれているの」
「あいしてるから?」
「まぁ!」
「ママ、顔があかいよ」
「そう。愛してるからだよ」
「パパ!じゃあ僕のこともあいしてるってこと?」
「ああ、勿論愛してるよ」
片腕にイブリアを引き寄せて、もう片方でルシアを抱き上げたディートリヒは二人の頬にキスをして愛おしげに目を細めた。
「おーい、お前たち。俺も父になるが、先ずはこの可愛い甥っ子を愛してるぞ~~!!」
「カミル……また突然だな」
「ディートリヒさん、イブちゃん突然御免なさい。カミルったら聞かずに勝手にゲートを開くのよ」
「お兄様ったら」
カミルもまた、父となりマルティナのお腹には双子が宿っている。
相変わらず騒がしいものの出来る限りマルティナを手放さずにあれこれ気遣っている姿は微笑ましく、ルシアの事もまたよく可愛がっていた。
マルティナもまたイブリアと仲良く、ルシアを可愛がってくれていたし、イブリアもまたマルティナとカミルの子を楽しみにしている様子だった。
「お義姉様、調子は?」
「ええ良好よ!時期が似ていそうね」
「この子達はアカデミーの同期になるわね」
イルザはすっかり丸くなり、イブリアだけでなくルシアにまで骨抜きで、イブリアとディートリヒ同様に幼い頃から度々大人を驚かせるルシアの才能に「懐かしいな」と目を細めて亡くなった妻の肖像画に語りかけていた。
結婚式の日に、セオドアから送られた貴船菊には「あなたを忘れない」という花言葉があったがそれと共に「薄れゆく愛」も意味する花で彼がイブリアへの想いを胸にしまって、前を向くという意思が宿っていた。
その言葉同様、彼は王太子として政略結婚ではあるが妃を迎えその責務を全うしている。
ルシアンは所属する部隊で近隣国による侵攻を防ぎ国境付近の村の救助と復興に貢献したという話が首都では話題になっているし、ティアードは実家の爵位を近々継ぐらしい。
レイノルドは相変わらずカミルに叱られては拗ねているが、着々と力をつけていて彼の父に認められる日もそう遠くないだろうとカミルは面倒そうに、けれど口元を緩めて話していた。
そんなルシアン達を「エリートだったはずが酷く遠回りしたな」と陰口を言う者は未だに沢山居るが、あの未熟なままの自分達がこの国を率いていた方が怖かった。
だからこれで良かったのだと、イブリアは目の前の幸せな家族の姿を噛み締めていた。
「皆、愛してるわ」
「ふふっ私もよ」
「あ!ずるいぞ!俺が一番愛してる!」
「僕も愛しています」
そう言ってイブリアの頬に口付けたディートリヒに「あ!」と声を上げたカミルに皆で笑った。
「ぼくが妹たちを守ってあげるんだ」
そう言ってイブリアとマルティナのお腹に触れたルシアに皆が心をぎゅっと掴まれたのは言うまでもなかった。
-fin
隣の観光地であるバロウズ領のアフェットでは、元来恋人達の聖地ということもあり、隣のシュテルン侯爵夫人がバロウズの令嬢だと言う事も相まってイルザに言わせれば「相乗効果だ、儲かった」らしい。
すっかりと、軍事と魔道具のシュテルンとなったこの領地では今も人が賑わいディートリヒやイブリアの強さに憧れる猛者達も集まっていた。
ディートリヒは他国にも知れ渡る名将シュテルン侯爵となった。
その数年後、無事にすくすくと育っている子供とディートリヒは戸惑いながらも遊んでいる。
公務の隙間を縫ってイブや子供達とは良く時間を作り、自分が親に遊んで貰った記憶こそ無いので戸惑いながらも、良き父となっていた。
「ふふっ、すっかりお父さんねディート」
「……嬉しいですね。イブは座ってて、身体に触ります」
「ママ、びょうきなのー?」
「もう、相変わらず心配性なんだから。大丈夫よルシア」
イブリアのものより暗めの桃色の髪と真っ白な肌、深い紫の中に星空を詰め込んだような美しい瞳は涼しげで何処となく目元はディートリヒに似ている幼い少年はルシアと名付けられた。
「ルシア、母上のお腹には妹が居るんだ」
「わぁい!ぼく楽しみにしてたんだ!お兄ちゃんになるの!」
「ふふっ、パパも凄く楽しみにしてるのよ勿論ママも。同じね」
「やったぁ!ぼくが妹を守ってあげるんだ!」
「見て!」そう言ったルシアが両手に見せる魔法の渦は余りにも子供にしては精巧で強い。「「えっ」」と驚いたように顔を見合わせた二人は幼い頃に自分達が大人にそんな顔をさせた事を思い出し、可笑しくて笑った。
「ーっふふ!懐かしいわね」
「イブと僕の子ですね。ルシアは凄いなぁきっと強くなるぞ」
「ママとパパみたいに?」
「ええ」
「そうだな、その力は守る為に使うんだぞ」
「分かった!パパママのこと一日中守ってるもんね!」
「え……」
「ずっと気にしてる!僕とママを、僕も気配がわかるもん」
「……っふふふ!!」
「イブ、笑わないで下さい」
「ルシア、パパは……ディートはね。小さな頃からずっとママを守ってくれているの」
「あいしてるから?」
「まぁ!」
「ママ、顔があかいよ」
「そう。愛してるからだよ」
「パパ!じゃあ僕のこともあいしてるってこと?」
「ああ、勿論愛してるよ」
片腕にイブリアを引き寄せて、もう片方でルシアを抱き上げたディートリヒは二人の頬にキスをして愛おしげに目を細めた。
「おーい、お前たち。俺も父になるが、先ずはこの可愛い甥っ子を愛してるぞ~~!!」
「カミル……また突然だな」
「ディートリヒさん、イブちゃん突然御免なさい。カミルったら聞かずに勝手にゲートを開くのよ」
「お兄様ったら」
カミルもまた、父となりマルティナのお腹には双子が宿っている。
相変わらず騒がしいものの出来る限りマルティナを手放さずにあれこれ気遣っている姿は微笑ましく、ルシアの事もまたよく可愛がっていた。
マルティナもまたイブリアと仲良く、ルシアを可愛がってくれていたし、イブリアもまたマルティナとカミルの子を楽しみにしている様子だった。
「お義姉様、調子は?」
「ええ良好よ!時期が似ていそうね」
「この子達はアカデミーの同期になるわね」
イルザはすっかり丸くなり、イブリアだけでなくルシアにまで骨抜きで、イブリアとディートリヒ同様に幼い頃から度々大人を驚かせるルシアの才能に「懐かしいな」と目を細めて亡くなった妻の肖像画に語りかけていた。
結婚式の日に、セオドアから送られた貴船菊には「あなたを忘れない」という花言葉があったがそれと共に「薄れゆく愛」も意味する花で彼がイブリアへの想いを胸にしまって、前を向くという意思が宿っていた。
その言葉同様、彼は王太子として政略結婚ではあるが妃を迎えその責務を全うしている。
ルシアンは所属する部隊で近隣国による侵攻を防ぎ国境付近の村の救助と復興に貢献したという話が首都では話題になっているし、ティアードは実家の爵位を近々継ぐらしい。
レイノルドは相変わらずカミルに叱られては拗ねているが、着々と力をつけていて彼の父に認められる日もそう遠くないだろうとカミルは面倒そうに、けれど口元を緩めて話していた。
そんなルシアン達を「エリートだったはずが酷く遠回りしたな」と陰口を言う者は未だに沢山居るが、あの未熟なままの自分達がこの国を率いていた方が怖かった。
だからこれで良かったのだと、イブリアは目の前の幸せな家族の姿を噛み締めていた。
「皆、愛してるわ」
「ふふっ私もよ」
「あ!ずるいぞ!俺が一番愛してる!」
「僕も愛しています」
そう言ってイブリアの頬に口付けたディートリヒに「あ!」と声を上げたカミルに皆で笑った。
「ぼくが妹たちを守ってあげるんだ」
そう言ってイブリアとマルティナのお腹に触れたルシアに皆が心をぎゅっと掴まれたのは言うまでもなかった。
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