31 / 42
程々になさいねと笑う君
しおりを挟む「……って事だったのよ」
「っふ、ほどほどになさいねフレイヤ」
「本音は?」
「めっちゃ面白い」
「ほら」
先日のリリエン王女との一件を偶然会ったルディウスから耳に入ったティリアが面白そ……心配そうに訪ねて来たのが少し前。
話を聞きながら、顔こそ心配を装っているものの肩を震わせる彼女が明らかな形式上の説教の言葉を述べるとすかさず真顔で「本音は?」と聞いたフレイヤに即座に降参したティリア。
「でも、本当にほんの悪戯心だったのにあんなに飛躍するとは思わなかったの」
「ふふっ、なんでいつも何かを巻き起こすのよ」
「冤罪」
「それは無理あるわ。有罪」
「過失」
「うーん……可決!」
「甘いな」
「ルディ様」
「殿下」
相変わらず突然現れたルディウスに視線を向けた二人は、思ったよりも真顔のルディウスに思わずくすくすと笑う。
「フレイヤに何も無くて良かったよ……ハラハラさせられる」
「まぁ王女殿下は過激派ですものね」
「「過激派?」」
ティリアによると、ルディウスに好意を寄せている事は令嬢達の間ではもう噂になるほどでその所為で過去にルディウスに近づいた人達が彼女からの虐めに耐えきれず彼を諦めたという話は有名らしい。
ルディウス本人も、ゴシップに興味がないフレイヤも全く知らなかったとまるで何かの臭いを嗅いだときのディエゴのような顔でティリアをぼうっと見るだけだった。
「感情の分かりにくい顔しないで」
「「あっ」」
「とにかく、フレイヤが難癖つけられなくて良かったわ」
「寧ろ嫌味を倍以上の恥にして返していたが」
「ふふ」
「「笑えない」」
ティリアの話に少し考えてから「あ」と声を漏らしたフレイヤに視線を向けると難しい顔で「判断しかねるわね」と呟く。
「何?フレイヤ」
「いえ……ルディ様に話す程の事じゃないの」
「じゃあ私に話してみて?」
「うーん」
「「フレイヤ」」
「そう言えば王女さまから来たお詫びの贈り物とやらに添えられていた手紙に小さなナイフが入って居たの」
「「え"」」
「贈り物は部屋着だったのだけれど……ナイフもてっきり贈り物かと思って……」
「怪我は!?」
「勿論ありませんが」
「そのナイフはどうした!?」
(フレイヤそれは寝首をかくぞという宣戦布告よ……)
フレイヤはふと陰のある笑みを浮かべてから気まずそうに二人から視線を逸らす。
「その晩に偶々入り込んだ刺客にトドメを刺すのに使いました」
「折角の贈り物なのに申し訳ありませんが」と続けた。
「もう刺客来てるんだね!?」
「うん俺もそれは驚いた!」
「ウチの警備の所為でもうボロボロだったから、可哀想に思って」
「えっ?可哀想に思ってトドメ?」
「カワイソウダカラトドメ?」
「ふふ、そうよトドメをさしたの」
「えーっとフレイヤ……」
「因みに調べたらとても有能なギルドから来た殺し屋だったわ」
「ちょっとま……っ」
「だから部屋まで辿り着けたのね」
「フレイヤ……その、証拠のナイフは?」
「え?証拠?何故?刺客の人にあげたわ」
「あのねフレイヤ、それはあげたって言わないの」
「刺したまんまって言うんだよフレイヤ」
「なに、二人して青い顔ね。ふふっ」
(親友が凄い怖い)
(寧ろその愛らしさが怖い)
「王女様には感謝しなくっちゃ!あ、でもナイフは嫌がらせだったのかしら?」
「そこ?」
「フレイヤにはもう言わない方がいいのか?」
「そうですね殿下……」
「まぁでもお陰様で刺客を楽にしてあげられたって王女様に感謝の手紙を書くことにするわ……命の恩人だし」
「違うね、狙われてんだわ」
「えっ誰に!?」
「「……」」
その後何者からか届いた手紙に恐怖してリリエン王女が寝込んだという噂を聞いて、もうすでにリリエン王女の事を忘れているフレイヤとフレイヤの身を案ずるティリア。
「ーらしいの、貴女は何も問題ない?」
「えっ?命の恩人?誰だった?」
「ぶっ!!」
「ティリア、大丈夫?」
「そっちがな」
「で、何の話だっけ?」
「リリエン王女殿下のことよ」
「リリエンオウジョデンカ?」
「いや、初めて聞いた言葉みたいな顔すんのやめて?」
21
お気に入りに追加
1,073
あなたにおすすめの小説

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。

いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。

【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる