21 / 42
初めましては恋の予感?
しおりを挟む「会わせてくれよ~」
「やだ」
先程から繰り返されるこの会話にはうんざりしてる。
遠い親戚で、隣国の第二王子であるティーダは、ルディウスが恋をしているという令嬢に会ってみたかった。
(しかも、大抵は喜んで尻尾振るだろ?邪険にされてるとか!)
物珍しいフレイヤに会ってみたいと二十分ほど、ルディウスとの攻防を続けると額に手を当てて深くため息をつくと「わかったよ」と鬱陶しそうに言うと「明日な」と俺を追い払った。
自分で言うのもナンだが俺は可愛い。
ルディウスが綺麗だとすれば、俺は女性ならば放っておけない可愛さがあるだろう。だから会わせたくないのは充分理解できる。
「何かお前、気持ち悪いこと考えてるな」
「なに、僕は可愛いってことだよ」
「ナルシストが」
「お前もな!?」
一つ歳上のルディウスは昔から変わってる。
王太子の癖に変人で、王族らしくないかと言われれば……らしくも振る舞えるんだけど、違う。
だからこそ大好きなのかもしれないけど兎に角変人だ。
女の子に優しくて、男からの信頼も厚い。
優しすぎる性格は将来本当に国王になった時大丈夫かな?って心配になる時もあるけど噂に聞く「フレイヤ」がしっかりしてそうだから大丈夫かな。
なんやかんや言って、ルディウスが振られる訳無いって思ってる俺も俺だよなぁ……
「昨日の俺の心の声、撤回!振られちまえ!」
「初めまして、ティーダ王子殿下」
目の前に居るとびきりの美人は何だ?
ルディウスより綺麗な人間は存在しないと思っていたが、サラサラの銀髪に潤んだ瞳、白い肌。なんと言っても絶世の美女。
「うん、袖にされても納得」
「ティーダ??」
「だってさ、ルディウス。俺……」
「なんだよ」
「かなりタイプかも、フレイヤ嬢」
「無理」
無理だと言ったルディウスを無視してフレイヤ嬢の手を取ると、手の甲に口付けて挨拶する。
大抵の女性はここで見上げた俺の可愛さにイチコロ……
「お可愛らしい……」
「そんな、フレイヤさんこそ」
「うちのディアゴにそっくりだわ!」
「ぶっ!」
ディアゴ……?誰だその男?僕ほど可愛い男がこの世に居てたまるかとパッと顔を上げたら面白いともう顔全体で語ってるルディウスと、淑女らしい薄い微笑みで首を傾げたフレイヤ嬢。
(その仕草も可愛い……っ!)
「うちの、愛猫ですの」
「え……猫……?」
ドキドキして顔を赤らめるどころか、猫に似ているだなんてこれは手強いなと思った所で違和感を感じる。
(なんか、二人近い?)
ルディウスがにやあっと笑ってフレイヤの肩を抱くと、特に振り払うでもなく嫌そうに眉を顰める彼女。
「嫌がられてんだ、ぶっ!」
「いや、フレイヤは素直じゃないんだ」
「いや、ルディ様は脳みそが無いんだ」
「「え?」」
聞き間違いか?まるでルディウスの口調を真似したように辛辣な言葉をフレイヤ嬢が発したように感じてチラリとルディウスを見ると、
特に気にした様子もなく、話している。
「あ、あの!フレイヤ嬢……良かったら今晩俺と食事でも……」
「ごめんなさい、今晩は猫にご飯をやらなきゃならないのです」
「いや……それって毎日じゃ……使用人とかに頼めば……」
「御免なさい、ウチの使用人は皆夜行性で……」
「それ起きてるよね!?」
「え?」
「えっ?俺が間違ってる?」
もうすっかりとフレイヤ嬢のペースに巻き込まれてしまうと、ルディウスが「な、手強いだろ?」と視線を向けてきた。
「俺なんて手紙の返事が何通送っても来ないから訪ねたら……」
"ごめんなさい、お父様が食べてしまうの"
「って平気な顔で言うんだよ」そういって笑ったルディウスが「ね?」とフレイヤ嬢に首を傾げる可愛い仕草にも表情一つ変えずに、
「ちょっとなに言ってるか分からないわ」
ってしまいには真顔でタメ口で話すから驚いて思わず声が出た。
「ふ、不敬気をつけて!ってか父上はヤギか何かなの!?」
「ぶは!」
「え、なに?この人少し怖いわ」
(アンタが一番怖いよ!!!)
俺の初恋は夢が砕かれて、見事に頓挫した。
「へ、変人には変人が集まるのか……?」
「あ!じゃあ今から皆でお茶は如何ですか?」
「くっ……顔が良すぎる!……喜んで!」
21
お気に入りに追加
1,073
あなたにおすすめの小説

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。

いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。

【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる