王太子様、丁寧にお断りします!

abang

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初めましては恋の予感?

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「会わせてくれよ~」

「やだ」


先程から繰り返されるこの会話にはうんざりしてる。

遠い親戚で、隣国の第二王子であるティーダは、ルディウスが恋をしているという令嬢に会ってみたかった。

(しかも、大抵は喜んで尻尾振るだろ?邪険にされてるとか!)

物珍しいフレイヤに会ってみたいと二十分ほど、ルディウスとの攻防を続けると額に手を当てて深くため息をつくと「わかったよ」と鬱陶しそうに言うと「明日な」と俺を追い払った。


自分で言うのもナンだが俺は可愛い。

ルディウスが綺麗だとすれば、俺は女性ならば放っておけない可愛さがあるだろう。だから会わせたくないのは充分理解できる。


「何かお前、気持ち悪いこと考えてるな」

「なに、僕は可愛いってことだよ」

「ナルシストが」

「お前もな!?」


一つ歳上のルディウスは昔から変わってる。

王太子の癖に変人で、王族らしくないかと言われれば……らしくも振る舞えるんだけど、違う。


だからこそ大好きなのかもしれないけど兎に角変人だ。

女の子に優しくて、男からの信頼も厚い。

優しすぎる性格は将来本当に国王になった時大丈夫かな?って心配になる時もあるけど噂に聞く「フレイヤ」がしっかりしてそうだから大丈夫かな。


なんやかんや言って、ルディウスが振られる訳無いって思ってる俺も俺だよなぁ……






「昨日の俺の心の声、撤回!振られちまえ!」


「初めまして、ティーダ王子殿下」

目の前に居るとびきりの美人は何だ?

ルディウスより綺麗な人間は存在しないと思っていたが、サラサラの銀髪に潤んだ瞳、白い肌。なんと言っても絶世の美女。


「うん、袖にされても納得」

「ティーダ??」

「だってさ、ルディウス。俺……」

「なんだよ」

「かなりタイプかも、フレイヤ嬢」

「無理」

無理だと言ったルディウスを無視してフレイヤ嬢の手を取ると、手の甲に口付けて挨拶する。


大抵の女性はここで見上げた俺の可愛さにイチコロ……



「お可愛らしい……」

「そんな、フレイヤさんこそ」

「うちのディアゴにそっくりだわ!」

「ぶっ!」



ディアゴ……?誰だその男?僕ほど可愛い男がこの世に居てたまるかとパッと顔を上げたら面白いともう顔全体で語ってるルディウスと、淑女らしい薄い微笑みで首を傾げたフレイヤ嬢。

(その仕草も可愛い……っ!)


「うちの、愛猫ですの」

「え……猫……?」

ドキドキして顔を赤らめるどころか、猫に似ているだなんてこれは手強いなと思った所で違和感を感じる。


(なんか、二人近い?)


ルディウスがにやあっと笑ってフレイヤの肩を抱くと、特に振り払うでもなく嫌そうに眉を顰める彼女。


「嫌がられてんだ、ぶっ!」

「いや、フレイヤは素直じゃないんだ」

「いや、ルディ様は脳みそが無いんだ」

「「え?」」

聞き間違いか?まるでルディウスの口調を真似したように辛辣な言葉をフレイヤ嬢が発したように感じてチラリとルディウスを見ると、


特に気にした様子もなく、話している。



「あ、あの!フレイヤ嬢……良かったら今晩俺と食事でも……」

「ごめんなさい、今晩は猫にご飯をやらなきゃならないのです」

「いや……それって毎日じゃ……使用人とかに頼めば……」

「御免なさい、ウチの使用人は皆夜行性で……」

「それ起きてるよね!?」

「え?」

「えっ?俺が間違ってる?」


もうすっかりとフレイヤ嬢のペースに巻き込まれてしまうと、ルディウスが「な、手強いだろ?」と視線を向けてきた。


「俺なんて手紙の返事が何通送っても来ないから訪ねたら……」


"ごめんなさい、お父様が食べてしまうの"

「って平気な顔で言うんだよ」そういって笑ったルディウスが「ね?」とフレイヤ嬢に首を傾げる可愛い仕草にも表情一つ変えずに、



「ちょっとなに言ってるか分からないわ」

ってしまいには真顔でタメ口で話すから驚いて思わず声が出た。


「ふ、不敬気をつけて!ってか父上はヤギか何かなの!?」


「ぶは!」

「え、なに?この人少し怖いわ」



(アンタが一番怖いよ!!!)


俺の初恋は夢が砕かれて、見事に頓挫した。


「へ、変人には変人が集まるのか……?」

「あ!じゃあ今から皆でお茶は如何ですか?」

「くっ……顔が良すぎる!……喜んで!」










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