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しおりを挟む陛下と話してこの事については箝口令を徹底する事にして、アイリーンに説明を求める為に後日内密に登城するように伝令を出した。
エタンセルは何かに勘付いているようで、オーリアと共にエレノアから離れようとしない。
実際には彼はエレノアには辿り着く事が出来なかった上に、もう二度と辿り着けないのだが、エタンセルの鋭さには感心した。
「遅くなりました」
「いい、座りなさいシド」
流石国王という所か、何事も無かったように私にそう言う父に頷いてエレノアの隣に座った。
「皆もすまない」
皆が快く席に迎えてくれたおかげでパーティーとは違う優しい時間が流れる。
「エレノア、シド」
「はい、父上」
「はい、陛下」
「結ばれて良かった、おめでとう」
「ふふ、私もこの時を待ってたのよ」
両親の言葉に、エレノアの両親もまた喜びを表して祝ってくれる。普段はエタンセルにそっくりの涼しげな無表情を珍しく緩めたエレノアの父と、昔から変わらない朗らかなエレノアの母の心底嬉しそうな笑顔にエレノアの瞳が潤んだ。
エタンセルに至っては、前回はそうでも無かったのに今度の結婚ではいち早く涙を流してくれたので今も相変わらず瞳に水気を含んでおり、オーリアが愛おしげに彼の涙を拭った。
「実の姉妹のように思っております、ちゃんと幸せになってくれて、まさか国に戻ってくれるなんて嬉しいです」
「オーリアお姉様、私、とても幸せで此処に戻って来られてほっとしています。やっぱりみんなと一緒に生きたいです」
皆が優しい表情をしていた。
本来ならばエレノアはこの国で王太子妃になるべく育てられた人だったからあんなに辛い扱いをされる人ではなかった。
「それに、何より私はシドと生きたいです」
「……エレノア」
「愛ってこんなにも素敵な気持ちだって初めて知りました」
今度は私の視界が涙で揺れた。
皆が笑うのが分かったが、揶揄うようでもなく、馬鹿にするようなものでも無く、優しくて心地の良いものだったから平気だった。
「シド、泣かないで」
「嬉しくて、エレノアはもう本当に私の妻なんだね」
「妻に、してくれたんでしょ?」
「ん、やっと叶ったんだ。離すもんか」
嬉しそうに頬を染めたエレノアも目尻を拭った所で、父の上機嫌な声が響く。
「それではあらためて、記念すべき今日の日に乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
他愛のない話や、これからの話をしながら食べる晩餐。
一際忙しそうな親友を見て思わず笑ってしまう。
「エレノア、これも食べろ」
「オーリア……身体が冷えるからこれを膝に」
せっせと妹の世話を焼きながら、婚約者への気配りも忘れない。
相変わらずのシスコンを発揮するエタンセルに彼の両親は呆れ顔をして、私の両親は笑った。
「エタンセル、エレノアのことは私が引き受けるから安心しろ」
「あ……そうだな」
「エタンセルったら、エレノアがリーテンへ行った頃はとても落ち込んでいたのよ」
「お兄様……っ」
恥ずかしそうに、はにかむエレノアにぎゅっと胸が締まってエレノアの手を握るとエタンセルがジッと此方を見た。
「エレノア、シドは他の奴らとは違う」
「ええ、私は幸せ者だと思ってるわ」
「安心して任せるが、偶には……兄にも甘えろ」
「はい!」
(穏やかだなぁ、ずっとこうして大切な人と場所を守れたら良いのに)
「一緒に守らせてね」
「へ」
「考えてることなんてわかるわ」
「……愛してる」
エレノアの耳元に囁いて、真っ赤になったエレノアにまた幸せだと実感した。
(あ、初夜……)
(に、二度目だけど、初めての初夜……)
((どうしよう……っ))
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