転生者だと気付いたら悪役双子の妹だったから堕ちる

abang

文字の大きさ
上 下
10 / 21

好きな人は重症だから

しおりを挟む

「フリアと兄達が?」

「ええ、噂が流れております」


フリアと兄達の禁断の恋、美しい禁忌など面白可笑しく語られている噂話は長らく彼女に片想いをしている俺に取ってはかなり残酷だ。



強ちありえないことも無い。そう思えるほどフリアの二人の兄達の異常な愛情は目の前で見てきたしディザスターの過去の事もあってかなり重い愛情とそれを当たり前とする教育を受けてきたのだろう事も理解してる。


それでもやはり聞こえてしまうと落ち込むもので、好きな人の初めては全て欲しいと願ってしまうのが男というものだ。それも幼い頃から片想いしていてずっと側にいる子なら尚更夢見るはず。

(まさか、最大のライバルが兄だなんて思わないだろう。それに二人も居る)


「とびきり狂った奴らがな」

「殿下?」

「あ……すまない。独り言だ」

最後は思わず声に出してしまっていたらしい従者に聞き返されて慌てて訂正するが、内心はあの狂った双子の事で一杯だった。



王家の中で国王と王太子と一部の腹心しか知らないディザスターの過去は壮絶なものだった。



彼等の生みの母親は、三人をとても愛していたが夫は愛して居なかった。

それもそうだ、その魔力の質と強さそして何より美しさに惚れ込まれて半ば無理矢理婚約させられたのだから。


そんな事を知らない周囲は仲睦まじい美男美女夫婦だと持て囃したが、実際は夫に怯えて支配されて暮らす妻と、狂気なまでに妻を愛する公爵の恐怖による主従関係で結ばれた仮面夫婦だった。


精神的な疲労と、公爵の無理な行為によってとうとう身体を壊してすぐに亡くなった公爵夫人。


それからの公爵は、元々跡取りとして大切にしていたファルズフだけじゃ無くベリアルにも仕事を教え二人の留守の間にはまだ幼いフリアを妻の代わりと言わんばかりに可愛がったり暴力を振るった。


とある時、そんな違和感に気付いた兄達は出かけたフリをして隠れて父親を監視していた。


フリアに手を上げた挙げ句、脅して母の代わりに襲おうとした。

「兄達を殺してもいいんだぞ」確かに父親はフリアにそう言って彼女のドレスに手をかけたのだという。


けれどまだ幼い兄達では到底敵わない程の力が邸を覆った。

泣き叫び、抵抗しその時開花した破壊の力の暴走で父親を殺めたのはフリアの方だった。

防御するのが精一杯だった二人は一瞬何が起きたのか分からなかった。


見るも無惨に飛び散った父の破片を呆然と見るフリアはもう何もかも全てが抜け落ちたようで、今にも消えそうだった。


「わ、たしが殺した……父親だったのに……」

元々ディザスターは血縁にこだわる家系だし、まだ数歳の女の子だ。

いくら憎い上に事故とはいえ血の繋がった父親を殺めてしまったのだ。
精神的なショックは計り知れないだろう。

泣きじゃくった末に、呆然と座り込んだフリアをただ動けずに見ていたが、


二人の兄達は、ハッと我に返ると父親だった肉の破片を踏み潰している事も気にせずにフリアの方へと歩いて行ったと言う。



「「フリア、怖かったね」」

「兄さん……私、仕事じゃないのに、父なのに……っ」


事情聴取を受けた使用人の話を聞いたのは、国王夫妻だけだったと言う。


不憫なフリアの為にこの事は、事故と処理して詳細を伏せた。
まだ幼いファルズフが家長を継ぐ形で収まった。







「フリア、大丈夫だよ」

「泣くなコレは元々ただの老害だ」


「「強くなったなぁ、フリア」」


「ファルズフにいさっ、ベリアルにいさんっ」


「大丈夫だよ、ほーら見てな?」

「フリアを泣かせるモノは」


「「兄さん達が消してやろうなぁ」」



そう言って魔力を使うと、笑顔で父親だったモノを跡形もなく燃やしたと言う。

三人は、笑顔で涙を流していた。




「陛下、父が妹を犯そうとして」

「俺たちには暴力を奮いました」



そして、「三人の魔力が暴走して」父は事故によって跡形もなく消えてしまいました。





そう言った三人の小さな手が堅く握られているのを見て、国王はもう何も言えなかったと言う。



けれど、使用人は肉片の散る悪臭立ち込める中


小鳥のようにキスを交わして、


兄達の赤々しい炎に安心したように笑ったフリアと

子供とは思えない三人の会話にゾクリとしたが、フリアを想って口を閉ざした。





「頑張ったねぇ」

「これからはやっと三人だよ」

「でも……」

「大丈夫、」

「「どの道消すつもりだったから」」

「ねぇベリアル」

「おー兄さん」







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪

奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」 「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」 AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。 そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。 でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ! 全員美味しくいただいちゃいまーす。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

処理中です...