転生者だと気付いたら悪役双子の妹だったから堕ちる

abang

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太陽の王子と災害の公女

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「少しフリアと話していても?」

「ええ、良いわ。兄さん達も他の方と御用があるだろうし助かるわ」


「……目の届く所にいてねフリア」

「……会場を出ない事が条件です殿下」



綺麗な笑顔の裏に何かドス黒いオーラを感じる二人は半ば王太子であるソルを強迫でもしているような雰囲気を纏っていて、思わずフリアはため息をついた。


「兄さん、大丈夫よソルは」

(だってソルは未来で聖女と婚約するんだもの)


おおよその出来事はちゃんと覚えている、と安心しながら微笑んだフリアの頭に手を置いて「気をつけろよ」と言って離れるベリアルとフリアの髪を耳にかけてやるファルズフの兄妹とは思えない溺愛ぶりにソルはほんの少し表情では分からぬ程度ぴくりと反応したが堪えて手を振った。

「ディザスターの姫は俺がちゃんと守るよ、安心してくれ」


「「……」」

「ソル、私が貴方より弱いと思うの?」

「フリアそこは俺を立ててよ」


(フリアに一ミリも興味持たれてないし大丈夫か)

(こんな馬鹿だし問題ねーか)


「兄さん達後でね、ちゃんと迎えにきて?」


ため息をついて後ろ手を振る少し先の二人に声を掛けたフリアがまるで恋人にでも甘えるかのように見えてソルはぎゅっとフリアの手の先を握った。



「ソル?」

「……今日は俺のパートナーになってよ」

「兄さんが迎えに来るまでね」

(なんか、ソルって距離が近いのよね)


微笑ましげな視線を向ける貴族達は「ディザスターの令嬢が王太子妃候補か」なんて言っている者まで居てフリアは内心鼻で笑った。


(馬鹿ね、ソルは聖女に惚れるのよ)

私のような破壊の申し子みたいな女を愛してくれるのなんて兄さん達くらいなんだから、と考えていると差し出された飲み物に思考が留まった。


「どうぞ、フリア」

「ええ、ありがとう」

「なにも入ってない、何なら毒味しようか?」

「大丈夫よ親友を疑う理由がないもの」

「親友、ね」


確かに学園では一つ上のソルは出来る限りフリアにべったりで、だからこそ自然に親友なのだと思っていたが前世の知識が蘇ってからはソルのその些細な反応も気になってしまう。

「違った?ずっと一緒だし、気軽に話す事を許してくれてるでしょ」

「違わ、ないけど……」


(何か間違えた?王家との仲は今まで通り良好がいいんだけど)


ソルは珍しく、不安げに瞳を揺らしたフリアが自分の真意を図りかねている事に気付いた。

(こんな顔をさせたいんじゃないだろう)

恋愛的な面ではかなり鈍感なフリアにゆっくり伝えて行くと心に決めていた事を思い出して、頭を緩く左右に振って「何でもないよ」と微笑んだ。


「フリアに一番近いのは俺って事で間違いないからいいや」

「……?変な人ね。ねぇ例の編入生には会った?」

「フリアと同じ二年の?聖女?」

「ええ、確か……」

「リエラだよ、良い子だ。きっとフリアも気に入るよ」

(あんまり関わらない方がいいんだけど……知っておいた方がいいわね)

「そう、また今度話してみるわ」

「ああ、そんな事より!フリアの好きなラズベリー風味の菓子を作らせたんだ、あの辺だよ」



嬉しそうにそう言うソルはまるで子供のようだ。

いくらディザスターといえど、王太子が一令嬢の為にオードブルのメニューを変更させるなんて聞いたことがない。


それでもソルはいつも、昔からなのだからもう慣れてしまったのだろうフリアはゆるく頷いて「楽しみ」と目を細めて笑った。


(可愛い……っこの顔が見たかったんだ)


彼女の好物は、彼女自身が有名な事もあって有名だ。

それに加えてソルの仕業か、明らかにディザスターの、フリアを思わせる色使いで飾られたテーブルに誰も手をつけられないでいるようだった。


「ソル、やり過ぎよ」

「どうしてもフリアに一番に食べて欲しかったんだ」

「……はぁ、ありがとう」


ホワイトチョコとラズベリーで作られた生チョコレートを一つ摘んでフリアに差し出したソル、さも自然にそのまま口に含んだフリアに周りは黄色い声をあげて二人の関係を噂した。



「んー、美味しっ」

「ーっ、だろう?好きだと思って取り寄せたんだ」

「本当にありがとう、ソル!」



「「フリア」」

「ファル兄さん、ベリアル兄さん」

「だめでしょ、誤解される」

「殿下といえど余り気を許すな?」


「ファルズフ、ベリアル……用は済んだのか?」

「「あぁ、陛下のお望みどおりだよ」」

「父上の?……あぁ成る程」

(やけに素直にフリアを置いて行ったと思えばか)


ベリアルの袖口についた返り血のようなものを見て納得する。


耳元でファルズフが「狙われてたのは殿下だよ」って言うからゾクリとした。刺客にではない、仕事を微塵も感じさせなかった二人にだ。

フリアを置いて行ったのは、フリアの為だけではなかった。

(俺の為……?)

自分の軟弱さに嫌気がさした。

決して弱いわけではないが、この三人には敵わないのだ。


「俺がもっと強くなれたら、フリアが欲しい」


「「無理だと思うよ~」」

二人はラズベリーに囲まれて幸せそうな妹をみて愛おしげに目を細めた。






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