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グランツ国の災害

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この広く豊かな国、グランツ国で「災害」と呼ばれている彼らは今日もまた嵐の渦中に居る。


ディザスター公爵家は王家の裏の顔とも呼ばれており、両家は切っても切れない縁で繋がっている。そんなディザスター公爵家はたったの三人、それはそれは美しい兄妹が居るだけだ。


双子の兄のファルズフ、弟のベリアル、そして二人の妹であるフリアだ。


フリアは目の前の惨劇に震える訳でも、泣く訳でもなく困った様子で腕を組んで見つめているだけ。


ついさっきまで執拗に言い寄っていた、空き部屋にフリアを連れ込もうとわざわざお酒にクスリまで入れて準備してきたマヌケな男に跨って「残念だったねえ」と呑気に笑うファルズフと、魔法で部屋の外との空間を分離させるベリアルの目は完璧に据わっている。


「ファル兄、ベリアル兄……もう足が折れているわ」

「ん?俺達の妹に触れて足だけじゃ安いよね、ベリアル」

「未遂だし、私はもういいけど……」

「兄さん、魔法じゃなくて態々素手でヤるなんて汚い」

「え?この骨の潰れる音が良くない?」

「二人とも、もう帰ろう?」


物腰の柔らかいゆったりとした口調で怖い事を言う上の兄の言葉に、いかにも悪い顔をして「あーじゃあ死ぬ?」ってもう涙でぐちゃぐちゃになった男の頬をペチペチ叩いて聞いたベリアルの「じゃあ」が一体どういう意味なのか分からないなと考えるフリアの手首はさっき握られたせいで赤くなっていた。


さすが双子というべきか、息ぴったりでもう本当に死んじゃうっていう寸前の所謂半殺しの男を見て「「だっさ」」と笑った。


見て分かる通り、二人の妹への愛情は重すぎる。


ずっとそうだったと言う理由でフリアもまた受け入れているから、この三人に倫理や常識なんてものは存在しない。


「ごめんね」と言ってきっともう意味がないだろうハンカチを置いてやるフリアは優しい女の子に見えるが二人に育てられたのだから彼女もまた良識とはかけ離れている。



ディザスターにそれを指摘する者は誰一人として居ない。

王家でさえもだ。ディザスターが良識など持ってしまえば国の裏の顔は担えない。まともでは居られないのが普通なのだ。

彼等はずっとそう言う一族だった。ただこの二人が異常すぎるだけで。


部下に「これ片付けといて、治癒はある程度でいいよ」って冷たく言ったベリアルはまだ優しい方で「捨てとけば?」って可愛く首を傾げるファルズフは誰もが認めるサイコパスだろう。



「俺達は破壊に偏ってるから治してやれないけど……痛くなかったか?」

「ごめんね、兄さん達が席を外したからだね」


ベリアルとファルが心配そうにフリアの手首を見て顔を歪めた。
こう見ると二人はただの妹思いの兄にしか見えない。


「大丈夫、主催者に申し訳ないから穏便に済ませようと思っただけなの」

そう言ってへらりと笑ったフリアの膝と肩に腕を回して抱き上げたベリアルをフリアが不思議そうに見上げると「帰るよ」と微笑んだファルズフの表情に違和感を感じた。


「フリアは優しすぎるんだよ」

「何度言ったら分かるんだ、警戒心を持てよ」


そう言った二人の兄が怒っているのだと気付いた時にはもう手遅れで逃げられそうになかった。


魔法を使えば邸には一瞬で着いた。

ベリアルの部屋の大きすぎるベッドに乱暴に置かれたフリアは今からされるだろう兄達の狂愛ともいえる「お仕置き」にぎゅっと目を瞑った。


「フリア、いつも言ってるだろ?」

「ごめんなさい……」

「俺達以外に触れさせちゃだめだよ」

「お前は強いんだから、触れた瞬間消せ」

「それじゃ私、殺人犯になっちゃうよ……」



「うーん、とにかくお仕置きだね」って同じ紫色の瞳がギラリと光って形のいい唇がフリアの言葉を塞いだ。


「あ、兄さんばっかり」

そう言ってフリアの首筋にかかるベリアルの息が擽ったいと思うと同時に感じる首筋のチクリとした感覚。


ファルズフの舌が口内を愛撫するようになぞって、フリアの舌を上手く絡め取る。背中がぞくりとしてその強引でありながらも愛情の感じられる深いキスにただ抵抗できずに身を委ねた。


「んっ…は、ファルにぃさ……っ」


「あー……フリアあんまり可愛くしないで」


そう言ってフリアの舌を吸い上げたファルズフに身体中の力が抜けてぞわぞわとした感覚に身を震わせた。

急に涼しくなってドレスが脱がされたと分かるとベリアルの温かい舌が自らの胸の頂を捏ねたり、吸ったりと弄ばれその手はもう既に潤っている割れ目に長い指が這った。

すっかりと兄達に教え込まれた身体はもう彼等から与えられる快感を期待しているかのようで、赤く腫れ上がって主張する花芯をベリアルがぬるぬると塗りつけるように潰すと身体をのけ反らせた。


それからはもう何度も「ごめんなさい」と「兄さん達だけ愛してる」と二人に数えきれないほど果てさせされるとフリアは意識を飛ばした。

「兄さんが何度もスるから」

「可愛すぎて、俺達のだってちゃんと印付けとかないと」

「ま、俺も兄さんの事言えないか」


そう言って二人は大切そうに抱えたフリアを綺麗にすると部屋に寝かせる。
いつも通り恥ずかしそうに「おはよう」と起きてくるフリアを想像して朝が楽しみだった。



フリアは不思議な感覚だった。
プツリと途切れた筈の意識、目を覚ますと突然流れてくる知らない国、風景、名前、未来の兄達……


「小説?ひろいんって何……」


覚めていく頭で突然詰め込まれた知識を必死で呑み込もうとした。


「や、だ……兄さん達が死んじゃうなんて」


たまに怖い二人だけど、フリアにとってはたった二人の兄で唯一の家族だ。
大好きで、大好きで仕方ないファルズフとベリアルが聖女を好きになって死んでしまうだなんて受け入れられない。


「わたしが……守らなきゃ」


これはきっと前世の記憶だと理解した時にはもう前世の自分の名前や容姿は思い出せなかった。











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