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終わりは突然に、

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「なッ!どういう事だジェレミア!お前達、さっさと剣をどけろ!」



「できません陛下。陛下には嫌疑がかけられております」




真っ青になる皇后を支える心配そうなシエラ。



官僚達をまとめ上げて、皇帝に睨みを聞かせるブノエルン伯爵。



皇宮の騎士達すらも憧れ一目を置くマッケンゼン侯爵こと、リヒトはジェレミアを支持するように彼の周りを固めている。




「父上……尊敬していた貴方が自らの国民を誘拐し、好みの者は奴隷に、それ以外のものは売買しお金に替えていただなんて、今も信じられません」




「頼んだぞ」と皇帝の言葉の意を汲めなかった訳ではなかった。


はなからジェレミアは皇帝をするつもりだったのだ。


愛はなくともまだ、夫の力が必要な皇后は焦った様子で猫撫で声でジェレミアに下手くそな作り笑いで言う。




「ジ、ジェレミア?お父様を離してあげて?」





「いえ……セリアド侯爵の調査で浮上した背後に居る人物は全て父上でした。セリアド侯爵も陛下の命で行ったと自白しています」


「ジェレミア!お前を信じてはずだ!!」



「陛下…….あぁもうおしまいよっ」



「お義母さま……どうかお気を確かに……」




「シエラ!あなたは黙ってなさい!!!!ジェレミア、陛下にもしもの時があった時の権限は私にあるのよ、早く言う事を聞きなさい!」



シエラを突き飛ばした皇后を感情の読み取れない瞳で見てから、少し考えてポツリと話し始めるジェレミア。




「それは……出来かねます、母上。貴女とセリアド侯爵との不貞が明らかになっている以上、国を任せる事はできません」




「なッ!?それもセリアドが!?」




「はい、取引をしました。彼の命と真実を、なので証拠も揃っていますよ」




「……まぁ!お義母さま!なんてことなの!!!」



シエラがわざとショックを受けたようにふらつくと、ジェレミアが手を差し伸べ「姉様はこちらに」とふわりと微笑む。



「ジェレミア…….私よりその子を選ぶのね?」



「父上も、母上にも……尊敬する家族に裏切られた僕の……」.







そう言って極上の笑顔を見せたジェレミアの表情はたしかに、いつもの甘く優しいジェレミアの皇太子の笑顔だったが、



皇后はゾクリと背中を何かが走ったような気がした。



まるでと言ったようにも聞こえたのだ。






「皇后陛下…‥.今この城の者達と多くの貴族達はジェレミア殿下を支持しております」



リヒトが落ち着いた様子で言うと、今度は金切り声を上げて叫ぶ皇后に全員が顔を顰める。



「何を言っているか分かっているの……立派な反逆なのよっ」



「ええ、母上。そうでしょうね。ですが今や父上は罪人、母上も……皇族の不貞は立派な罪だとお忘れですか?ねぇリヒト?」




「はい、民意はすでに両陛下を見放しておりますので。これだけの貴族達のご支持があればジェレミア殿下にとしての不足はないかと」




ジェレミアとリヒトが決して固い絆で結ばれた訳でもなかった。
けれども、国に対する理想や貴族達をまとめ派閥間で過激化する争いを抑えたいと考える政治的意見が一致したのだ。



それこそ、シエラがジェレミアを知ればリヒトは必ず彼に付くと考えていた理由でもあった。


ブノエルン伯爵については、セリアドを政治から排除し皇帝の件以外でも人身売買を行っていたセリアドを罰する事が目的だったので、今回彼が世話をする孤児達の少女達を助けた恩で、シエラの予想どおり貴族派の者達をまとめ上げ、ジェレミアの思想に共感を持たせてまとめ上げた。




そして、かつてから前皇后へと執着する夫への当てつけで何度も身体を重ねていたセリアド侯爵との不貞が公になった皇后はもう殆どの支持を無くしたと言っても過言でもないだろう。




男性皇族の愛妾や、側妃が寛大なのに対して子を産む身体を持つ女性皇族への不貞に関しては厳格である。


皇后は顔を白くさせて、ばたりと床に倒れる寸前で護衛騎士に受け止められた。





「では、後日正式な裁判で会いましょう父上、母上。行こう……姉上」



「……分かったわジェレミー」






「父上と母上は別々の宮で謹慎を。裁判がおわるまでは宮から出られませんが不自由はないように計らいますので、ご安心を」




たった数日だった。



シエラからのヒントで、動き出したジェレミアがパーティーで見事セリアド侯爵を釣り上げたあの日から、たったの数日でここまで事を進めたのだ。



勿論、前世でのジェレミアの頭脳であり影だったシエラが居ての事であったがそれでも彼はやはり前世同様、皇帝としての才能を見せつけた。



(ジェレミーとの関係も良好のまま、皇帝になってもきっと大丈夫よね?けれど過去よりも早く進んでいる時間は止められないわ、いざとなれば……)





「シエラ皇女、大丈夫ですか?」


「……リヒト。大丈夫よありがとう」



相変わらずどこかぎこちない二人だったがそれでもジェレミアにとって他の男がシエラに触れることは気に入らないことだった。



「リヒト、ご褒美はあげないつもりだけど」



「褒美にはなりません殿下、すでに私の婚約者ですので」




「「……」」



まるで取り合っているようにも感じる二人に戸惑うシエラは「まさか」と心の中で鼻で笑ってから「ブノエルン伯爵が待っているはずよ」と未だ睨み合う二人を急かした。











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