悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

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安全な場所、マッケンゼン公爵邸

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馬車を暫く走らせると、マッケンゼン公爵邸へはそう時間がかからずに着いた。


戸惑うシエラをエスコートして、応接室に通すとやっと落ち着いた様子でシエラに向き合って「何か質問が?」と僅かに首を傾げた。




「安全な場所というのは、貴方の屋敷だったのね。」



(でも確かにここなら、ジェレミーの目も耳も届かない。)





「馬車に乗ったことを後悔していますか?」



リヒトは珍しく、まるで子犬のよつに不安げな表情でシエラら見つめる。



(なんだか今日の公爵は可愛く感じるわね…。)


「いいえ、貴方の言った通り。ここは安全でしょう。」



「それなら、良かった。ところで…なぜ皇女殿下には見張りが?」



「それは…、ジェレミーは少し心配性なの…。」


「それにしても些か過保護すぎるような気がしますが。」



「ええ、私もそう思うわ。もしくは、貴方もご存知の通り…のかもしれないわね。」



リヒトは軽く目を見開き、「正気か?」と今すぐに問いたい気持ちに駆られたがぐっと堪えた。



「はぁ…どうやら貴女はかなり鈍いようですね。」



「どう言う意味かしら?」


「信用していないのは貴女ではなく、私のような…そうですね、貴女以外の周りの者達を信用していないのでしょう。」


「……。」



シエラはその意味がわからず数秒考えこんだ後に、美しく微笑んで言った。




「そう…良かった。ジェレミーは姉として私を大切にしてくれているつもりだったのね…。見張りは、護衛を兼ねてかしら、」



(姉として、ならいいのだが…。)



「いつも、スキンシップを?」



「…あ、あの時は見苦しいものを見せてごめんなさい…。そうね、あれはきっとジェレミーの悪ふざけだけれど、姉弟として愛情表現くらいなら受けることがあるわ。」



「姉弟の愛情表現?」


「ええ。貴方はひとりだったわね…。」


「どこまでが、姉弟に許される愛情表現なのでしょう。俺は一人なので知らないのですが…。」




リヒトは探るつもりで、そう聞いた。


近頃少し話すようになって知った事は、シエラは世間知らずの癖に計算高く捻くれ者だとばかり思っていたが、



案外素直で、世間知らずではあるが傲慢でも捻くれてもいない。


そして何より、計算高くもないのだ。


聡明ではあるが、純粋でまだ少女のような一面をも持っていた。




(ジェレミア殿下であれば充分シエラ皇女を言いくるめられるだろう)



「え、…それは、ご存知の通り家族として接してくれる者がジェレミーしかおらず、私もよく分かりませんが…」


かあぁっと顔を赤くして、伏せ目がちに言ったシエラの表情はとても煽情的だと感じたが、やはりその反応に違和感を感じた。



「では、そのジェレミア殿下とはどのように?」


「み、皆がするのと同じ事よ。変わった事はしないわ。何故そんな事を聞くの?」


「いえ、いくら姉弟とは言え、指輪を落としたからとあのようにドレスの中に手を入れて身体を撫でたりはしません。」


「….?」



「後は…キスをしたり、一緒に寝たり…といった所でしょうか?」



「ええ、皆がそうしていると聞いたわ。」


平然と落ち着いた様子でそう言ったシエラの反応に、リヒトは眉を顰めた。



先程のシエラの反応を見る限り、恥じらいを感じたが今は平然としている。


と、なると….


(もっと、それ以上…という事か?)


リヒトは何故か全身が怒りで熱くなるのを感じた。


解消を申し立てられているが、解消をするつもりはなくどちらにせよ今は自らの婚約者である。


そしてもう、認めざるを得ない。


(俺は…、シエラ皇女が好きなのか。)



そして、ジェレミアとシエラの血縁関係がない事も勿論知っているのでただ姉を慕っての事だとは考え辛かった。

その出生から肩身の狭い思いをして来た筈のシエラは今の所人生の殆どを皇宮で過ごしている。簡単に言うとのだ。


全く外を知らない、世間知らずのシエラにをいかにも当たり前に強要しているジェレミアに怒りが込み上げてきた。



「マッケンゼン公爵….、怒っているの?」


控えめにそう聞いたシエラを抱き上げて、ソファにそっと座らせると優しく、務めて優しく抱きしめた。




「怒っていません。ですが、貴女は知らなすぎる….。」




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