悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

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シエラの秘密の事業計画

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あれからは気まずいのと怖いのとで、ジェレミアと顔を合わせないようにしていたし、反省しているのかジェレミアは訪ねてきてもあっさりと引き下がり、来る回数も少なかった。

シエラは今がチャンスだと感じて、近頃力を入れている事業と投資を確かなものにする為に本格的に行動することにした。

そして、一番身近で唯一の協力者リンゼイと共に今は馬車に揺られている。

「皇女殿下、皇太子殿下側からの監視はそろそろ撒きますか？」

「いえ、しょっちゅう撒かれると怪しまれるし罰を受けるでしょうから…あえて表向きは安全な場所へと向かうわ。」

「なるほど！…さすが皇女殿下です！」

（スパイである使用人にまでに気配りされるなんて、やはり皇女殿下はお優しいわ…。）

シエラが指定したのは、近頃人気のお店、「ウェヌス」であった。

「ウェヌスなら安全に会議が出来るわ。」

何故彼女がそう言い切ったのかと言うと、ウェヌスのオーナーは彼女であるからだ。

ウェヌスは、洗練された美しさのあるデザインの室内着用ドレスや、夜会や舞踏会に出るようなドレスまで様々なラインが揃えられているお店だが、メインは決してドレスではない。

香水や、肌に潤いを持たせる為の化粧水、体用に作られた香油を混ぜたよくのびるクリームは高値ではあるが美肌になるのだとと一番の人気であった。

白粉は、肌の色が様々なように沢山の種類の色が作られており、口紅や頬紅などもそうであった。

沢山の女性を美しくする為のものが揃えられたウェヌスは最近オープンしたにも関わらず、今や国一番の人気店となっていた。

そしてその店の奥、とあるフィッティングルームの鏡の奥にそれ程大きくはないが事務所兼隠れ家となっている場所があり、監視の目からはドレスを仕立てに行っているようにしか見えないのだ。

外側隠し通路からも出入りできるようになっているので、秘密の来客はここからスパイの目を盗む事ができるのだ。

「皇女殿下、ようこそお越し下さいました！」

「ミンリィ、久しぶりね。」

「はい、お久しゅう御座います。姉は粗相をしておりませんか？」

「ちょっとっ、ミンリィ！」

「ふふ、大丈夫よ。とても良くやってくれているわ。」

「勿体ないお言葉で御座います。それならば安心致しました。」

「ほんとに、勿体なきお言葉で御座いますっ。」

ミンリィはリンゼイの妹であるが、その大人びた様子はどうみても姉に見えるのだ。

そして、リンゼイの紹介により店を任せている。

数少ない、シエラの信用できる人物の内の一人であった。

「内情を知る仲間がもう少しいるわね…それは私が何とかするわ。」

「はい。従業員達には皇女殿下がオーナーである事はきちんと伏せております。」

「皇宮での皇女殿下の評判も少しずつ変わって来ております。何より皇女殿下の悪口がジェレミア殿下の御耳に入ると処刑されるそうで…」

「ジェレミーが？」

（前世では執着はしても、他人から何を言われようが興味もなかったのに。）

「はい。間違いありません。それと、…ミンリィ」

「皇女殿下、これを。」

「ブノエルン伯爵？何故彼が…。」

ブノエルンは皇宮派の貴族であり、その中でも一二を争う有権者である。

「最近、有力だが貧しい企業家や芸術家、家門に無償で投資する謎の投資家が気になるのでしょうか…伯爵は人格者だと窺いますので、意図を探って居るのかもしれません。」

「そう…。」

（けれど、前世で彼は私の策略の所為で…）

　

「うちも、貴族とは名ばかりの平民と変わらぬ貧乏な家門ですが…父亡き後、私に皇宮の仕事を口添えして下さったのも伯爵様ですので。」

「まぁ！そうだったの！？そうだと知らずに…」

（間接的にとはいえ前世で彼を殺してしまっていたのね….）

「伯爵に会いましょう。」

「会いに行けばジェレミア殿下の目に触れますが…」

「そうね、ここに招きましょう。こちらから迎えを寄越して裏口からこの事務所へ。」

「はい。ではすぐに返事を…」

「すぐに書くわ。ミンリィ、届けておいてくれる？」

「はい。」

「では、リンゼイはその日までに準備を整える手伝いをお願いするわ。」

（伯爵、貴方は一体私にとって吉となるの、凶となるの？）

どちらに転ぶとしても、今度は貴方の命を奪ったりしないわ。

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