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姉の威厳と弟の支配
しおりを挟む不服そうなマッケンゼンを背後に感じながら僕は姉様の腕を少し強引に引いて慣れた皇宮の廊下を早足で歩く。
部屋に入ると、乱暴に姉様をソファに投げて見下ろす。
前まではこの時点でガクガクと震えて許しを乞うはずの姉様は、伏せ目がちに僕の言葉を待っているようだった。
「姉様。」
「なに、ジェレミー。」
「なんでリヒトはまだ姉様に付き纏ってるの。」
「解消するまでに時間が欲しいと言われたの。ただそれだけよ。」
時間をかけて何になると言うのか、リヒトの考えている事が分からなかったが、姉様も全てを僕に話しているのではないのだと感じ苛立つ。
「僕以外につけ込まれるなんて、お仕置きが必要だね。」
「どうして、つけ込まれていると思うの?」
「姉様は、気が弱いからね。僕が守ってあげないと。」
「ジェレミー、私も成長しているのよ。もう泣いてばかりのシエラでは無いわ。それに…」
「私がジェレミーを大切なように、貴方にとって私は皇帝となる為に大切な人材でしょう。」
「…だから何だって言いたいの?」
「こんなやり方はだめよ。ちゃんとお互いを尊重しないと。」
屈しない瞳に、僕の心はざわめきだった。
姉様の美しい強い瞳にゾクゾクしたが、僕にだけは屈していて欲しいと思う焦りも同時に沸き上がってきた。
「それでも、姉様は僕の為に存在するんだ。」
「そうだとしても、つけ込まれたとは思っていないわよジェレミー。」
「!」
「貴方は私の唯一の家族なのだから。」
そう言って両手を広げた彼女にもうこれ以上敵わないのだと諦めた。
(力尽くで姉様を手に入れる事はできるが、僕を見てくれている姉様をそんな風に手に入れなくて良い。)
もう、この瞬間はどちらが優位かなんてどうでも良かった。
今はただ姉様を自分だけが独占したかった。
ジェレミアは崩れるようにゆっくり膝をついて、シエラに抱きしめられるとシエラの胸元に、首に、頬に、瞼に、触れるだけのキスを沢山した。
甘えるようにたたシエラの温もりを求めた。
「ジェレミー、それ以上はだめよ…っ」
「世のキョウダイは皆こうしてるよ。スキンシップだよ。」
「そうなの?」
「ああ、貴族達もそうだし、市井でもそうだよ。皆恥ずかしいから表には出さないだけでキスなんて当たり前だよ。」
皇宮の外といえば、社交会やお茶会しか知らない姉様はあっさりと騙される。
僕が何をしても、愛情表現だよと言えば真っ赤な顔で耐えるように大人しくなるのだ。
「それとも、姉様は僕と血が繋がっていないから出来ない…??」
(ジェレミー、やっぱり寂しかったのね…)
「いいえ。私こそ無知で御免なさい…。勉強やマナーとは違って愛情表現や人との付き合いに慣れていないの。」
「良いんだ。姉様…」
「…っ、ジェレミー。」
「シエラ姉様。もっと僕を受け止めて。」
そう言って貪るように姉様の至る所に触れるだけのキスをし、耳たぶを甘噛みすると姉様は声を出さないように堪えていた。
(いつまで持つかなぁ?)
顎を上げさせて、唇を奪えば困惑したように目を泳がせる。
シエラがいくら二度目の人生だとしても、前世で知らぬ物は知らないままであり、前世で当たり前だとしていた行為はやはり、
ジェレミアの最もらしい言い方で言いくるめられてまた、当たり前とされてしまうのだった。
前世でも、誰とも身体を重ねた事もなければジェレミア以外とのスキンシップは一線を越えない仕事以外では経験がないのだ。
もちろん婚約者であるリヒトには嫌われていたので無い。
ジェレミアが、ニヤリと口元を歪ませたのに気づく余裕も無くシエラはギュッと目を瞑って耐えた。
「姉様、姉様っ…僕だけの姉様っ」
「…ジェレミー、もう、」
「だめ、ほら僕ばかりが伝えてるじゃないか。」
「えっ…」
急に顔面蒼白になった姉様を見てニヤリと口元が緩みそうになるのを堪える。
大きくなった僕自身にそっと手を掴んで誘導すると、ソレがどこなのかは分かっているらしく緊張したように硬直した。
「ジェレミー、前も言ったけどそんな事をしなくても…」
「みんな当たり前にしていることが、姉様には出来ないの?僕への愛情や忠誠はそんなものだって事?」
「…っ、ジェレミーでもダメな気がするわ。」
「証明して。」
「ジェレミーっ!」
「早く。それとも姉様は僕に証明できないの?」
(今殺されては困るし、信用を失う訳にはいかない。…皆がしている事だというのなら、仕方ないのよね…?)
シエラが皇宮にいる間、ジェレミア以外の敵から命を守るには絶対的にジェレミアの力が必要だった。
(私自身が力をつけると、逃げ辛くなる…。)
ジェレミアの機嫌を損ねる事はシエラにとって自殺行為であった。
何故流れたのかは分からないが、一筋涙を流してからジェレミアの言う通りに触れて、ベルトを外した。
今度はジェレミアの前に跪いたのはシエラであった。
「さあ、姉様。ここにキス上手に出来たら信じてあげるよ。」
そう言って目の前に差し出されたモノは少しグロテスクで驚愕したが、動じては舐められてしまうとシエラはぎゅっと瞳を閉じて堪えた。
(何故だかとても屈辱的な気分だわ…。)
(ああ、可愛い姉様。何も知らない…!)
震えながらそっと先端にキスをすると、ジェレミアは恍惚とした表情で天井を仰いだ。
シエラは何故か屈辱感と羞恥に苛まれ、ただ静かに涙を流しながら口内を侵すソレに耐えるのであった。
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