此れ以上、甘やかさないで!

abang

文字の大きさ
上 下
27 / 33

過保護な幼馴染はライバル

しおりを挟む


「愛慈、すまんな。玲が帰ってきよったんやが….どっから聞いたんか、星華の一件でえらい剣幕でお前探しとるわ。天音ん事になったらアイツも盲目やからなぁ…まあ一応気ぃつけぇ。」



「はい、親父…態々すみません。あの今日は…、」



「あー、ええ。野暮な事ゆうなや、お前にやってもええって思てるゆーたやろ、ただ天音の気持ちだけ大事にしたってくれ。」



「はい。…あの、絶対幸せにします。挨拶はまた改めて…」



「勝手にせぇ、切るぞ。」


「はい。」






電話を切ると、不安げに見つめる天音と目が合う。



(そっか….お嬢は玲と幼馴染だもんな。でも今日は…)




「なんでもないよ。ゆっくりして来ていいって…。」



「良かったぁ!じゃあ愛慈、今日は久しぶりに二人で眠れるのね。」



「…っ!はい。」


「今日は、我慢しないで?もう、婚約者なのよ、」



「お嬢…っ、それは反則、」


真っ赤になっている癖に、懸命に伝える天音は愛してると訴えかけるような瞳で愛慈を見つめていた。


「……部屋sweetを、とってあります。」



普通の女ならば、スイートという所に反応する。

SNSなんてものに載せる写真を撮りまくり、挙げ句の果てには乾杯するてもとやバスローブ姿までを晒すのだ。


勿論、自分だってホテルの公式アカウントや任されている店の営業用にアカウントがあるのだが、


俺は、勝手なもので今日みたいな特別な日には、自分に集中してほしいと思ってしまう。

……といっても好きな人とこんなシチュエーションになるのは初めてなのだが、寝た女は皆過ごす時間よりもいい部屋を楽しみにしていた。




が、お嬢は違う。


部屋の事など興味もないのか、全く耳に入っておらず一人で赤くなったり青くなったり百面相をする様子はおおよそ、

こういう場合はどうしたらいいのだろうと妄想しては失敗してのシミュレーションを繰り返しているのだろう。




(お嬢と居られるだけで幸せなのに、婚約者なんて言葉にすごく喜んで婚約者らしい振る舞いを考えているお嬢が可愛くて言ってやれない。)




「あ、あの愛慈?婚約者って一体どうすればいいの?」



案の定、最後は俺になんでも聞いちゃうお嬢。


俺が居ないとダメで、結局全部最後には「愛慈」って俺の名を呼ぶ。


そう育てたのは俺だし、勿論それが俺の至福。


「いつも通りでいいんですよ、俺はお嬢のありのままを好きになったんだから。」



「…私も、愛慈が好き。どんな愛慈だって好きよ。」





嬉しそうに笑った愛慈の笑顔があまりにも素直で、天音は好きが溢れた。



(心の中から、溢れて、溢れて、もう身体中が愛慈でいっぱいだよ。)




部屋に入るなり、深く口付けた愛慈に息があがりながらも付いていく天音は唇が離れると名残惜しそうにまた愛慈の唇に触れるだけのキスをする。



「…っ、お嬢。後で…、まずは乾杯から。」


「……うん。」



「お嬢、」

天音は愛慈の下唇を自らの唇で柔らかく挟んだり、触れるだけのキスを繰り返しては甘えたように愛慈の首元や、耳にキスを落としてぎゅっと愛慈の胸にもたれかかる。


「離れたく無いなぁ。」


「…じゃあ、俺が運んであげます。」


「きゃっ、愛慈くすぐったいよ。」



結局ソファに座って並んで乾杯する二人は、夜景よりもお互いしか目に入らぬようで、


他愛もない話から、将来の話まで沢山話した。 




そして、甘い一夜を過ごした。


愛慈は長年の恋が成就したので、起きたら夢なのでは?と不安になりなかなか寝付けずに居たが朝起きて隣で寝息を立てる天音になんとも言えない幸せを感じたのだった。


だから忘れて居た。



天音の幼馴染であり、最大のライバルである



日比谷 玲 の存在を。






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

虚弱なヤクザの駆け込み寺

菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。 「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」 「脅してる場合ですか?」 ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。 ※なろう、カクヨムでも投稿

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤクザと私と。~養子じゃなく嫁でした

瀬名。
恋愛
大学1年生の冬。母子家庭の私は、母に逃げられました。 家も取り押さえられ、帰る場所もない。 まず、借金返済をしてないから、私も逃げないとやばい。 …そんな時、借金取りにきた私を買ってくれたのは。 ヤクザの若頭でした。 *この話はフィクションです 現実ではあり得ませんが、物語の過程としてむちゃくちゃしてます ツッコミたくてイラつく人はお帰りください またこの話を鵜呑みにする読者がいたとしても私は一切の責任を負いませんのでご了承ください*

俺様系和服社長の家庭教師になりました。

蝶野ともえ
恋愛
一葉 翠(いつは すい)は、とある高級ブランドの店員。  ある日、常連である和服のイケメン社長に接客を指名されてしまう。  冷泉 色 (れいぜん しき) 高級和食店や呉服屋を国内に展開する大手企業の社長。普段は人当たりが良いが、オフや自分の会社に戻ると一気に俺様になる。  「君に一目惚れした。バックではなく、おまえ自身と取引をさせろ。」  それから気づくと色の家庭教師になることに!?  期間限定の生徒と先生の関係から、お互いに気持ちが変わっていって、、、  俺様社長に翻弄される日々がスタートした。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

処理中です...