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過保護な幼馴染はライバル
しおりを挟む「愛慈、すまんな。玲が帰ってきよったんやが….どっから聞いたんか、星華の一件でえらい剣幕でお前探しとるわ。天音ん事になったらアイツも盲目やからなぁ…まあ一応気ぃつけぇ。」
「はい、親父…態々すみません。あの今日は…、」
「あー、ええ。野暮な事ゆうなや、お前にやってもええって思てるゆーたやろ、ただ天音の気持ちだけ大事にしたってくれ。」
「はい。…あの、絶対幸せにします。挨拶はまた改めて…」
「勝手にせぇ、切るぞ。」
「はい。」
電話を切ると、不安げに見つめる天音と目が合う。
(そっか….お嬢は玲と幼馴染だもんな。でも今日は…)
「なんでもないよ。ゆっくりして来ていいって…。」
「良かったぁ!じゃあ愛慈、今日は久しぶりに二人で眠れるのね。」
「…っ!はい。」
「今日は、我慢しないで?もう、婚約者なのよ、」
「お嬢…っ、それは反則、」
真っ赤になっている癖に、懸命に伝える天音は愛してると訴えかけるような瞳で愛慈を見つめていた。
「……部屋を、とってあります。」
普通の女ならば、スイートという所に反応する。
SNSなんてものに載せる写真を撮りまくり、挙げ句の果てには乾杯するてもとやバスローブ姿までを晒すのだ。
勿論、自分だってホテルの公式アカウントや任されている店の営業用にアカウントがあるのだが、
俺は、勝手なもので今日みたいな特別な日には、自分に集中してほしいと思ってしまう。
……といっても好きな人とこんなシチュエーションになるのは初めてなのだが、寝た女は皆過ごす時間よりもいい部屋を楽しみにしていた。
が、お嬢は違う。
部屋の事など興味もないのか、全く耳に入っておらず一人で赤くなったり青くなったり百面相をする様子はおおよそ、
こういう場合はどうしたらいいのだろうと妄想しては失敗してのシミュレーションを繰り返しているのだろう。
(お嬢と居られるだけで幸せなのに、婚約者なんて言葉にすごく喜んで婚約者らしい振る舞いを考えているお嬢が可愛くて言ってやれない。)
「あ、あの愛慈?婚約者って一体どうすればいいの?」
案の定、最後は俺になんでも聞いちゃうお嬢。
俺が居ないとダメで、結局全部最後には「愛慈」って俺の名を呼ぶ。
そう育てたのは俺だし、勿論それが俺の至福。
「いつも通りでいいんですよ、俺はお嬢のありのままを好きになったんだから。」
「…私も、愛慈が好き。どんな愛慈だって好きよ。」
嬉しそうに笑った愛慈の笑顔があまりにも素直で、天音は好きが溢れた。
(心の中から、溢れて、溢れて、もう身体中が愛慈でいっぱいだよ。)
部屋に入るなり、深く口付けた愛慈に息があがりながらも付いていく天音は唇が離れると名残惜しそうにまた愛慈の唇に触れるだけのキスをする。
「…っ、お嬢。後で…、まずは乾杯から。」
「……うん。」
「お嬢、」
天音は愛慈の下唇を自らの唇で柔らかく挟んだり、触れるだけのキスを繰り返しては甘えたように愛慈の首元や、耳にキスを落としてぎゅっと愛慈の胸にもたれかかる。
「離れたく無いなぁ。」
「…じゃあ、俺が運んであげます。」
「きゃっ、愛慈くすぐったいよ。」
結局ソファに座って並んで乾杯する二人は、夜景よりもお互いしか目に入らぬようで、
他愛もない話から、将来の話まで沢山話した。
そして、甘い一夜を過ごした。
愛慈は長年の恋が成就したので、起きたら夢なのでは?と不安になりなかなか寝付けずに居たが朝起きて隣で寝息を立てる天音になんとも言えない幸せを感じたのだった。
だから忘れて居た。
天音の幼馴染であり、最大のライバルである
日比谷 玲 の存在を。
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