此れ以上、甘やかさないで!

abang

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愛慈の葛藤と喜び

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そのまま車を走らせて暫く走ると、いま人気の劇団のミュージカルを観に行き、終わると天音はとても感動して愛慈の袖をきゅっと握ったまま何やら一生懸命話していた。


「…ね、とても上手だったね!」


「そうですね、でも…」

(あー、可愛い)


「でも?」


「楽しんでるお嬢みてるのが可愛くて、集中できませんでした。」ニコリ


「…っな、愛慈!からかわないでよ、」


隣を歩く天音が照れてそっぽを向く仕草、赤くなった耳をみつけて満足したように、愛慈も少し照れて笑った。


「すみません、でも本気。」

「あの…愛慈…今日まだ帰んないよね?」


「…え!?いや、あの…晩飯には早いし、じゃあショッピングしましょう。」


ギクリと目を彷徨わせて、言う愛慈の腕を天音は膨れ面で取って、「もっと愛慈とデートしたい。」と言う。


(むり!可愛すぎ!もう、無理。親父、利仁さんすみません……)



「~~っ、買い物行って、晩飯食ったらちゃんと帰りましょうね?」


「うん、ありがとう!今日はずっと愛慈と一緒ね、」


「…~~!行きましょう、」


流石、愛慈はその後も完璧と言える程に天音の好みのお店に案内しては欲しいものを見つけては全部購入者した。

申し訳無さそうに、止める天音にむしろ満足というような恍惚とした顔で天音を制する愛慈に、先程まで彼に見惚れていた店員は思わず、ゾクリと背筋を凍らせて訝しげに愛慈を見ていた。



(この人イケメンだけどさっきから変だわ、ちょっと気持ち悪いほどよね)


一方愛慈の脳内は、天音でいっぱいであった。


(俺が与えたもので、お嬢が出来上がっていくこの快感!)

「お嬢、俺に遠慮しないで?お嬢の為に働いてるんですから。」



「愛慈、でも買いすぎだよ。一生懸命働いたお金だから大切に使って欲しいの。」


「お嬢…っ、」


「ありがとう、愛慈。ご飯は私がご馳走してもいい?」


天音は祖父からのお小遣いもあったが、利仁の会社の役員として手当が支払われており、勿論リモートになるが仕事もしていた。


とはいえ、見習いのようなもので、殆どが書類の処理である。


「お嬢もですよ、大切に使って下さい。俺のはほら…半分はあぶく銭ですから、」


「そんな事ないよ、私はお祖父ちゃんの仕事にだって誇りを持ってるわ。もちろん、愛慈にだって。」



愛慈は嬉しそうに、噛み締めるような表情をして天音の手を握って店を出た。


「…お嬢、何食べたい?」

今すぐ抱きしめたいほどの感情であったが、努めて平静に天音に聴くと、天音は優しく微笑んで、「愛慈の好きなもの、たまには食べたい。」と言った。

愛慈は少し考えて、天音を車にのせると車の外でなにやら電話んかけてから、車に乗りどこかへ向かった。




「わぁ、立派なホテルね!ウチに負けないくらいね、」


「ここの、食事はうまいって有名なんです。」


「そうなの?偵察も兼ねて楽しみ!」


期待通り、豪華かつ美味な食事と丁寧な接客で二人はとても有意義な食事だった。

雰囲気も良く、毎日一緒にいるはずなのに尽きない会話は車の中までも続いていた。


「……。」


「お嬢?急に黙ってどうしたんですか?」



見知った街並み、家にどんどん近付いていくと天音は寂しいような、物足りないような気持ちになった。

もっと、愛慈と2人で居たくて独り占めしていたかったし、人目を気にせず甘えたかった。



「愛慈…帰りたくない。」


「え"っ……こほっ、え?なんて?」


「まだ帰りたくないの、愛慈と居たい。」




(お嬢…これって意味わかって言ってんのか?)


「確認ですけど、意味分かって言ってます?」


「意味も何も、愛慈とただ二人で居たくて。前だって泊まったわ、いいでしょう?」


愛慈は殆ど自分のマンションで寝る事はなく、天音の家にある部屋で寝泊まりするのだが…


最近は確かに、天音を連れてマンションに帰る機会が増えたと思う。別に問題は無いのだが…


「お嬢、俺我慢できないかもしれませんよ?」


「我慢??」

「いや、なんでも……」




「あっ!」


愛慈の返事を待たずに途中で何かに気付いた天音は、真っ赤になって、顔を両手で隠してしまった。


「…ね?お嬢。俺だって男なので…好きな人と居ると尚更。」


「あ…愛慈ならいい。なにすんのかも分かんないんだけど…愛慈になら何されたっていい。一緒に居たい。」





愛慈は心臓を鷲掴みにされたような感覚と、潤んだ目で真っ赤になりながら必死で言う天音の可愛さとで訳がわからなくなって、思わずただ頷いてしまい、天音の喜ぶ姿に訂正する事も出来ずに進路を変えたのであった。



(俺って……、まぁ俺がちゃん耐えられればいいんだよね。)

頑張ろ、と小さくつぶやいた愛慈に小首を傾げて不思議そうに天音は見ただけだった。


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