此れ以上、甘やかさないで!

abang

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天音の憂鬱

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急いでお風呂まで行って、しゃがみ込んた天音は心を落ち着かせるように深呼吸した。

(何かの生理現象なのかな?愛慈も気づいてなかったし…私だけ気にしすぎよね!)



クチューー



自分のソコから聞こえるその音に天音は硬直した。


「な、なにこれ……。」 


もう、ほぼ太ももまで伝ってきているソレに驚いて、急いで洗濯カゴに服を投げ込みシャワーに当たった。


私が変なの?皆よくあることなの?それとも愛慈のせい?

それがどういう意味なのかも分からないまま、天音はただ恥ずかしい気持ちになった。


「とりあえず落ち着こう。愛慈には彼女がいるし、私もきっと初めてのことで驚いただけよね!良くある事かもしれないし!」


考えてても、ない知識からは何も出ないと諦めてお風呂に入って、なるべくいつも通りを心がけた。


「あれ?お嬢、愛慈と一緒じゃねーんですか?」


「へえっ!?愛慈、愛慈ね!ううん、お風呂だったから…ヤマさんは何か用事?」


「いや、そろそろ仕事、出ねぇといけなくてアイツ探してんですけど…こっちにはこれ以上入れねぇんで待ってるんですよ。」


「そうだったの?お風呂の後なら洗濯かも!呼んでくるよ!」


「すんません。お嬢に、こんなこと。」


「ううん、大丈夫だよ!待っててヤマさん!」



パタパターーー

廊下を小走りするお嬢の足音が聞こえる。

(もうちょっと避けられるかと思ったんだけど…)




ーーガチャ



「愛慈、ヤマさんがし……………………!!!!???」


「あ、お嬢すんませんわざわ………ざ。」サッ



愛慈は洗濯機ネットに入れようと掴んだ下着と天音の顔を見比べてサッと後ろに隠した。



ヌルッ

(あ、かなりこれ…)


思わず握ってしまった、手のひらの感覚に一瞬ドキリとしながらも誤解を招かぬように急いで弁解した。




「お嬢!こ、これは洗濯しないといけないからで…」




茹で上がるんじゃないかという程顔を赤くしたお嬢は目を合わせないまま、尋ねてくる。




「いつも、愛慈がしてくれてたの…よね、…」



「へ…?そりゃあお嬢のモノを他の奴に触らせる訳にはいかねーし、男所帯ですからね。」




いつも、当たり前にやっていたし、天音のことなら何でも嬉しかったので、まさか今更こんな展開になるとは思わず、


冷や汗をかきながらなにか悪いものが見つかった子供のようにいう愛慈から天音は下着を急いで奪いとって、洗濯機に放り込んだ。


ヌルッ

ぶわぁぁぁぁ


その感触にまた赤くなり、目を潤ませて、ぎゅっとその手を後ろに隠した。




(愛慈、気付いたかな?変だと思われるよね、今まで洗濯なんて考えた事なかった…恥ずかしい。)





「お嬢、それはネットに入れないとダメです。」



眉を顰めていった愛慈に何となく拍子抜けして、少しだけ安心したが同時にモヤっとした。




(あ…私だけが慌てて馬鹿みたい。愛慈にすれば子どもの頃からずっとだからなんて事ないのね。)



天音は急に自分が情けなくなった。
そら子供に見えても仕方ない。こんな事すら自分でできないのだから。



「あ明日からは自分でするから、やり方を教えてねっ」


「お嬢、」


「ヤマさんが仕事行かないとって言ってたよ、早く行ってきて!私がやっておくから!このボタン押したらいいんだよね?」


「干さないといけませんよ?置いといて…」


「大丈夫!そのくらい出来るから行ってきて!!」





急いで何やら数種類のいい匂いの液体を入れた愛慈を急かして、

慌てて愛慈の背を押してヤマさんの所へ連れて行き、




「二人共、気をつけて行って来てね!」


と、まだ少し赤い顔を逸らして言ったお嬢を見てヤマさんがチラリと愛慈を見て片眉を上げた。



「愛慈、何かしたんじゃねーだろうな。」


一瞬ギクリと肩を震わせたようにも見えたがいつも通りに笑って、


「いや、洗濯してたのが恥ずかしかったんすよ。お嬢も年頃ですからねー」


と、何事も無いようにいう愛慈にあからさまに引いたヤマさんの引き攣った笑いが聞こえた。



「そりゃあお前もうお嬢も子供じゃねんだからよー」



(あーだめだ、あの表情かお可愛いすぎ。けどあんまからかうとほんとに離れていきそうだもんな…でも…)



「洗濯ぐらいで何を…昔は風呂だって一緒だったのに…」ボソ


しっかりと愛慈の呟きをキャッチしたヤマさんが飲んでたコーヒーを吹き出した後、諦めた様に落胆したのを横目に見た愛慈は、


(忙しい人だな、ヤマさんは)

とハンカチを渡しながら車に乗った。




(いや、もうコイツの溺愛ぶりはちょっと怖ぇ。…親父が放っとけって言うから、黙認ということなのか…?)


頭を悩ませるヤマさんの心配は妥当であった。


愛慈の気持ちを知った上で、天音が選ぶなら応援すると、静観の態度を示す祖父・仁之助はまさか娘がここまで浮世離れして居ると知りもしないのであった。


(だけどもう、親父はお嬢次第でコイツにやるつもりだもんなぁ、そうなれば、まぁいいのか?いやダメか?)



見回り中、目の前で夜の女達に囲まれて、胡散臭い笑顔で対応する愛慈を見てため息をついた。



「お前…仕事はちゃんとすんだもんな…ハァ」



「???ヤマさんそろそろ行きますよ。」




(えー愛慈くんもう行くの~?)

(ウチ寄ってってよ~)




うるさい女達の声を背に、ヤマさんはゲッソリとした顔で歩いた。
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