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俺のお嬢
しおりを挟むお嬢に叫ばれ、親父には怒られ、そしてようやくギリギリの時間でお嬢を学校へ送っている。
「お嬢、機嫌直して下さい。」
「やだ、愛慈のヘンタイ!」
「だからそんなんじゃないって…」
(いや本当はもろにそうだけど)
「学校遅れちゃうよ、愛慈。」
「今日はやめときます?」ニコリ
「爽やかに何言ってんの、」
とか言いながら怒っていた事を忘れて自然と機嫌が元に戻るお嬢が可愛くて、くすりと笑ったら太ももをつねられた。
見事に今日もお嬢はなにもできない。
俺好みの、俺が選んだ下着を着けて、服を着て、靴を履いて学校に行く。
朝起きてお嬢の髪に一番に触れるのは俺だし、ひどい時はその無防備な部屋着から出る脚を俺に投げ出して、ボディクリームまで塗ってとねだる始末。
当たり前のように車のドアを開けてやり、乗るとシートベルトをつけてやる。
車道側を歩かせた事はないし、ドアも開けてやるし、椅子も引いてやる。
どんな男でも、きっとお嬢は俺と比べて物足りなくなる。
今は意識されて居ないが、もう18だ。そのうち俺がいいと俺を求めて…くれるといいんだけど。
と、運転しながら煩悩で頭をいっぱいにさせているとお嬢は顔を引き攣らせてこっちを見ていた。
「愛慈、ニヤニヤしてどうしたの?」
「え?いや、なんでもないですよ。」スン
近くのコーヒーショップに寄って甘いのを買ってやると嬉しそうに、愛慈ありがとうと笑うお嬢が可愛くてこれがやめられない。
学校の前で車を止めてとりあえず車に乗らずにお嬢の背を見てると、
スカートにバックスリットが控えめに入った薄いベージュのリブワンピースに無造作に斜めに結んだUVカーディガンですら、彼女にかかれば、凄く可愛く見える。
緩く巻かれた髪は、緩く結ばれており後毛が抜け感を醸し出している。
そんなお嬢を、チラチラと見ては何やらコソコソ仲間内で話している男達を見てイラッとする。
全員が彼女を見ているようにも感じてしまう。
「天音!」
いつもはお嬢なのに、急に名前で呼ばれて驚いたのか、くるりと振り返ったお嬢は立ち止まって首をかしげる。
「ーっ!?」
「天音、忘れ物。」
見せつけるように、お嬢を引き寄せてサッとどうでも良い物をバッグに滑りこませて、顔を近づける。
ーーザワザワ
「えっうそ!カッコ良くない?」
「うそ~藤堂さん彼氏いんだー、」
背後から見るとキスでもしたように見えるので、騒ぎ出したお嬢の背後に内心ほくそ笑んで、ギュッと頭を抱えるように抱きしめて後ろの男共に目線をやって牽制しておく。
「ちょ、ちょっと愛慈?なに、どうしたの?」
意識していると言うよりは、人前なのが恥ずかしいので顔を真っ赤にしているのだが、周りにはそれすらも効果的だった。
(あ、なにこれ。可愛い。行かせたくねえわ)
「いいえ、何でも。お嬢が心配で…。」
我ながら苦しい言い訳かと思ったがすんなり飲み込んだお嬢は少し笑って、
「どうせ迎えにくるくせに、二限だけだよ、今日。」
と、言って俺の胸を押した。
「じゃあ、いってきます!」
「いってらっしゃい。」
ーーーー
「天音、昨日は本当にごめんね?アイツあんな奴だったなんて!有名だったらしいんだけど、愛慈さん怒ってたよね、大丈夫だった?」
天音を見つけるなり駆け寄ってきた咲が、天音の手を取って息を整えてながら、謝ってきた。
「そんな、私こそごめんね?何で場所が分かったのかは知らないんだけど。驚かせちゃったよね、後で大丈夫だった?」
「うん、大丈夫だったよ!
あ、これお釣り……あ!愛慈さん、驚かせちゃう?」
「へ?」
「あげるって言ってたしね、」ニヤリ
咲は愛慈の昨日の怒り方を見てすぐに、ただの世話係としての感情ではないと勘づいてしまっていた。
(愛慈さん、昔からちょっとアレだけど…良い人だし、イケメンだし、何より天音を大切にしてくれそうだしイイよね!)
「買い物、自分でした事無いって言ってたでしょ?」
「うん、いつも勝手に沢山あるから。行ってみたいんだけど…愛慈がついてくるでしょ…。」
ガクリと肩を落とした天音の肩に手をおいて、ニヤリと笑って咲は言った。
「単位、全然大丈夫でしょ。愛慈さん迎えにくるまでに帰ればいいんだし。買い物、行ってみよう!今日は二人でだし安心でしょ?ふふ」
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