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金の両翼の生えた女神
しおりを挟む「みて、またご一緒のようね」
「すごくお似合いだわ……!」
「悔しいけれど、あの空気感が好きなのよねぇ……!」
貴婦人達が熱心に見つめるのはパーティー会場で踊るリベルテとエイヴェリーだ。
何やら楽しげに時折言葉を交わしながら踊る二人は意図せずとも注目の的だった。
高価で度数の高い酒を乾杯し、楽しげに過ごす二人が貴族としての公務で社交会に出ているのに仕事の一環だと思わせないくらいにあまりにも自然体に見えるので見ている周囲までも気が和らぐようだ。
それを良しとしないのが、前回の件でエリシアを言いくるめて邸に置いてこられたもののリベルテに一歩も近づけずにいるカルヴィンだ。
「似合ってないな」
「カル」
「……レビア」
手が届かぬほど遠くにいるリベルテはこれほど眩しいのに、目の前に完璧に模造されたかつてのリベルテが居てやけに霞んで見える。
思わず落胆した声で彼女を呼んでしまったようで、眉尻を少し下げて悲しそうに瞳を揺らしたレビアが見えて焦る。
(違う、リベルテはそんな顔しないーー)
「カル、がっかりしたでしょ……」
「レビア、お前は綺麗だ。自信を持て」
これではレビアを選んだ意味が無い。
カーテンを閉めてテラスに出ると、カルヴィンは乱暴にレビアに口付けて「綺麗だ、まっすぐ立ってろ」と囁いた。
一瞬、瞳を曇らせたレビアはすぐに微笑みを取り戻してカルヴィンの首に両腕を回した。
その時、会場から聞こえる騒めきと黄色い声。
「きゃ~っ、素敵!」
「羨ましいわ!!」
「……レビア、待ってろ」
カーテンをくぐって会場に戻ると、突然の騒ぎに驚いた表情のリベルテと目が合って周りの声で状況はすぐに分かった。
楽しさのあまり、額をつけて微笑みあったリベルテとエイヴェリーに会場は沸いたのだ。
苦笑するエイヴェリーと、何事かと驚くリベルテの様子。
前回の二の舞になってはならないとこの場でかろうじて踏みとどまったが握った拳が痛い。
目が合ったリベルテがカルヴィンから目を逸らすより先に、後ろから何を見ているのかと覗き込んだエイヴェリーが手で目を遮って「キミにはあげない」と口元だけを動かした。
「ーっ、くそ!!!なんなんだアイツは!!」
それにまた会場が沸いて、次こそリベルテがおかしそうに笑ったその笑顔を見て栓が切れた音が鳴る。
「レビア、来い」
「カル……?」
休憩室にねじ込んで、鍵をかけて乱暴に組み敷く。
(リベルテ、リベルテ、リベルテ……)
一瞬、まるで金色の両翼が生えたかのように見えた。
背後からリベルテの目を塞ぐあの忌まわしい男がそれを与えたのだ。
時間をかけて捥いだリベルテの両翼を、いともあっさりと彼女に取り戻してさらに美しく輝かせた。
気に入らない。
リベルテを孤立させ、あの邪魔な両翼をもう一度捥いで、俺が居ないとだめだと思い知らせてやらなければならないと思った。
「レビア、いい子だな」
「カル……好きよ」
「ああ、俺もだ」
「あなたの為ならなんだってするわ」
「そうか、じゃあお願いを聞いてくれ……」
自分でも久々に笑ったと思う。
組み敷いたレビアの頬が染まるのを見て満足した。
かつてはリベルテもこの笑顔に頬を染めたのだ。
「ええ……わかったわ、カル……」
なにも犠牲になどしない。
ただ、取り戻してやる。
カルヴィンはそれでもまるで女神のように見えた金色の羽の生えたリベルテを想って、レビアのなかで果てた。
「お前は綺麗だよ」
(あ、また……私に言ってない)
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