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そうだ、学園へ行こう

ⅩⅡ 学園長の呼び出し

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 アリスちゃん、ボクは――

「君のペットになりたいんだ」

 なんて爆弾発言をされてしまった。
 その言葉の真意は分からない。初めて見る先生がエルを呼びに来たせいで。割とイラッとした。
 その事ばかり考えながら午後の授業を消化して、部屋に戻ってもその事ばかり。

 あ、今はソファーに寝転がってます。

「ペット……そのままの意味だと思う?」

「……分からない。他に意味があってもよく知らないから」

 学園長のことも獣人のことも、と。
 それはそうだよね。やっぱり本人に直接聞くしかないんだけど……多分、まだ帰ってきてないだろうし……気になるー!

「あーちゃん」

「なにー?」

「……ぎゅー」

 手を広げて私の方を見る。
 わたしがうつ伏せになってるから、ルルからはぎゅーって出来ないもんね。分かってるんだけど、あえて意地悪したくなるルルの可愛さ。

「お肉が食べたいの?」

「違う、牛じゃない。……あーちゃんの意地悪」

 私の顔に手を伸ばすと、ほっぺを指でつんつんし始めた。狙いを定めて……ぱくっ。
 ……噛み付こうと思ったのに逃げられちゃった。

「うー……」

 唸っている所に来た指――いただきます!
 今度こそ捕まえた。やったね。

「……食べられた」

 甘噛みしてみたり、舐めまわしてみたり、顔を動かしてじゅぶじゅぶ鳴らしてみたり……最後のはおかしい? なんの事やら分かりません。
 一通りじゃれてから、抱きつくようにしてルルのおっぱいに顔を埋める。これぞ至福の時。

「あーちゃん……」

 ルルの匂いとか柔らかさとかを感じてるうちに離れたくなくなってきた。わたしは悪くない。
 いっそこのまま寝ちゃおうかな……

「はぁ……ここまで来ても気づかないのね?」

「えっ!? ……ふぃ、フィリス、いつから居たの……?」

「今。一人だけアリスとイチャイチャして……それはちょっとずるいと思うのよ」

 だから今度は私の番――そう言って顔を近づけて来たので目を閉じる。
 けれど、一向にキスされる様子はない。

「フィリス……?」

 目を開けると、ルルがフィリスの顔に手のひらを押し付けているところだった。いや、何してるんだろ。

「ちょっと、邪魔しないでよ」
「なんの事か分からない……それより、話は?」
「ぐぬぬ……」

 確かに、このタイミングで来たということは何か用があるはず。ルルの言葉は間違ってないんだけど、ちょっとフィリスが可哀想。わたしは意地悪する必要も無いし。

「一緒に座ろ?」
「! ええ、そうねっ! ……ふっ」
「む……」

 これは喧嘩というよりも、可愛いじゃれ合いのようなものだと思う。なので、わたしの隣に2人を座らせて構ってもらえるようにする。
 仲がいいのは嬉しいけど、わたしともイチャイチャして欲しいもん。

「えへ~♡」

 左右から交互にキスされるわたし。
 額、ほっぺ、首筋、二の腕、お腹……あれれ? ちょっとそれはおかしいんじゃないかな?

「はいストップ!」
「……いいじゃない、少しくらい」
「お・は・な・し」
「そうだったわね……」
「でも……あーちゃんが言うのは、違和感」
「失礼なっ! わたしだってえっちなことばっかり考えてる訳じゃ……な、ない……よね?」

 段々自信が無くなっていくわたしを見てフィリスが苦笑いを浮かべる。次いで、流れるように濃厚なキスを繰り出す。ルル選手、反応出来ない!
 いや、ちょっとびっくりしちゃって。

「じゃ、お話するわね」
「う、うん……」

 薄くて柔らかい胸に頭を預けると、フィリスが何かの紙を広げる。パッと見は果たし状みたいな。

「えー、『リヴィエール・ティーヴォルフは我々暗黒騎士団が攫わせてもらった。返して欲しくば、アリス・ファンシアを訓練場に連れてこい』」
「えっ? ちょっと待って、攫われたの!?」
「ここ、よく見てみなさい」
「へ? ………あ~」

 取り乱しそうになったけど、手紙の一番下に『なんちゃって』と書いてある。つまり、手紙はただのイタズラで、本当は訓練場でわたしと会いたいだけってことだと思う。
 あと、攫ったのに学校の敷地内で待ってる意味も無いだろうし。

「お昼のこともあるし、丁度いいよね」
「というか、そのことで呼んでるんじゃない? ……でも、それなら別に部屋でもいいわよね」
「ん、行けば分かる」
「待ってルル! その格好で外に出るのはダメだから!」

 ルルが着てるのは下着が透けるような薄いネグリジェだから、そのまま外に出たら色々と……本人は気にしないかもしれないけど、男の人に見られたら嫌だし。

 という訳で、

「着替えたら、レッツゴー!」

 ◇◇◇

 そういえば、とわたしが切り出す。

「暗黒騎士団って何のことかな?」
「厨二病患者が好きそうな名前ね」
「ん……どこかで、聞いたような……?」
「え? ホント? 頑張って思い出して!」

 うーうーと唸り、ばっと顔を上げる。

「学園長の姫能」
「へぇ……エルさんの姫能ってそんな厨二的なあれなの?」
「ん、確か……」

 ルルが言いかけたその時、訓練場の扉が開いた。

 そして、訓練場の中は……



「やぁ、待ってたよ」

 文字通り、黒い鎧を着た騎士で埋め尽くされていた。
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みんなの感想(1件)

らりるれろ
2019.08.20 らりるれろ

語彙力低下するくらいに
あ、好き・・・
て感じです!
更新楽しみにしてます!

解除

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